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  • 2017.07.03掲載

管理者って何??

横浜市立大学国際総合科学部教授 齊藤広子

●マンションのエントランスで

「すいません。お宅のマンションの管理者って誰でしょうか?」
「管理者って? 管理員さんでしたら、そこにいますよ。」
「いいえ、管理員ではなく管理者です。隣の家の者ですが、どうしてもマンションの代表の方とお話ししたいのです。夜中に騒がれたり、我が家の庭にベランダから物が落ちてきたり、さらには我が家の前に勝手に駐車したり、本当に困っているのです。法律の専門家に相談に行ったら、とにかく、マンションの管理者と話し合うようにと言われました。ですから、管理者を探しています。」
「管理員ではなく、管理者ですか……聞いたことないな。そんな人はいないと思います!!」


●マンションの管理者、何をする人?

 こんな会話が実際に聞こえてきそうですね。マンションの管理者とは、法律用語なので、マンションで居住しているなかではあまり出会わない言葉かもしれません。
 では、管理者とは、どんな役割をする人なのでしょうか。
 管理者は、マンションの中の管理の最高責任者です。区分所有者の代理人でもあります。マンションの管理を進める上での基礎となる法律「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」では、第3条に「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」とあります。ですから、必ず置かなければならないものではありません。ただし、決めておかないと、マンションの総会で決めたことを遂行する責任者が不在となり、住人が困ることになります。もし、隣の住宅から、このマンションの責任者と話がしたいと言われたら、誰が代表して話をすればよいのでしょうか。住んだマンションに問題があった場合に、誰が代表して分譲会社と話をすればよいのでしょうか。区分所有者各自が勝手に話をすると、マンション全体として、不利益なことが生じるかもしれません。そこで、区分所有者の代理人として、管理者が実質的に区分所有者を代表することができるようになっているのです。
 管理者は総会等で決めることになります。区分所有法での管理者の規定を見てみましょう。ここでいう集会とは、みなさんが普段、総会と呼んでいるものです。

区分所有法における管理者の主な規定

区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することが
できる(25条)。
管理者は、共用部分や建物の敷地及び附属施設を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う(26条1項)。
管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。共用部分の損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても区分所有者を代理する(26条2項)。
管理者は、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることが
できる(26条4項)。
管理者は、集会を招集する権利を持ち(34条1項)、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない(43条)。
規約、議事録等の書面を保管し、利害関係者からの請求があれば、閲覧を拒んではならない
(33条1項・2項)。