- 連載
- マンガで事例研究
- 2011年春号
◆必要なリフォームのルールとマナー
こうした困った事例を出さないためにルールをしっかり作り、規約や使用細則で明記、運用し、区分所有者のマナーを高めましょう。 ※1
①リフォーム工事の内容の指針をつくります。どんな工事ができるのか、あるいはできないのか。これはマン
ションによって違います。例えば、マンションによって遮音性能が異なるため、フローリングのための具体的に床衝撃音の遮音等級L値を定める等があります。また、構造によっては住戸間の壁を一定限度で撤去が可能な場合があります。マンションにあった指針が必要です。
②リフォーム工事承認のルールを作ります。工事の前に管理組合に届出をし、理事会の承認を得ます。その際
に、近隣の了承を得て、工事内容が分かる図面(設計図、仕様書、工程表等)を付けて管理組合に届け出ます。提出書類の部数や、工事の何日前に提出するのか、どんな工事が該当するのかも決めておきます。
③リフォーム工事実施のためのルールを作ります。工事可能な日時、リフォームのための資材置き場や搬入方
法、工事人であることの表示(腕章義務付け等)や休憩場所、工事用車両の駐車スペース、共用部分の養生の仕方、ゴミの処理などです。
④居住者全体に工事の内容を知らせることも必要に応じて大切です。振動や騒音を含め、マンション全体の居
住者に何らかの影響を与える可能性があるからです。また近隣に配慮するマナーを高めます。所有者自らが挨拶に行き、工事期間や振動・騒音の可能性等を説明します。事前に分かることで問題予防につながります。
⑤共用部分の計画修繕の情報を区分所有者にしっかりと伝えます。折角したばかりのリフォーム部分を撤去し
て共用部分の工事を行うことを避けるためです。管理組合が共同で管理する範囲を明確にすることも大事です 。※2
◆専門家の支援を受けたルールの運用
あれだめ、これだめのルールでは、マンションで快適に暮らせませんね。どんなリフォームなら可能であるか、どんな工事の仕方が近隣へ迷惑を最少にできるのかのアドバイスがあれば、よいですね。 そこで、適切なアドバイスをしてもらうために専門家を活用することも大事になってきます。
*2 例えば、床下の横方向の枝管についての取扱いが明確でない、あるいはマンションにより異なることがあります。
齊藤 広子
明海大学不動産学部教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション長寿命化協議会」座長
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価 値が上る住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』 (市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出 版社)など多数。