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  • 2012年夏号

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明海大学不動産学部教授 齊藤広子

◆なぜ、居住者の協力が必要?

共用部分ですが、住戸の中からしか把握できない、使っている人しかわからないことがあります。例えば、室内の漏水、バルコニーの傷み、ドアや窓の閉まりが悪い、水の出が悪い、流れにくい等です。だから、アンケート調査が必要になります。

実際に工事が始まっても居住者の協力が必要です。工事を行うには、各住戸への立入り、ベランダに入って作業をすることもあるために、洗濯物を干すタイミング調整、ベランダの物(例えばエアコン室外機等)を動かすこと等が必要になります。

そこで、はじめに修繕の必要性を全区分所有者に理解してもらうために、アンケートを実施し、その報告を、広報誌や説明会で行います。その理解が得られたうえで、工事の内容、工事の進め方、業者の選定方法等を報告・説明します。「工事実施を勝手に決めた」などの誤解や不安が生じないように、区分所有者の意見を聞き、意見を反映する場と機会を積極的にもつことが必要となります。

ステップを順に経て、工事内容、施工方法や施工会社等を総会で決議し、区分所有者・居住者の理解と協力を得るようにしましょう。

◆通常の大規模修繕は普通決議

改修前・改修後 通常の大規模修繕は出席議決権の過半数の賛成を得て行うことになります。
なお、区分所有法では、大規模修繕という言葉は使われていません。区分所有法上は「共用部分の変更」と呼ばれています。また、大規模修繕に伴い、改善・改良工事を行う場合で、「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」以外は、区分所有者及び議決権の4分の3以上多数の賛成、特別決議が必要となります(区分所有法17条)。

大規模修繕実施にむけたアンケート調査の内容例
①室内に漏水がありませんか? ある場合はどこからですか?
 天井、壁、窓、その他
②窓サッシュやドアに不具合がありませんか?
③バルコニーにヒビや傷みがありませんか?
④共用部分で改善してほしい場所がありませんか?

●区分所有法第17条
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

◆居住者の協力は不可欠

工事が終わって、居住者に工事の不具合がないか、問題ないかの確認のアンケートをする場合もあります。マンションに住む人間として、マンションの所有者として大規模修繕工事に協力、参加することは不可欠なことです。居住者、区分所有者の意見をしっかりと把握し、大規模修繕を進めていきましょう。

Profile
齊藤 広子
明海大学不動産学部教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション長寿命化協議会」座長

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住 環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文 賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著 作奨励賞、日本建築学会賞等受賞。
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価 値が上る住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』 (市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出 版社)など多数。