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  • 2016.04.01掲載

マンションの管理規約

横浜市立大学国際総合科学部教授 齊藤広子

 マンション標準管理規約が新しくなったんだって。急いで、わがマンションも規約の改正をしなければならないんだよね。だって、法律違反になるんでしょ。えっと、それにしても、通常総会には間に合わないし、臨時総会でも開くのかな? そもそも規約って何だろう。見たこともないし、持っているかどうかもわからない。誰が使うものなんだろう……。


◆管理規約って何?

 マンション標準管理規約が改正されましたが、これは「管理組合が各マンションの実態に応じて管理規約を制定、変更する際の参考」として国が標準版として策定したものであり、法律ではありません。
 そこで、はじめに管理規約とは何かを確認しておきましょう。
 マンション管理の基本的な進め方は区分所有法に従います。これは、正式な名称は「建物の区分所有等に関する法律」といいます。しかし、区分所有法とはマンションだけを対象にしているのではなく、例えば業務用のビル、倉庫、ときには戸建て住宅地でも区分所有法は使うことができます。また、2戸のマンションでも1000戸のマンションでも、同じ法律が適用されます。そのため、あまり細かいルールをこの法律で決めておくわけにはいきません。どのマンションでも、そしてマンション以外の区分所有の不動産全てに適用できるように、所有や管理に関する最低限のルールがこの法で決められています。
 それでは、個々のマンションで「ペットを飼ってはいけません」「事務所にしないで下さい」「管理費と修繕積立金はこんなふうに負担しましょう」といったルールを決めておくものは何でしょうか。これが管理規約です。


◆法律と管理規約の関係は?

 法律ではないので、何でも勝手に管理規約で決められるの? と思われるかもしれませんが、そうではありません。区分所有法の規定に反する内容は無効です。つまり、区分所有法の内容には、集会の決議や規約をもっても変えることができない強行規定と規約や集会で決められる「別の定め」の項目があります。区分所有法に書いていないことや、「区分所有法では大原則●●であるが、規約で別の定めをしてもよい」という項目については、規約で区分所有法の内容と別の内容にできます。
 また、管理規約は必ず決めなくてはならないものではありません。区分所有法では、第3条に「定めることができる」とあります。これは小規模なマンションでは規約がなくてもその都度住民で話し合うことも可能だからです。しかし、実際には99.0%のマンションで規約を定めています。やはり、マンションのルールは必要ですよね。

◆マンション標準管理規約とは何?

 管理規約の標準版として、マンション標準管理規約(以下「標準管理規約」という。)があります。標準管理規約には3つの種類があり、1棟のマンションを対象とした単棟型、2棟以上のマンションの場合には団地型、1階に店舗がある場合の複合用途型があります。なお、標準管理規約は法的な拘束力があるものではありません。あくまで参考用のものです。ですから、改正されたからといって急いでマンションの規約を改正しなければならないというものではありません。まず、改正の趣旨を理解しましょう。そして、これを機に、自分のマンションの規約で、改正が必要なところがないかを確認しましょう。勉強会を開催し、必要があれば規約改正委員会をつくり、本格的に取り組む方法もあります。自分の規約を見直す際に、管理規約は現実に即していないと意味がありません。
 規約とは、区分所有者同士、またその家族やその部屋を借りて住んでいる人も含めたマンション管理のルールです。また、裁判では区分所有者の行動が管理規約等のルールに適合しているのかどうかが重要な判断基準となります。ですから、現実をよく踏まえたものにしておく必要があります。