- 連載
- マンガで事例研究
- 2011年冬号
◆来客用等の駐車スペースの対応
●スペースの新設・増設
一時利用等の駐車スペースや来客用駐車場が全くない場合にどうすればよいでしょうか。こうした問題をマンション内で共有し、植え込みのスペースをうまく工夫し、ちょっと1台分のスペースを確保しようということもあります。しかし、これには手続きがいります。
①理事会などで十分案を検討してください。いままで緑地だった所が駐車スペースになると、そのまわりの住戸の方への配慮が必要になります。騒音や排気、人の出入り、安全性等は大丈夫でしょうか。こうした検討が必要となります。また、法的な問題がないかの検討も必要です。マンション建設時の近隣協定等により、緑地等を削れないこともありますのでご注意ください。
②総会に提案し、議決をすることになります。増設が専有部分の使用に特別な影響を及ぼす場合は、総会の決議だけでは足りず、専有部分の所有者の承諾が必要です。
さらに、過半数決議ではなく、特別決議が必要な場合もあります。これは、増設する駐車場の種類や規模によって「形状または効用の著しい変更を伴う」場合には、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数決による決議が必要と、区分所有法で決められています。
●昼間の来客用スペースの確保
新たにスペースをつくらないで対応した例があります。つまり、昼間に使われていないスペースを利用する方法です。もちろん無断駐車は困りますので、管理員に届け出てもらい、「駐車許可証」をフロントガラス内に置くのに加え、訪問先の部屋番号や連絡先、利用予定時間も明記して置くようにしている例があります。
こうした取り組みは、協力者を募ることや、管理組合が朝、昼、夕方に駐車場空き調査を行い、昼間不在スペースを把握し、1軒1軒、丁寧にお願いして実現しています。
●違法駐車をさせない態勢づくり
迷惑な駐車の予防には、管理組合の取り組みが必要です。実際にどんなことが行われているかを見てみましょう。
・広報誌で、違法駐車をしないよう啓発する。
・禁止看板、規制看板などを、目に付く所に設置する。
・駐車禁止エリアを設け、その表示を行う。
・プランター等を置いて、駐車しにくくする。
・違法駐車には警告票を挟み込む。
・来客用駐車には、駐車許可証を発行する。
・来客用駐車は予約制にする。(更に強化した対策を取っているところもあります)
・ロボットゲートをつける。
・夜間・休日など、見回りをする。
◆マンションライフを賢く楽しく
管理組合や居住者の目の届かないマンションは、居住者がお互いに快適に暮らせないだけでなく、「ゴミ捨て場」になる可能性もあります。マンションは共同で生活する場です。そのためにルールを守ることが当然必要になります。ルールを守ってもらうための見回り活動を通じて、居住者のコミュニティがより育成された事例があります。ルールで「規制」するだけでなく、ルールを通じて「コミュニティが育成」される、そんな楽しい事例がもっと出てきてほしいと思います。
齊藤 広子
明海大学不動産学部教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション長寿命化協議会」座長
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価 値が上る住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』 (市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出 版社)など多数。