- 連載
- マンガで事例研究
- 2018.01.05掲載
●住宅宿泊事業法の成立
一般的に宿泊業を行うには、旅館業法での認可が求められます。しかし、用途地域や建物の設備面などから簡単に認可されるものではありません。そのため2014年3月に公布された国家戦略特区法では、国家戦略特区においては、自治体の条例の下で、特例として旅館業法の適用除外を認めました。東京の大田区、大阪府、大阪市、北九州市、新潟市などですが、これでは民泊ができる地域も限られます。そこで生まれたのが、住宅宿泊事業法(民泊新法)です。
この法律では、民泊を行おうとする者は、都道府県知事への届出を必要とし、家主が居住する場合は、懸念される衛生面の確保や、騒音防止のための説明、苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示等を家主に義務付けています。家主が不在の場合には、これを住宅宿泊管理業者(国土交通大臣の登録)に委託することを義務付けています。また、民泊を仲介する業者(観光庁長官の登録)に対しても宿泊者への契約内容の説明等を義務付けています。
こうした体制が整えば、年間180日以内の営業ができるようにしました。法律の施行は2018年
6月15日、住宅宿泊事業の届出の開始は2018年3月15日となっています。
●マンションでの対応
民泊に関するマンションでのトラブルを防ぐために、明確に民泊を認めるのか、認めないのかの方針を決め、管理規約に盛り込むことが望まれます。そこで、マンション標準管理規約が改正されました。
ここでは、当然、旅館業法に基づくような営業は想定していません。また、家主が居住する場合のみ認めるケースもありえます。そうしたことも、管理規約の中で、明確に規定しておく必要があります。マンションの住戸を使って民泊をしようする事業者は、管理規約で許容する旨の条項の提出、あるいは許容する旨の規定になっていない場合には、管理組合が民泊を禁止する意思がないことを確認した書類の提出が求められます。ゆえに、規約改正の準備が整っていない場合は、まずは理事会で話し合い、方針を決め、その趣旨を区分所有者・居住者に周知させることが必要です。
●管理規約の役割
民泊問題で、改めて管理規約の重要さを認識しましたね。ここできちんと明示することにより、私たちの生活への影響が大きく変わってきます。マンション管理の基本は区分所有法で定められていますが、各マンションに応じたルール、例えば、「ペットを飼わないでください」「住戸を事務所に使わないでください」「管理費と修繕積立金はこのように負担しましょう」などを決めておくものが管理規約です。ですから、管理規約はマンション内の憲法ともいわれています。そこを買った人や住む人々の利用や管理の仕方のルールを決めたものです。これを機に、規約の大切さをしっかりと理解し、規約を守る体制を整えていきましょう。
齊藤 広子
横浜市立大学国際総合科学部まちづくりコース不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士、不動産学博士。
(一社)マンション管理業協会「マンションいい話コンテスト審査委員会」委員長
著書に『新・マンション管理の実務と法律』(共著・日本加除出版)、『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。