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- 新春インタビュー
- 2014.01.06掲載
ハード(建物)とソフト(資金)を守り
さらにハート(コミュニティ)に目を向けた取り組みを
◆明るい兆しと五輪招致
さて2013年を振り返ると、一番に挙げられるのは、景気が上向いてきたことです。それに伴いマンションの着工戸数も増加傾向に転じてきました。マンションという住まい方が多くの方々に必要とされていることを実感し、我々もより一層身の引き締まる思いが致します。社会全体を見ても2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致が決定し、明るいムードが広がってきました。この流れに乗って、今年も希望溢れる年になってほしいと願っております。
◆被災地管理組合の資金不足問題
一方で見過ごせない課題もございます。まずは協会としても取り組んでいる東日本大震災の被災地の復旧・復興です。取り組むべきことはまだまだ多く残されていると痛感しています。確かに宮城県では、復旧・復興工事は山を越えたと思いますが、福島県原発事故と放射能の問題は今なお続いています。「3・11」は終わっていないということです。また、復旧・復興工事に伴う支出は大規模修繕の予算を圧迫しており、現地の管理組合の方々からお話を聞くとその深刻さがひしひしと伝わってきます。「3・11」への対応は今後も当協会の大きなテーマとして取り組まなければなりません。
◆コンプライアンス遵守の徹底
もう一つは、管理会社の法令遵守です。これは管理組合の皆様の大切な資産を守るためには欠かせません。これまでも当協会では様々な施策に取り組んできました。しかし、なかなか改善されない現状があります。そこで今、当協会では法令を遵守するためにどのような仕組みが設けられているのか、推進する委員会などの体制があるのかをチェックし、フォローアップする「新モニタリング制度」を推進しています。この法令遵守に関する問題は何としても解決していきたいと思っています。
◆協会が取り組むべき3つの「向上」
マンションに住まう皆様の心豊かな暮らしをサポートすること。それが当協会の大きな使命です。そのために、私は今、3つのことに取り組まなければならないと考えております。それは、マンション管理業の「品質の向上」と「知名度の向上」「地位向上」です。これらを総合的に実現させることで、マンション管理を担う企業の意識を底上げしていきたいと考えています。
これまで当協会では、先に述べた法令遵守も含め、様々な方面から品質の向上に着手してきました。また、昨年4月には、知名度を上げるため、名称を「マンション管理業協会」に変え、この『フォーシーズン』もリニューアルしました。
今後は、さらに踏み込んで「地位向上」を目指していきたいと思います。管理会社の在り方は10年前とは随分変わりました。ディベロッパー系の場合、以前は子会社という地位でしたが、今は協力会社という関係になっています。例えば野球のピッチャーとキャッチャーのように互いの役割を認め合う仲間なのです。企業グループ内でのマンション管理会社の地位向上も随分進み、新規のマンション開発をする時は、管理会社の知恵は必要不可欠になってきています。一方で、社会的な地位向上という面では、まだ十分とは言えません。まずは、当たり前のことを一生懸命に実行し、皆様の財産管理とサポートをしっかり行っていくことが重要だと考えています。
◆管理組合を取り巻くリスクを取り除くために
管理組合の運営における特に大きなトラブルは、金銭事故だといえるでしょう。マンション管理適正化法の施行規則の改正が3年半ほど前にありました。金銭事故の多発を鑑みて、管理組合資金の収納・保管の仕組みを変えたものです。しかし、残念ながら事故はなくなったわけではありません。これは管理会社内部の風通しなどまで踏み込んで、改善していかなければならないと考えています。
さらに、管理組合の監査機能も引き上げていく必要があると思います。現在、管理組合の監査は主に組合員の中から担当を決めて行われていますが、全ての監査がプロとしてのチェックフィルターを有しているかとなると疑問が残るのではないでしょうか。管理会社が作成した決算報告書などに対して、客観的な視点からチェックをするといった「第三者による監査」が必要だと思います。マンション管理士の方々がこの監査を担うという手法もあるでしょう。マンションを取り巻く他の業界団体とも連携強化を図りながら、マンションを巡る社会的リスクを減らしていくことが、管理組合の皆様にとって有益であると思います。今年はその第一歩を踏み出す年にしたいと考えております。