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  • 2013.04.01掲載

マンションにかける保険|地震保険は公共性の高い保険

株式会社マネーライフナビ 高田晶子

◆地震保険は公共性の高い保険

火災による損害でも、火災保険ではカバーされないものがあります。地震が原因で火災になった場合です。地震等(地震・噴火またはこれらによる津波)を原因とする損壊・埋没・流出による建物や家財の損害を補償してくれるのが地震保険です。火災保険にも「地震火災費用保険金」というものがありますが、これは火災の場合のみの補償で、保険金額も5%程度と少額であることから、地震保険についても十分理解し、必要に応じて備えることが重要です。
地震保険は、「地震保険に関する法律」に基づくもので、いわば国と民間損害保険会社が共同で運営するものです。下図のような仕組みになっており、大規模な地震が発生し巨額の保険金支払いになることに備えて、政府が再保険を引き受けています。地震保険については、どの保険会社でも補償内容・保険料に差異はありません。しかし、共済等の民間損害保険会社以外の地震の補償はこの地震保険ではないため、個々に補償内容が異なることにも注意が必要です。

地震再保険のしくみ・保険金総支払限度額は最大6兆2,000億円に設定されている
・1,040億円までは民間で保険金を100%支払う
・1,040億円を超えて6,910億円までは民間と政府が保険金を50%ずつ支払う
・6.910億円を超える部分は、政府が保険金の約98.4%を支払う

◆地震保険は必要なのか

共用部分・専有部分とも地震保険は必要なのかと迷う人も多いでしょう。東日本大震災後、地震保険の関心は高まりましたが、保険料が高いことや後述のように支払われる保険金額は決して多くないことが悩みの一因になっているようです。確かに地震保険だけで建て直す資金を捻出することはできませんが、地震による損害が生じ共用部分の修繕が必要になれば、各区分所有者の負担が増えます。しかし、ひとたび大きな震災が起きると、収入が減ったり生活そのものの建て直しのために支出が多くなったりと個々の生活にも乱れが起きます。そのような中では緊急に新たな拠出をすることは困難になるかもしれません。専有部分や専有部分の家財にかける地震保険も同様ですが、大変なときに少しでも保険金が出ることで助かることは多いはず。これで損害を全てカバーするというよりも、住まいの修繕も含めて生活自体の再建の助けになるもの、と考えるべきでしょう。

◆地震保険は火災保険にセットして契約

地震保険を契約する場合には、単独ではできず、火災保険とセットにする必要があります。また、地震保険の対象は居住用の建物と家財に限られます。
地震保険の保険金額は、主契約となる建物や家財の火災保険金額の30〜50%の範囲内で設定します。かつ、建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度額となります。マンションの場合には、専有部分は各区分所有者が各々の火災保険にセットし、共用部分は管理組合が契約する火災保険にセットすることで契約できます。

◆地震保険で支払われる保険金は3段階

地震保険の保険金が支払われる時には、他の損害保険とは異なり、損害額ではなく建物や家財の損害の「程度」により支払われる保険金額が決まっています。損害の程度は「全損」「半損」「一部損」の3段階です。一部損にも該当しない損害の場合には、実際に損害があっても保険金は支払われません。支払われる保険金額は、全損の場合、地震保険金額の100%、半損の場合50%、一部損の場合5%と決められています。これは、大地震が発生した場合に、短期間に大量の損害調査を行い、迅速に保険金支払いを行うためです。「全損」「半損」「一部損」の認定は、下表のように建物と家財とでは基準が異なります。

【建物】
  全損 半損 一部損
建物の主要構造部の損害額 建物の時価額の50%以上 建物の時価額の20%以上
50 %未満
建物の時価額の3%以上 20%未満
焼失または流失した床面積 建物の延床面積の70%以上 建物の延床面積の20%以上70%未満 -
床上浸水 - - 床上浸水あるいは
地面から45cmを超える
浸水の損害を被った場合
【家財】
全損 半損 一部損
家財の損害額が時価の80%以上 家財の損害額が
時価の30%以上80%未満
家財の損害額が
建物の時価の10%以上30%未満