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  • 2018.01.05掲載

民泊への対応 -規約の見直しを-

横浜市立大学国際総合科学部教授 齊藤広子

「このマンションは民泊禁止です」って掲示板に書いてあったけれど何のことだろう。
「理事会では民泊禁止の方向で管理規約改正に向けて話し合っております」ってあるけれど、規約ってそもそも何だろう。そんなもの持っていたかな?
規約によって生活にどんな影響が出るんだろう……。

●民泊って何?

 最近、民泊という言葉をよく聞くようになりました。一般の住宅の空き家や空き室などを、ホテルのような宿泊施設として提供することです。借り手の多くは外国人旅行客で、貸したい人と借りたい人がインターネットを通じて簡単にマッチングできるため、宿泊施設が不足するなかで大きく伸びてきています。
 今までも民家を借りて宿泊することは、宿泊施設が不足する農村などで、グリーン・ツーリズムといった活動として利用されてきました。また世界的に見ても、さまざまな形で、民家を活用した宿泊体験が実施されています。日本では、外国人観光客の増加に対する宿泊施設の不足、空き家や使われていない資産を有効に活用する地方創生の実現のためにも、シェアリング・エコノミーとしての民泊が注目されています。


●マンションでも民泊

 このような背景から、いま、マンションも「民泊」に使われるという事態が起こっています。マンションの皆さんが合意していればよいのですが、ある日突然、外国人旅行者がオートロックのエントランスを通り、マンションの中に入ってきて驚いたという話も聞きます。
 不特定多数の人の共用部分への出入りがあり、管理組合としても、誰が・いつ・どのように利用しているのかが分からず、居住者は不安になります。安全面などのセキュリティの問題、あるいは衛生管理や感染症の問題、こうしたことが起こることでの近隣トラブルやコミュニティの崩壊、万が一の災害時にはどのように対応すればよいのかといった懸念……。また、宿泊者がホテルに宿泊しているかのような気持ちになってマンションの共用部分を歩き回り、共用施設を独占する、ゴミ廃棄などのトラブルが頻繁に起こるなど、マンション居住者にはかなり大きな迷惑になっているケースもあるようです。
 民泊に使われていたことが判明したあるマンションでは、住戸を特定し、所有者と話し合い、実際にやめてもらうまでに約半年かかったということです。その間、マンションの居住者はどんな気持ちで暮らしていたでしょうか。とても不安であったと思います。