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  • 2015.01.05掲載

借家人は何をしてもよいの?

明海大学不動産学部教授 齊藤広子

◆隣に来た謎の人物?

隣に誰か引っ越してきたみたいだ。何年か空いていたけれど、いよいよ誰か来たのかな。楽しみだな…。

え? ペットを飼っているの? 隣から犬の鳴き声がする。 え?え?え? こんな遅い時間にこんな大きなボリュームで音楽を聴くのか? ちょっと周りに気を遣ってほしいな…。おいおい!! ベランダを勝手に囲うなよ。万が一の時、いったいどうやって逃げるんだ。もう我慢できない。隣に文句を言ってやる!! 

ピンポーン!

「いい加減にしてくれ! あんたはこのマンションのルールを知らないのか?! うちのマンションでは、ペット飼育禁止、音楽鑑賞は22時まで。ベランダにそんな大きな物を置くときは管理組合の許可。常識だろう! マナー違反もいいところだ。いい加減にしろ。ルールが守れないなら出ていけ!」

「何言っているんだ! うちの大家は『ペットを飼ってもいいし、しっかりした建物だから深夜でも音楽を聞いて大丈夫』って言ってたぞ。あんたは隣の人で、関係ないでしょ。うちの大家が『いい』と言っているんだから、因縁つけるのもいい加減にしてくれ! 帰った!帰った!」

◆マンションの賃貸化

楽しみにしていた隣の住戸に引っ越してきた人は借家人のようですね。「大家さん」と言っていた人が区分所有者で、この人から借りて住んでいるようです。分譲のマンションでも、こうして借家人が住むことは珍しくありません。会社が住戸を保有して社員が住んでいる場合、親や親族の家に住んでいる場合、また大家さんと賃貸借契約を結んで住んでいる場合など、さまざまです。こうして区分所有者ではないけれど、マンションに住んでいる人を法律用語では占有者と呼んでいます。一般的には、大家さんと賃貸借契約を結び、部屋を借りている人が多く、こうした人は賃借人と呼びます(※1)。

日本のマンション全体では賃貸率は平均13.7%で、築年数が古いほど高くなる傾向があります(※2)。しかし、初めから元地主の所有の住戸がある、売れ残りの住戸が賃貸になった、賃貸用住宅が初めから設定されていた等、入居当初よりとくに賃貸率が高いマンションもあります。

※1占有者とは?
①賃貸借契約を締結し、住んでいる人(賃借人)
②会社が所有しており、社宅として住んでいる人
③親・親族の家の住んでいる人等

※2 マンションの完成年別 平均賃貸率
グラフ
完成年次別平均賃貸率(%)
~昭和44年22.3
~昭和49年21.1
~昭和54年13.9
~昭和59年15.3
~平成元年19.2
~平成6年19.5
~平成11年10.6
~平成16年9.1
~平成21年9.8
平成22年~4.4
 出典:平成25年度マンション総合調査
    結果報告書

◆借家人は組合構成員ではないが、ルールを守る必要あり

区分所有者はどこにいても管理組合の構成員です。しかし、住戸を借りて住んでいる賃借人等の借家人は管理組合の構成員ではありません。ゆえに、管理費・修繕積立金を支払うという区分所有者の義務や、総会に出席して議決権を行使する権利はありません。だからといって、規約や総会で決まったことを守らなくてもよいわけではなく、ペット飼育のルール、夜間騒がないなど、マンションのルールを守って、暮らすことは必要です。また、条件を満たせば必要に応じて総会に出席して意見を言うこともできます。居住者としての責任は、マンションの利用に係わる部分です。 ですから、マンションのルールを守ることは当然の義務です。