- 特集
- 新春インタビュー
- 2018.01.18掲載
建物と居住者の「2つの高齢化」に対応する
管理業と従業者の社会的評価を向上させていく
明けましておめでとうございます。
◆リスク拡大の中、今後の姿を見極める
昨年を振り返りますと、政治面では、世界の大国の覇権主義が強調され、調和するよりも、利害の衝突が顕在化しました。ただ、国内に目を転ずると、先般の衆議院選挙の与党の多数の議席獲得は、今後政策決定が迅速化され、日本の経済社会の将来不安の解消に向かう力強い動きになることが期待されます。経済面では、全般的に良くなっているように見えます。しかし、資金の流れが実物経済に大きく影響する現在、世界中で資金が余る状態で金利はゼロ近傍となり、社会環境や世界情勢の変動も激しく、そのために出口がますます見えにくくなっています。ともあれ、国内外を問わず、政治、経済、社会情勢の様々な側面において、予想できない事象や変容に直面し、様々なリスクが拡大する中、今後の姿を改めて見つめ直すことが求められた一年であったと思います。
◆次世代に負の遺産を残さない
高度経済成長期の都市インフラは今後、一斉に更新時期を迎えます。分譲マンションのストックも2016年末で633万戸を超え、推定で約1510万人が居住し、築20年を超えた建物は全体の5割、2020年には築30年を超える分譲マンションが4割に迫ります。また、既にマンション世帯主の半数以上が60歳を超え、2025年には80万人を超える認知症の高齢者がマンションに居住することが想定されます。こうした建物の高経年化と居住者の高年齢化という「2つの高齢化」が進行しています。
管理会社のなすべきことは、管理組合にこの状況をまず認識してもらうことです。管理会社の果たすべき役割は大きく、居住者に寄り添う一層のきめ細かなサービスが従来以上に強く求められてきています。我々の時代で何ができ、道筋をどうつけられるのか、様々なリスク要因が拡大する中、次の世代に負の遺産を残すわけにはいきません。
◆資産価値と居住価値を高める役割
しかし、マンション管理会社サイドでは、人手不足が深刻です。管理組合や居住者の様々な要望に応えることが、現実的に難しさを増しています。一方で、管理組合では、想定以上の収入不足や工事費の上昇などから、限られた予算で効果的な運用が不可欠になっています。こうした状況を踏まえ、このたび、当協会では、『マンション管理業務共通見積書式』を策定しました。管理会社が提供できる業務内容を詳細に整理して、「見える化」と「明確化」を大きく進め、会員各社が個々に実施してきた様式を統一化する狙いがあります。
これまでは管理組合の要望が過剰と感じても、管理会社は無理にでも受けてしまう。その習性が染みついています。そのために、居住者の要求水準と、管理会社の対応レベルに齟齬(そご)が生まれ、そのギャップがトラブルの原因となり、管理会社への不信感につながっています。これまでの何でも安易に引き受ける〝三河屋さん〟のような対応から脱却し、この状況を是正しなければなりません。マンション管理業は、すべてがお客様との信頼の上に成り立っています。管理会社が業務に対して適正な報酬を得て、安定した経営体制を構築できなければ、結果的にはサービスの品質を落とし、管理組合の不利益につながります。管理会社は、マンションの資産価値と居住価値を上げていく、という大変重要な社会的な役割を担っていますが、今後、更に一層レベルアップを図りながら大きな役割を果たし続けていかなくてはなりません。
◆民泊新法など法・制度改正で管理組合に周知
さて、ここ数年、管理業務に関わる法律や制度の改正が続き、管理組合や居住者に対する周知に努めています。今年6月15日に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)の対応では、昨年、会員社に対して、すべての管理受託管理組合が総会で民泊の可否について意思決定をするように促す提案資料を作成して通知し、全国主要都市で説明会を開催しました。改正個人情報保護法でも、同様に資料の作成や説明会を行っています。税制改正に関しても、修繕積立金の支払い額に対する所得税額控除制度の創設やその他の課税の減免措置などについて、国土交通大臣宛てに要望しました。
警視庁の「振込め詐欺被害防止アドバイザー制度」では会員社関係で約1万人の方々がアドバイザーとして委嘱されていますが、更に昨年10月には警視庁と相互協力の協定書を締結し、これをモデルとして今後、全国のマンションの居住者の方々の安全・安心が確保される施策を一層推進していきます。
◆仕事のやりがいを共有する
昨年、2回目となる『マン活トレンド発表会2017』を開催しました。今回からは新たに、マンションいい話コンテストに「管理会社編」を設け、仕事を通じて得たやりがいや、お客様から感謝されたエピソードなどを発表していただきました。「働き方改革」をキーワードに、自信と誇りを持って遂行している日々の業務の取り組みを共有し、共感することにより、現場社員の人材確保と若手の人材育成、更には、社員のモチベーションアップを図っています。