トップページ > 連載 > 地域コミュニティシリーズ > マンション居住者と地域住民が参集 防災イベント「イザ! カエルキャラバン!」
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民間マンションの共用部分を、
災害時の避難所として使用する協定を締結

今年1月17日、マンションの共用部分を災害時の避難所として使用する協定が、品川区と民間マンションの間で結ばれました。その経緯について管理組合副理事長の小久保一郎さんにお話を伺いました。

◆きっかけは、やはり東日本大震災

23区内の私鉄沿線にそびえ建つ地上19階地下1階の大型マンション。238戸532人が居住しています。周囲は、古くからこの土地に暮らす民家や商店が立ち並びます。

2011年3月11日の東日本大震災が発生。マンション内の3基のエレベーターが緊急停止しました。復旧したのは、夜遅くなってからのこと。復旧するまでの間、1階ロビーに居住者50名ほどが待機していました。さらに最寄駅周辺は、帰宅困難者で溢れていました。これを受けて理事会では、マンション内に居住者のための備蓄をする提案がされました。しかし、それは多額の出費となる内容でした。小久保さんは、もっと削減できると思い、理事会に改案を提出。それがきっかけで、昨年11月より今期の副理事長に就任しました。

◆管理規約の「共有部分の貸出可」を活かして

「もともと管理規約で共用部分を外部の方にも貸し出しできるようになっていました。また、共用部分と居住部分が区切られている構造なので、共用部分とつながる入口から避難者を誘導することができ、セキュリティ面も安全です。

避難所として貸し出す場合、原状回復の費用は区が負担することになります。区としても、新たに用地を取得し、避難所を設けるには膨大な費用が掛かってしまう…双方にメリットがあることを居住者にも説明して、管理組合から区へ、災害時の避難所としての利用を申し出ました」と小久保さん。その後、区の現場調査を経て、1月17日に協定が締結されました。

◆約100名、収容可能。600人分の備蓄品の倉庫も貸し出す。

避難所となる集会室は、地下1階に1つ、1階に1つ。地下集会室は、間仕切りで2つに分けることもできます。合わせて100名程度の収容が可能です。

地下1階にはトイレもあり、また、集会室の外はウッドデッキになっていて、近隣住民の待機場所にもなります。

集会室のほか、600人分の食糧や毛布などを備蓄できる倉庫も、区に貸し出す形で提供します。

区指定の避難所であれば、物資がきちんと届く可能性が高く、居住者も近隣住民も安心です。

500メートル先には、緊急時の避難所に指定されている都立公園があり、そこへ行くまでの中継地点の役割も果たすことも可能です。準備は整いましたが、まだまだ課題は多いと、小久保さん。

「今後は、飲料水の確保と災害マニュアルと避難マニュアルの作成、住民の避難訓練です。今回の協定事例をきっかけに、このような避難所が増えることを願います」