- 連載
- マンガで事例研究
- 2019.01.07掲載
●管理組合法人にすると
さて、管理組合法人になった場合も、管理組合と同じ運営でよいのでしょうか。
基本的な枠組みは同じと考えてください。その理由は、法人格があってもなくても、管理組合は同じような体制で運営が行われているからです。ただし、管理組合法人には以下の要件が求められます。
1つは、「管理組合法人」と名乗ることです。通常のマンションでも管理組合と名乗っていることが多いですね。ですが、法人格がない場合は何と名乗ってもよいことになっています。
2つめは、理事を置くこと、そして監事を置くことです。しかも、法人の場合の理事は2年任期が原則になります。通常のマンションでもほとんどで理事と監事を置いていますが、法人格がない場合は、理事と監事を置くことは特に法律上で規定されていないのです。
規約については、法人として定めなければならないとはされていませんが、法人としての規約に改正するのが適当かもしれません。
管理組合を法人にする決議をすると、法人の名称、事務所を定めて、理事や監事なども登記をします。また、法人にすると、理事のみでの決議も可能となります。
表 管理組合と管理組合法人の運営の違い(区分所有法での決まり)
管理組合 | 管理組合法人 | |
---|---|---|
名称 | 自由 | 「管理組合法人」とする |
理事・監事 | 規定なし | 置かなくてはならない 任期は原則2年 |
決議 | 集会・規約 | 集会・規約 ただし、特別決議以外は理事等の役員で決められる (規約の定めによる) |
●管理組合に経営感覚を
近年、管理組合を法人にする理由として、経営感覚をとり入れるということがあるようです。資産価値を上げるためのマネジメントです。「マンションの周りの土地を購入、整形し将来の建て替えに備えよう」「隣の建物を買ってゲストルームや図書室、サロンにしよう」「管理組合で空き住戸を購入し、集会室にしよう」あるいは「借地権マンションの底地を買い取ろう」など、管理組合が資産を保有するといった事例です。
守りの管理から攻めの管理、資産価値の向上を目指した管理です。
管理組合法人にすることで、管理組合ではできなかったことに挑戦できることがあります。その一方で、理事が変われば登記内容の変更が必要になるなど、その手間や費用が掛かってきます。
自分たちのマンションにとって、管理組合を法人にするメリット、デメリット、必要性を考慮し、必要に応じて法人にすることを考えてもよいかもしれません。わからないことがあれば、身近にいる管理会社等の専門家に相談してみるのもよいでしょう。
<法人にした場合の参考資料>
マンション管理センター:「改訂新版 管理組合法人設立の手引~法人管理規約モデル付き~」
イギリス ロンドンのマンション(管理組合は会社組織となっている)
齊藤 広子
横浜市立大学国際総合科学部まちづくりコース不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士、不動産学博士。
(一社)マンション管理業協会「マンションいい話コンテスト審査委員会」委員長
著書に『新・マンション管理の実務と法律』(共著・日本加除出版)、『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『初めて学ぶ不動産学』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。