トップページ > 連載 > 地域コミュニティシリーズ > マンション居住者と地域住民が参集 防災イベント「イザ! カエルキャラバン!」
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  • 2012年春号

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「マンション居住者同士の交流の場を作りたい」「防災訓練の参加者が少ない」……など、都心のマンションの管理組合ではこのような問題を抱えているケースがあります。特に昨年の東日本大震災後は、マンション居住者の防災意識も高まり、居住者同士のつながりも重要視されてきています。そんな中、多くのマンション居住者や地域住民の参加を導いている防災イベント「イザ!カエルキャラバン!」を紹介します。

親子で学べる新しいカタチの防災訓練プログラム

「イザ!カエルキャラバン!」は、兵庫県内を中心に防災教育・啓発活動に取り組んでいる団体関係機関が神戸に集結。阪神・淡路大震災の記憶とそこから得た教訓を次世代の子供たちに伝えるため、楽しみながら防災を学ぶ体験型プログラムを導入した防災イベントです。

今回は、同イベントが3月4日、東京都中央区内の大型マンションで開催されました。「東京アートポイント計画」と題した東京文化発信プロジェクトの一環として、東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団、運営を手掛けるNPO法人プラス・アーツが主催者となり、民間のマンション管理組合とマンション管理会社が協力し、開催に至りました。

今回、協力を受け入れたマンション管理組合理事長久積健次郎さんは、「400世帯が入居し、しかも海辺に立つ大型マンションです。災害には不安を感じる居住者も多いと思います。また学校選択制によって、居住者の子どもたちが通う学校が異なりますから、このイベントが居住者同士の横のつながりができるきっかけになればいいと思いまして、協力させていただきました」と話されました。

寒い中、防災意識の高さを反映してか、親子連れを中心に周辺のマンション居住者を含む約400名を超える来場がありました。

◆「カエルポイント」を集めることで参加意識を高めます。

NPO法人プラス・アーツが追求する「楽しみながら防災の知恵や技を学ぶ」を趣旨にした今回のイベントは、次世代を担う親子連れファミリー層の積極的な参加(集客)を促すため、おもちゃ交換会「かえっこバザール」を取り入れました。

同バザールは不用になったおもちゃを会場内に設置された交換所「カエッコバンク」に持ち込めば「カエルポイント」と交換できます。当日、おもちゃを持参しなくても、各防災体験プログラムに参加すればポイントの取得も可能。取得したポイント数に応じて別のおもちゃと交換することができます。設置されたおもちゃブースには目当てのおもちゃを探そうと子供たちで賑わい大盛況でした。

◆楽しみながら防災知識を学び、習得できる工夫がたくさん!

親子でゲームに参加することによって子供たちに防災の興味を持たせるため、各ブースには、ゲーム感覚で楽しみながら消火・救出・救護などの防災時に必要な知識が学べるように工夫が施されていました。

「マンションの備蓄品なぁに?クイズ」では、マンションの備蓄品を並べて名前と用途の説明したあと、いったん覆いをして隠し、何があったか答えてもらうというもの。また、車に装備されているジャッキを使って倒壊物を上げて、下敷きになっている人を助ける「ジャッキアップゲーム」。これは、阪神・淡路大震災の被災者の経験をもとに考案されました。

そのほかにも家具と家具転倒防止グッズの模型を使って各グッズの効果を親子で学ぶ「家具転倒防止ワークショップ」、新聞紙を活用した食器を作りながらの「非常食試食体験」、消火器の使用手順を学びながら的に放水する「水消火器で的当てゲーム」など、従来のゲームと違い震災体験に基づいた工夫が盛り込まれ、万一に備えた行動=高い防災意識を培うものとなっていました。

そして、参加者が一体となって行われた「バケツリレー」は、参加者が2つのチームに分かれ、水の入ったバケツを手渡しし、最後に大きなバケツに入れ、その中のボールが早くこぼれ落ちたほうが勝ちというもの。地震によって火事が発生しやすく、身近にあるもので行なわなければならない消火活動を学びました。

◆集合住宅では、コミュニティの連携と個々の防災知識が大切

主催者の永田宏和プラス・アーツ理事長は「安心して暮らせる街づくりとは周辺住人とのコミュニティ形成の構築が重要。中でも、多数が入居する集合住宅では個々が震災に備えて対処する自覚を持った行動が必要。防災訓練を主催する側も工夫を凝らし、できる限り参加者を増やしていくべき。コミュニティというものがいかに生きていくための基盤として大切なものであるかを改めて確認できたと皆が感じています。」とマンションコミュニティの重要性を強調していました。