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  • 2024.10.01掲載

マンションに安心して住む~ハード・ソフトの両側面からマンションを安心して住める場に~

横浜市立大学国際教養学部教授 齊藤広子

●マンションの省エネ対策、断熱改修

 マンションの暑さ・寒さ対策も含めて、マンションの省エネ対策が求められています。それは、2022年に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)」が公布され、2025年までにすべての新築住宅・建築物に省エネルギー基準への適合が義務付けられる等、省エネ対策の強化が打ち出されているからです。
 こうして世の中全体で、省エネに対応した建物が求められています。しかし、ほとんどのマンションではその対応が不十分で、断熱改修などが行われていないのが現状です。
 各住居で対応可能な断熱改修は、①窓の内側に窓を設置する、②壁・床・天井に断熱材を入れる、③トイレや風呂まわりに断熱材を使用するなどがありますが、あくまでも、マンションの管理規約に従う必要があります。
 さらに、マンション全体で、建物全体の断熱性を高めることもできます。①壁や屋上に外断熱をする、②内断熱をする、③窓ガラスを変える、④玄関ドアを変えるなどがあります。
 そうすることで、室内環境が改善され、冷暖房効果が高まり、経済的なメリットを得られるとともに、住居ごとの温度差が小さくなれば、ヒートショックの軽減にもつながります。
 各個人では取り組みにくい専門的な建物改修に、マンション全体で専門家のアドバイスを受けながら取り組めば、マンションの全体最適にもつながります。

●さらに安心して住むことができる体制づくり

 冒頭の佐藤さんの場合、結局は親族の方の連絡先を隣の人が把握しており、連絡をして、鍵を壊して入室する許可を得ました。たまたま隣の人が親族の連絡先を知っていて、本当にラッキーでした。そういう意味からも、居住者名簿の緊急連絡先は本当に重要です。今回のように、要支援者でない場合でもこんなことになる可能性があることから、万が一に備えて、居住者名簿の整備を改めて考えてみましょう。なお、本年6月7日の「マンション標準管理規約」の改正では、組合員名簿および居住者名簿の更新に関する規定が整備されています(第64条の2)ので、参考にしてみましょう。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001746766.pdf
 また、マンションによっては自宅の鍵をあずかるサービスを行っているところもあります。希望者のみを対象に、管理会社等が自宅の鍵をあずかり、安否の確認をしたりします。また、管理会社と地元NPOが連携し、生活を支える多様な代行サービス等を、1回1名あたり 30分ごと500円で行っている例(図表3)もあります。また、介護サービス部門を持つ管理会社もあります。こうした取り組みは、まさにマンションの魅力ではないでしょうか。
 ハード・ソフトの両側面からマンションを安心して住むことができる場にしていきましょう。

■図表3:代行サービス例

●家具の移動・処分品の搬出
●照明器具の電球・蛍光灯の交換
●テレビ・レコーダーなどの配線
●買い物(生活必要品の買い出し)
●調理(一般的な家庭料理)
●洗濯(日常的な衣類)
●掃除・整頓(日常使うものの片付け)
●寝具整理
●外出サポート
●通院の介添え
●薬の受け取り
●散歩の付き添い
●入浴時の見守り 他
●案否確認サービス:週1回程度の見守り
●イベント開催:無料の映画鑑賞会・演奏会・セミナー・詩吟・体操や趣味の教室・食事会
(素材や食費は有料)。

出典:(一財)若葉台まちづくりセンター
https://wakabadai-kc.or.jp/living/exclusive/himawari/




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齊藤 広子 Profile
齊藤 広子
横浜市立大学国際教養学部不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士、不動産学博士。

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著作奨励賞、日本建築学会賞、都市景観大賞優秀賞、グッドデザイン賞等受賞。
著書に『新・マンション管理の実務と法律』(共著・日本加除出版)、『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『初めて学ぶ不動産学』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。