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  • 2011年夏号

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明海大学不動産学部教授 齊藤広子

◆安心・安全な暮らしのために

マンションで、大事なことは、法律や規約といったルールに沿った活動、いわば契約的なコミュニティをベースにしながら、そのマンションならではの活動を行い、人々が本当に住んでよかったと思える、安心・安全な環境をつくる、創発的なコミュニティ活動を行うことです。コミュニティ活動への参加を通じて、顔を知るコミュニティや、助け合いコミュニティ、そして共同管理のコミュニティが育っています。

日常の堅実な活動がないところに、緊急時の「安全」や「安心」はありません。ぜひ、今年は防災の日を目指して活動を準備しませんか。

コミュニティ活動と管理組合活動は連携している!

●居住者がお互いに顔が分かる人が多いマンションでは、理事選出の困難が少ない
●居住者がお互いに顔が分かる人が多いマンションでは、管理組合活動に無関心な人が少ない
●コミュニティ活動が活発なマンションほど、総会の参加率が高い
●コミュニティ活動が活発なマンションでは、防犯パトロールをはじめとし、防災訓練、非常食糧保管、 備品の備蓄、安否確認体制、緊急時の救助必要者名簿、高齢者見回りなどを行っている

国土交通省「マンションの適正な維持管理に向けたコミュニティ形成に関する研究」報告書2010年5月より
コミュニティ活動の事例(防災活動を中心に)
ベランダ避難梯子おりの訓練と、ベランダ避難隔板割の実演。通報、避難訓練、消火器使用実演、消火栓操作、放水を行い、飲み物と非常用乾パンの配布。階ごとに自主消防隊を置き、プレイロットへの避難演習

年1回の防災訓練を実施。組合活動に普段参加しない人には、縄梯子おりをしてもらう。「マン ション内で役割を持つことがコミュニティ」

1階段20戸ごとに防災・防犯活動の担当者を決める。さらに各階段の上と下に分け、10戸に1人、 防災ネットワーク連絡員を配置。防災部が中心となり、通報・初期消火・消防車誘導・避難の実施訓練

自主防災会を自治会と管理組合の連携でつくる。本部長(自治会長)、副本部長(管理組合理事長及び自治会副会長)、防災指導員(講習を修了した人)、班長(自治会役員・棟別幹事)。班構成は、情報班、消火班、避難誘導班、救急・救護班、給食・給水班。救急・救護班長は看護師経験者。棟別幹事は避難誘導リーダーに。 マンションを1ブロック30 戸程度に分け、各ブロックに1 名ずつ、避難誘導リーダーを輪番で任命する。リーダーは、居住者名簿で、高齢者、障害者、乳児者を把握し、対応する

防災会は半纏をきて活動する。防災倉庫やレスキューキッチンをもち、20 分で100 人分のご飯 が炊ける体制づくり。飲料水対策、防災ハンドブック作成、避難終了マグネットシール、要救護シール、都心から帰宅困難者体験ウオークなどを実施する

災害時の避難場所などを分かりやすく示した「すまいのしおり」を作成。

大震災対応計画書の作成と、日頃からフロアごとの防災懇親会を実施し、近所付き合いを大切 にする

Profile
齊藤 広子
明海大学不動産学部教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション長寿命化協議会」座長

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住 環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文 賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著 作奨励賞、日本建築学会賞等受賞。
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価 値が上る住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』 (市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出 版社)など多数。