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  • 2019.10.01掲載

地域との連携

横浜市立大学国際教養学部教授 齊藤広子

花火大会の日、集まった人達のマナーは本当にひどかったな。マンションのエントランスにはゴミが散乱。わがマンションの屋上から花火を見ようと、人がいっぱいだったけれど、そもそも誰がマンションの住人なのか、その友人なのか、あるいは全く関係ない人なのかもよくわからない。だから、注意したくてもできないし……。
マンションの住人以外は入れないようにしたらいいのに……。ついでに、地域との関わりも一切なければ面倒でないかも……?


●マンションと地域

 冷たいことを言っている人がいますね。マンションは、一見すると地域との関わりを持つことなく暮らしていけそうですが、実はそうではありません。「地域との関係なんていらないし……」と考える人もいるかもしれませんが、マンションは不動産ですから、地域に定着しています。そのため、地域と共存し、地域の中で暮らすことになりますので、近隣との交流や連携も必要になってきます。マンション居住者であろうとなかろうと、自分たちの暮らす街が防犯性や防災性の高い街であってほしいと誰もが思いますよね。マンション居住者の安心・安全は、マンション内だけでなく、マンションがある地域との関係からも作られています。また、多くの人とふれあうことで心からの安心や楽しみを共有する機会も増えていきます。そんな事例を見ていきましょう。

●地域との連携の事例

 マンションが「地域貢献をしたい」という思いから始めた様々な事例があります。

① イベントへの招待
 マンションで行う餅つき、お花見、花火大会、夏祭り、運動会、コンサートなどのイベントに地域の人を招待している事例があります。「地域の人」とは、自治会・町内会の人をはじめ、社会福祉協議会、民生委員、商店街の人、自治体関係者、教育機関等、様々です。例えば、マンションの中庭で開くマルシェ。誰でも参加OKにして、地域の人も自由に参加できるようにしているケースも見られます。

② サークルやイベントへの参加を可能に
 マンション内のサークルに、近隣の住民も参加するようになった事例があります。あるマンションで行われている子供の空手教室の評判を聞きつけた近隣の人からの依頼で、地域の子供たちもその空手教室に通えるようになったり、子供向けに開催している防災教室に、マンション外からの参加希望者を募り、子供同士、子供を通じた地域の親同士の交流の場としているなどです。

③ 日常及び災害時の施設の地域開放
 日常的に近隣の人も集会室を使えるようにしているマンションもあります。さらに、災害時には津波避難ビルや地域貢献建築物に認定されている、あるいは集会室を避難場所として利用する補助避難所の認定を受けている事例もあります。

●地域で連携

① マンションと地域
 地域とマンションが一緒に取り組む事例があります。地域全体の防災計画・防災マニュアルを作成し、そのなかにマンションの防災計画を位置づけるというものです。また、地域と連携した防災訓練を行うケースもあります。まずマンション内で訓練を行い、その後、地域の方々と合流して地域全体での訓練を行うというものです。ひとつのマンションだけではなかなか成立し得ないようなことも、地域と連携して行うことで、より楽しく実りあるものになっていきます。ほかにも、児童登下校時の見守りや防犯パトロールの実施、地域のお祭りへの参加、災害時の近隣商店との助け合い協定など、地域との連携は心強いですね。

② マンションとマンションの連携
 地域のマンション同士の連携も見られます。同じ地域の3つのマンションで、一緒にお祭りをしている例です。それぞれのマンションで入居時期や居住者層も異なりますが、幅広い世代の人が一緒になって運営することで、様々な世代が参加しやすいイベントにしています。高齢者が多いからといって、高齢者向けのイベントばかりでは、若い世代は参加しようとは思いませんよね。また、経験豊かな年齢層と、若い感覚を持った年齢層が触れ合うことで、お互いに学び合うことができます。管理組合の運営にもプラスになります。運営担当をマンションごとの輪番とすれば、3年に一度の幹事で、毎年イベントを楽しめることになります〈写真1.2〉。
 大規模修繕を共同で行ったマンションもあります。小規模なマンションで、スケールメリットが小さいため、複数のマンションで共同発注し、現場事務所を一つにするなどして、節約ができました。

〈写真1〉築30年以上のマンションのお祭りに子供たちがいっぱい。秋祭りは3つのマンション+管理会社+商店街
     が共催する。
〈写真2〉子供たちによるカフェ。