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  • 2022.01.04掲載

所有者不明住戸への対応

横浜市立大学国際教養学部教授 齊藤広子

●所有者不明住戸への対応方法

 どうして所有者不明になってしまったのでしょうか。冒頭のように、区分所有者が死亡した、あるいは施設への入所や病院に入院したなどの事由があるかもしれません。区分所有者が死亡した場合に、その後相続により誰が所有したのかが明確になっていないことがあります。その場合は、所有者を確定する作業が必要となります。弁護士などに依頼し、相続調査をし、相続人を確定することになります。相続人全員が相続放棄をしている場合もあり、「相続人がいない」場合もあります。こうした事例では、利害関係人の申し立てにより、裁判所が相続財産管理人を選任し、マンションの住戸を含めた財産を清算してもらうことになります。なお、こうした住戸では管理費が滞納されているケースが多いと考えられますので、管理組合は利害関係人となり、財産管理人の選任を申し立てることができます。そして、住戸を処分し、管理費の支払いを受けることになります。
 しかしながら、こうした手続きには時間も費用もかかりますので、所有者不明にならないようにする予防策が必要です。

●所有者不明にならないように

 所有者不明になったら管理組合にとって何もよいことはありません。そのため、日頃の管理組合の運営が大事になります。長期不在にする際の届け出をいま一度徹底させましょう。その際、緊急時の連絡先も必ず届け出てもらいましょう。所有者の変更、居住者の変更の届け出についても順守してもらいましょう。そのうえで毎年、総会開催に合わせて所有者名簿、居住者名簿の確認・更新を行うようにしましょう。そして管理費・修繕積立金の滞納の把握です。所有者不明住戸への対応には早期発見・早期対応が必要です。日頃の管理組合運営の中で、所有者不明の状況をつくらない体制の構築を心掛けましょう。そして、居住者同士がコミュニケーションをとり、相互に助け合える環境をつくることも大切です。マンションのなかでボランティアを募り、くらしをサポートする体制づくりなどがあれば、安心して暮らせることになりますね。マンションに住んでよかったと、お互いが安心して暮らせる環境をみんなでつくっていきましょう。




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齊藤 広子 Profile
齊藤 広子
横浜市立大学国際教養学部不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士、不動産学博士。

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著作奨励賞、日本建築学会賞、都市景観大賞優秀賞、グッドデザイン賞等受賞。
著書に『新・マンション管理の実務と法律』(共著・日本加除出版)、『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『初めて学ぶ不動産学』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。