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  • 2015.07.01掲載

マンション内の公開空地

横浜市立大学国際総合科学部教授 齊藤広子

◆マンション内の公開空地の実態

公開空地があるマンションは多くなっています。例えば、首都圏の超高層マンションでは84%のマンションで公開空地がとられています。ちょっと、訪ねてみましょう。

公開空地を示す看板 公開空地の利用方法の看板 広々とした公開空地。近隣の人が通行し、ベンチなども置いてある。

確かにこのような公開空地は、魅力的で、地域に寄与したものになっていますね。でも、誰でも使えるので管理上は様々な問題が起こっています。

◆公開空地の管理問題と対処方法

どんな問題が起こっているのかを見てみましょう。

事例1
近所の中学生がサッカーをしていて、マンションに住んでいる小さい子が遊べない状態です。「来るな」とは言えないし・・・。

事例2
犬の散歩をさせる人が、糞の始末をしていきません。・・・どうなっているのでしょうか? 常識のなさ、マナーの悪さにあきれています。

事例3
マンション外の人が、自転車を置いています。通行の邪魔にもなり、困っています。

公開空地はマンションの敷地であるため、区分所有者の皆さんのものです。だから、管理の責任もそれにかかわる費用も皆さんが担う必要があります。だからといって、近所の人に「使うな」「歩くな」と規制をすることはできないのです。ただし、利用のルールを作ることはできます。

ルールの例を見てみましょう。
「公開空地では、ボール遊び禁止、スケートボード禁止、ペットの糞を必ず持ち帰りましょう」

こうした場合、以上のようなルールを作ってもマンション外の人に伝わらないと意味がありません。そこで、ルールをマンション外の人に知らせることが必要です。公開空地に利用のルールを示した看板を立てることがあります。そして、ルール違反者には、居住者や管理員が「ルール違反である!」と伝え、注意することにしましょう。

また、管理上どうしても問題がある場合は、行政と相談し、公開空地の形態を変えることもできます。

管理の問題が起こる原因の一つに、マンション住人の皆さんが「公開空地は自分のもののようで自分のものではない」と、無関心になっていることがあります。許可を得れば、一時使用もできます。お祭りのときに、その場所を使い、地域との交流の場にしている例があります。近所の人もお祭りに参加し、とても楽しそうでした。また、地域貢献型マンションとして、公開空地に災害時の井戸やかまどベンチを設置している例もあります。

◆地域財産を使ってマンションと地域の交流を

せっかく持っている「公開空地」という財産を使って、「地域の人と使い方を相談する」、「お祭りに使い、地域の人にも参加してもらう」、「地域と一緒に防災訓練をする」など、地域とマンションの連携の場と機会をつくりませんか。地域と連携しているマンションは、安心安全に暮らせるマンションにつながります。ぜひ、自分たちの財産を活用しましょう。

齊藤 広子 Profile
齊藤 広子
横浜市立大学国際総合科学部まちづくりコース不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション2025ビジョン懇話会」座長

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著作奨励賞、日本建築学会賞等受賞。
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。