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- マンガで事例研究
- 2011年夏号
◆コミュニティはいらない!?
俺は、誰とも付き合いたくないからマンションに引っ越ししてきたのだ。どうして、みんなと夏祭りやバーベーキュー大会に参加しなければならないんだ。いい加減にしてくれよ!
「隣の○○ですが、もしよろしければ、もう少し音楽を静かにしていただけませんか?」だって。俺に文句があればフロントを通してくれ! 誰とも話したくない!コミュニティなんて大嫌いだ!
地震で、水も電気も止まってしまった。一体、どうすればよいのだろうか…。誰に聞けばよいのだろうか。隣の人も知らないし…。
◆コミュニティとは?
この人はコミュニティを誤解していたようですね。コミュニティに、みんなが仲良くするといった側面だけをみていたようです。
コミュニティという言葉は1917年にアメリカの社会学者マッキーバーさんによって初めて定義されました。その後、世界中
でいろいろな定義がされてきましたが、共通しているのは「地域性」と「共同性」です。
この共同性は、みんな仲良しといった「共通の感情(共同体感情)」だけでなく、「共通の目標」「共通の行動」を含むものなのです。つまり、コミュニティに込められた共同性には、共通の目標をもち、共通の行動をとることが含まれており、地域みんなで地域の問題を予防や解決し、よりよい生活を実現していくことになります。
まさに、みんなで住み良いマンションにしたいと、管理組合が活動することがコミュニティなのですね。
「1969年国民生活審議会調査部会の答申コミュニティ-生活の場における人間性の回復」より
●「地域社会という生活の場において市民としての自主性と権利と責任とを自覚した住民が共通の地域への感情と共通の目標をもって共通の行動をとろうとする、その態度のうちに見いだせるもの」
「1973年地方自治制度研究会」より
◆マンションコミュニティ
それでは、管理組合の活動だけを行い、そこに住んでいる人々がお互いに顔を知ったり、ふれあう必要はないのでしょうか。
マンションには3つのコミュニティが必要です。
★顔を知るコミュニティ
第一には、居住者が相互に誰が住んでいるのか、近隣を知り、認知し合うコミュニティ(顔を知るコミュニティ)が必要です。地域で生活する上で防犯面、防災面を考えると、お互いの顔を知ることは最低限必要なことです。
例えば、震災や豪雨災害でも、被災直後の人命救助や安否の確認、復興過程の防犯活動においては人々がお互いに顔を知っている、またはどこの家にどんな人が住んでいるかを知っていることが重要な役割を果たしました。
また、マンションは隣り合い・重なり合って暮らす建物であり、上下階や近隣間の音のトラブルは生活上深刻なものです。ですが、「音にも顔がある」といわれるように、顔を知っている人の音については受け入れる許容が大きくなっています。こうしてマンションにおいて相互に居住者が顔を知り合うコミュニティが基本的に求められるのです。
★助け合いのコミュニティ
第二には、居住者同士が助け合い、相互扶助により、より快適で居住性の高い暮しを実現するコミュニティ(助け合いコミュニティ)が必要です。
例えば、「相談相手になる」「家具の移動を手伝ってもらう」「買い物を頼む」「病気の時などに食事を作ってもらう」などがあります。これは居住者により、こういった付き合い方を望む人もいればそうでない人もいるかもしれません。
しかし、震災の際、停電・断水したマンションで、上階まで階段を使って水を運ばなければならなくなった高齢者を助け合ったりしました。これはまさにお金を出しても市場では手に入らず、こうした状態では行政のサービスに期待できず、近隣しかできない助け合いです。そのため、日常的には選択性のあるコミュニティであっても、いざという時の非常時には非
選択性が強まるとともに、こうした助け合い体制があることで、日常的に安心してマンションに居住できることになります。そのため、やはりマンションでは必要なコミュニティです。
★共同管理のコミュニティ
第三には、居住者、所有者が共同で管理を行うコミュニティ、つまり、マンションの管理組合の活動です。住みよいマンションにするために様々な活動が行われています。