- 連載
- マンガで事例研究
- 2022.04.01掲載
春になるとマンションで引っ越しする人が多いな。隣の佐藤さんが引っ越し、新しい人が入ったらしいけれど、なんていう名前なんだろうか。表札も出ていないし……。いったい誰が住んでいるのか、よくわからないと不安になるな。まさか、シェアハウスや民泊にしていないよね。
●名簿の意義
マンションでお互いの顔が見えると安心ですよね。しかし、なかなかタイミングが合わず、顔を合わせる機会がないこともあります。どんな人が住んでいるのかわからないと不安な気持ちになりますし、災害時等に助け合うことができませんね。そこで、どんな人が住んでいるのかがわかる居住者名簿、さらに、安心・安全に暮らすには要援護者名簿もあるといいですね。
また、管理組合の活動の基本に所有者名簿は欠かせません。だれが管理組合の構成員であるかがわからないと、総会の議案書も送れませんし、管理費や修繕積立金も集められません。所有者不明の住戸をつくらないためにも所有者名簿は必要です。
マンションでは、基本として「所有者名簿」と「居住者名簿」が必要になります。そして2022(令和4)年4月から、地方公共団体による「管理計画認定制度」とマンション管理業協会による「マンション管理適正評価制度」が始まり、「所有者名簿」・「居住者名簿」の整備と年1回の更新が認定、評価の基準の1つになっています。そこで、「所有者名簿」と「居住者名簿」について考えていきましょう。
●名簿づくりにおける管理組合の個人情報保護法の適用
2015(平成27)年に個人情報保護法が改正され、2017(平成29)年から、マンションの管理組合も名簿をつくるうえで法の規制の対象となりました。では、具体的に何をすればよいのでしょうか。
第一に、名簿の利用目的をできる限り特定しましょう。「管理規約に定める管理組合の業務のために利用する」等と特定し、掲載する情報(部屋番号、所有者氏名、連絡先電話番号・メールアドレス等)を定めておきます。
第二に、個人情報が漏えい、滅失またはき損しないように管理します。そしてその情報が正確かつ最新の内容であるように保つとともに、利用する必要がなくなったときは、これを遅滞なく破棄(データで保管の場合は消去)するよう努めることになります。
第三に、本人の同意を得ないで、第三者に個人情報を提供してはいけません。また、本人の同意を得たときにはそのことを、そしてこれを提供した場合には、その内容を記録し、保管します。
個人情報とは、氏名や生年月日、その他個人を識別できるものをいいます。つまり、名簿は個人情報になりますので、取り扱いには十分な注意が必要であるということに留意しましょう。
●名簿づくりと管理
名簿をつくるために、管理組合はどんなことを整えておく必要があるのでしょうか。
<所有者名簿>
〇組合運営の基本となる所有者名簿の作成と保管を管理規約に定めておきます(標準管理規約では第64条 理事長の仕事として位置づけ)。
氏名のほか、総会の案内等を送付できる住所、緊急時に連絡が取れる電話番号、メールアドレスなどを一緒に届け出てもらうこともあります。
〇所有者名簿を更新し続けられるように、組合員が資格を取得、または喪失した場合、管理組合に届け出るよう管理規約に定めておきます(標準管理規約では第31条 届出義務)。
<居住者名簿>
〇居住者名簿を作成し、更新し続けられるように、入居時の届け出や届出事項に変更があった場合の取り扱いを管理規約や使用細則に定めておきます(使用細則モデル 第8条)。
〇居住者名簿には、氏名、続柄、自宅電話番号、連絡先等を記載し、入居届として提出してもらいます。より詳しい情報を把握するために、任意記載事項をつくることもあります。
<名簿の取り扱い>
〇名簿をどのように管理するのか。誰がどのように所持できるのか、理事の守秘義務、理事でなくなったときの名簿の取り扱いなども細則等で定めておきます。管理会社に委託する場合には、その範囲と責任を管理委託契約書にも明記することが重要です。
〇所有者名簿の保管等を管理会社に委託している場合でも、管理組合が管理の主体者ですから、管理組合自身でも名簿を保管しておくことが重要です。
〇パソコン等で電子データとして管理している場合には、データが流出しないように、インターネットとつないでいない機器で管理することや、パスワード設定による管理も必要です。
マンション使用細則モデルにおける取り扱い例
第6条 規約第〇条(届出義務)の書面の様式は、別記様式第〇に掲げるとおりとする。
(通知を受けるべき場所の届出)
第7条 規約第〇条(招集手続)第〇項の通知を受けるべき場所の設定、変更又は廃止の届出は、管理組合に別記様式第〇による書面を提出してしなければならない。
(入居の届出等)
第8条 区分所有者又は占有者が新たに入居したときは、すみやかにその旨を別記様式第〇による書面により管理組合に届けなければならない。届出事項に変更があったときも、同様とする。
2 理事長は、前〇条及び第1項の書面に基づき、規約第〇条(帳票類の作成、保管)の組合員名簿を作成する。
(届出書類の保管等)
第14条 理事長は、第5条から第8条までに掲げる書面(組合員名簿を除く。以下この条において「届出書類」という。)を管理人室、管理用倉庫その他の保管場所に○年間保管するものとする。
2 前項の保管期間を経過した届出書類は、いつでも廃棄することができる。
3 理事長は、みだりに届出書類を閲覧させてはならない。ただし、対象物件の管理のために管理組合が必要とするとき、捜査機関が捜査のために必要とするときその他法令の定めによるときは、この限りでない。
(事務の委託)
第15条 理事長は、この細則に定める事務の全部又は一部を、第三者に委託することができる。
本使用細則モデルは1997(平成9)年に改正・発表された「中高層共同住宅標準管理規約」を受け、(財)マンション管理センターが建設省(現国土交通省)からの受託事業として調査研究を行い、その成果として1999(平成11)年に発表した「中高層共同住宅使用細則モデル」を、その後行われた法改正及び2004(平成16)年1月に国土交通省が発表した「マンション標準管理規約」の改正に対応して、2007(平成19)年7月に改定したもの。