- 連載
- マンガで事例研究
- 2021.01.04掲載
[改装工事を必要とする場合]
共用部分の変更になります。工事内容を検討、費用の見積もりを取得し、総会での承認となります。修繕積立金を使う場合でも決議が必要です。マンション標準管理規約のように、修繕積立金の使途の項目に共用部分等の変更がある場合は、工事の内容と金額、工事を発注する業者、工事の期間や居住者の生活への影響、工事費の捻出先などを示し、決議を行います。決議は区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要です(特別多数決議)。また、修繕積立金の使途に「共用部分等の変更」の項目が位置づけられていない場合、規約の変更の決議を行いましょう。
第28条 管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
一. 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
二. 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
三. 敷地及び共用部分等の変更
四. 建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という)に係る合意形成に必要となる
事項の調査
五. その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
[改装工事を必要としない場合]
改装工事をしない場合でも用途を変えることになり、マンション標準管理規約「別表第2」で示す「共用部分の範囲」の変更が必要となりますので、決議は区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要です。専用のワーキングスペースにしないまでも、平日の集会室を開放し、仕事ができるようにする方法もあります。この場合は、集会室の使用細則の見直しとなり、総会で過半数の賛成が必要となります(普通決議)。
普通決議と特別多数決議
●共用部分の利用方法の見直しを
マンション内に使われていないスペースがあるかもしれません。
築年数が経ち、管理組合の書類が増えてきて、集会室の1つが倉庫になっているという事例がありました。この書類を整理し、電子化したら、集会室が1つ空くことになり、空いたスペースを有効活用することができます。たまった書類も電子化したほうが活用しやすいのではないでしょうか。情報は蓄積するものではなく、活用するものですから。
かつての住み込みの管理員の居室を、居住者が集える場に変更した事例があります。ほかにも、保育所が撤退した後の空間をトレーニングマシンが入ったジムにしたり、カラオケルーム、レンタルルーム、大人数が利用できるゲストルームにした例、シアタールームをカラオケルームにした例、また、日ごろ使っているロビーをコンサート会場にしたりと、様々な工夫が見られます(詳細はマンションのwaでぜひご確認ください)。
マンションはこんなものだと諦めないで、より快適に暮らす方法を考えることは、豊かなマンションライフにつながります。もちろん、なんでも変更するのが良いわけではありません。しかし、時代の変化に、社会の変化に、住み手の変化に合わせて、共用部分の利用方法の見直しも必要なのではないでしょうか。
齊藤 広子
横浜市立大学国際教養学部不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士、不動産学博士。
著書に『新・マンション管理の実務と法律』(共著・日本加除出版)、『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『初めて学ぶ不動産学』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。