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  • 2019.01.17掲載

◆管理がマンションの市場価値・流通価値を高める仕組みづくりへ

 2019年に当協会が特に注力する課題は、「管理組合財政の健全化」「マンション管理業の経営の安定化」、そして、「マンション管理」のマンション市場価値への反映、です。
 管理組合は、単年度収支で3割の組合が赤字という声も仄聞します。赤字からの脱却は大前提ですが、良好な居住環境の確保を図る上で、コストカットには限界があります。管理組合の原資拡大に向けた増収策を実現していかなくてはなりません。

 「良質な管理」がマンションの市場価値・流通価値を高め、区分所有者がマンション売却時により多くの資金回収ができることになれば、区分所有者の管理に向けた支出のマインドが上がり、管理組合の原資の拡大につながります。
 例えば、マンションの価値を「純資産価値」で見るという「バランスシート観点」の考え方もあるのではないかと思います。この場合の資産総額はマンションの取引時価評価額+積立金、負債総額は将来にわたる大規模修繕費+維持修繕費用等の総支出、そして資産総額から負債総額を引いた残りが「純資産価値」です。
 「良質な管理」とは、管理組合における様々な増収策を図り、余計な支出を削減しつつ適宜適切に必要な修繕費を支出し、将来にわたる総支出額の削減を図り、積立金の最有効使用を実現することで、「純資産価値」を高めていくという機能とも考えられます。

 しかし、現状では、マンション管理の業務内容や管理の質、適切な維持・修繕の実施やその履歴情報が、居住者はもとより不動産流通の関係者にも十分に認識されていないために、流通市場で「管理の価値」は正しく評価されていません。
 当協会では、従前からの取り組みとして流通関係団体と連携し、中古マンションの売買時の重要事項説明の際に、管理会社がその管理状況の情報を提供するための共通書式「管理に係る重要事項調査報告書ガイドライン」を策定・提供しています。これをより活用し、情報を明確化して取引の透明性を高め、管理業務への正しい評価につなげていくことも重要です。
 管理業務は、単なるアフターサービスではありません。個々のマンションに最もふさわしいバリューアップ提案を行って資産価値を高める役割を果たすことで、「管理業務は市場価値を生む」ことが広く認知されていくべきだと考えています。

 また、既築マンションの修繕工事は、新築工事に比べると、一つひとつの金額は小さいかもしれませんが、住宅ストック全体で見れば、膨大な総額の工事を手掛けています。膨大な修繕・改修工事は乗数効果により、日本全体の経済効果にも非常に大きく貢献しているということがいえると思います。

◆管理の質を外部評価

 マンション管理の質を外から評価していただくための仕組みづくりも必要です。そしてこの課題は、私ども協会が単独で解決できるものではなく、管理組合、関係諸団体、行政機関等の関係各位の皆様のお知恵やお力をお借りしなくては、とても実現できることではありません。
 管理業界の従業者は、契約外の事項でも、お客様のためになることならと引き受けてしまう体質があります。しかし、適正な報酬を得られなければ、管理会社の経営は成り立たず、業界従業者の処遇改善は実現できません。今後、居住者の高齢化がますます進展する中で、管理会社のサポート業務の重要性が一層増し、従来の契約外の業務が増加していくと思われます。お客様と管理会社が業務内容の認識に齟齬を生むことのないよう、当協会は2017年、管理委託契約の詳細を見える化し、お客様に管理会社のサービスを理解していただくためのツールとして「マンション管理業務共通見積書式」を公表しました。

◆災害に対する対応

 このたび、今春募集を開始する「災害対策出動保険」を開発しました。全国各地で大規模な地震だけでなく、集中豪雨などの被害が頻発しています。そうした際、居住者対応や応援人員の派遣、行政対応など多くの緊急費用が発生しますが、その費用負担はこれまで管理会社と管理組合の間で曖昧でした。今回開発した保険で費用を補償することにより、資金力の弱い企業でも、大規模災害発生時の対応に費用の不安を抱かずに対応業務に邁進する道が開けます。
 また、当協会は、近く大阪市北区と連携協定を結ぶ予定であり、大阪市北区役所・当協会双方が連携協力のもと、大阪市北区の災害時の想定被害や避難所の情報等を用いながらそれら情報を地図上に落とし込み、区内に立地するマンションの防災計画の立案に資する調査研究を進めて行く予定です。

◆優秀な技術者を育成

 きちんとした処遇ができなければ、優秀な人材の確保は困難です。管理業従業者の人の良さや美談で終わらせることなく、業務の貢献度に見合う正しい評価がされるような仕組みづくりを当協会として支援していきます。特に、当協会としては維持修繕技術者の育成に力を入れていきます。バリューアップのためのきちんとしたメンテナンス計画の立案には、設計段階での検討が大変重要です。現状では、しっかりとした設計機能を持つ管理会社は少なく、優秀な維持修繕技術者の育成と確保は急務です。
 また、働き方改革が求められる中、生産性と顧客満足度の向上を図り、人手不足等の課題を解決していく方策の1つとして、AIやIoT等の先進技術の活用推進は、今後ますます重要なテーマになっていきます。当協会として、管理会社のITリテラシーの向上や業務効率化にも積極的に取り組み寄与していきたいと考えています。

◆エリアマネジメントを担う

 将来に向けた管理業界の在り方として、マンションを取り巻くコミュニティ全体の維持管理と、その魅力向上に寄与するエリアマネジメントの役割を担うという大きな目標があります。この目標の実現にはまだまだ長い時間が必要だと思われますが、まず、管理業務の重要性を世の中に伝え、広く社会に意義や意味を理解、認識していただくことを力強く進めて行くことが当協会の役割と考えています。
 そのためにも、協会としては、日本のマンションの資産価値および居住価値の向上に向け、関係機関と連携し、様々なご支援を期待しながら、管理業界全体のレベルアップを図って行きたいと考えています。

 結びに、会員の皆様のご活躍と当協会の更なる発展、関係各位の引き続きのご支援とご協力を心よりお願い申し上げて、新年のご挨拶とさせていただきます。