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- 2016.01.04掲載
管理組合への支援体制が試される年
◆管理業界のプレゼンスを高める好機
マンションを取り巻く環境の変化や新たな課題も浮き彫りになりました。直近では、基礎杭の施工データ改ざん問題、少し前には免震ゴムの偽装問題もありました。一昨年に問題となったマンションのシェアハウス利用から今度は民泊利用の問題、インバウンド投資の問題も顕在化しつつあります。
また、損害保険の引受制限や保険料の大幅な改定は、マンションに住むことへの安心感と管理組合の収支にも大きな影響を及ぼし、2017年4月の消費税率改定への対応も必要になってきました。さらに電力の小売り全面自由化を4月に控え、共用部電力の契約先の検討など、管理組合は様々な課題を乗り越えなくてはなりません。
その意味で、管理組合の課題解決を強力にバックアップする管理会社の役割と責任は今後ますます強まり、これに的確に応えることで「管理会社」、ひいては「管理業」のプレゼンスが高まるのだと思います。適宜適切な対応ができるか、管理組合の知恵袋となれるか、まさに試される年になるでしょう。
◆管理規約改正の要否は管理組合の意思尊重を
さて、我が業界では、2015年の主なトピックとして、杭の施工改ざん問題があります。昨年10月に発覚した基礎杭の施工データ改ざん問題は、マンションの「安心」「安全」を脅かす結果となり、マンションに対する国民からの「信頼」をも揺るがしかねない問題となりました。現在も、売主等による住民への説明などが行われていますが、住民の皆様の「安心」「安全」を一刻も早く回復し、事態の収束を図ってもらいたいと思います。
インバウンド投資の増加と民泊問題も対応すべき課題です。インバウンド投資では、外国人購入者に区分所有法や管理規約をご理解いただけない場合があることや、修繕のために毎月積み立てる文化がなく、結果的に実需で購入した住民との間でトラブルが生じたケースが少なからず報告されています。管理費や修繕積立金の滞納、空室のまま放置される場合や、逆に宿泊施設として不特定多数の外国人に利用させてしまう民泊施設として利用するケースもあります。これらはマンション住民が直面している課題であり、今後、東京都大田区や大阪府などの一部地方自治体に見られるような規制緩和による「民泊条例」との関係も見据えた管理規約の整備や対応策の提案などが求められてくるでしょう。
国土交通省では昨年11月、マンション標準管理規約改正案のパブリックコメント(以下、パブ・コメ)を実施しました。公表された規約改正案と合わせて示された改正適正化指針において初めて、「管理組合は…良好なコミュニティの形成に積極的に取り組むことが望ましい」とされたことは大変好ましいことです。一方、改正規約・コメント案では、「コミュニティ」という用語の概念のあいまいさから拡大解釈の懸念があったとして、いわゆる「コミュニティ条項」が削除されました。
このパブ・コメ実施に際しては、日本マンション学会など関係4団体によるシンポジウムを開き、コミュニティの重要性、区分所有法第30条に基づく規約自治の原則の確認、管理規約の改廃における組合判断の尊重などを趣旨とする共同提言を行いました。
今後、マンション管理適正化指針及び標準管理規約の改正版がパブ・コメをふまえ、告示・通知されると、個々のマンションの規約改正の要否について、管理組合から管理会社に対して助言・提案が求められることとなります。共同提言の趣旨の周知や改正規約のQ&Aなどの提供を通じて管理会社は適切な助言ができるよう努めていかなければなりません。