- 連載
- マンガで事例研究
- 2015.04.01掲載
◆新しいマンション建替え制度?
うちのマンションも古くなったな。隣のマンションが建替えを考えはじめたというけれど、まだ築30年で建替えしなければならないのだろうか。確かに、高齢者も増えてきたので、エレベーターがないのは大変だ。でも、いまさら建替えて住宅ローンを払うのは大変だし、最近買った若い人もいる。この人たちはまだまだ住宅ローンを背負っているだろうし…。「建替えたら容積率を1.5倍前後割増しできる制度ができた」って最近聞いたけれど、その制度を使うと、自己資金なしで建替えができるのかな…。
◆新・マンションの敷地売却制度
新しい「マンション建替え制度」とのご理解のようですが、このたび施行されたのは、多数決で敷地を売却できる制度も含め、名称も「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(注*1)に改正した法律です。売却する敷地に新たにマンションを建設することができ、条件を満たせば容積率の緩和も受けることもできます。
敷地の売却?? 今までもマンションの敷地を売却することができました。全員一致で意見が合えばそれが可能です。
全員一致? そうですよね。これはなかなか難しいことです。相続人が今の段階で確定していない。または、まさかと思いますが、所有者に行方不明の人がいる場合もあります。「病気で今は判断できないから、待ってくれ」など、どんな場合も全員一致は難しいことです。
では、今までは多数決でマンションの敷地を売却した例はないの?と聞かれそうですね。実はあります。被災したマンションです。東日本大震災で被害を受けたマンションの中には皆さんで話し合い、敷地を売却することにしたマンションがあります。被災マンション法では、災害による被害が大きかったマンションにおいて、5分の4以上の多数決で、敷地を売却する制度が整えられていました。
注*2被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(平成7年法律第43号)
新しくできた敷地売却制度は、南海トラフ巨大地震や首都直下地震等の巨大地震が起これば、耐震性不足のマンションでは生命・身体の危険があるため、こうしたマンションを対象として生まれた制度です。
耐震性の不足? 具体的には構造耐震指標(Is値)が0.6未満が目安となっています。
つまり、すべてのマンションが対象ではないということにご注意ください。対象となるのは耐震性が低いと認定されたマンションです。そして、どんな場合でも容積率の緩和が受けられるわけではありません。
「耐震性不足の認定を受けたマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについて、特定行政庁の許可により、容積率制限を緩和する」とあり、次の2つの条件をクリアすることが必要です。
①一定の敷地面積を有すること
第一種低層住居専用地域もしくは第二種低層住居専用地域または用途地域の指定のない区域 | 1,000㎡以上 |
第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、準工業地域、工業地域または工業専用地域 | 500㎡以上 |
近隣商業地域または商業地域 | 300㎡以上 |
②市街地環境の整備・改善に資するものであること