- 連載
- 管理組合ネットワークシリーズ
- 2013.04.01掲載
◆管理組合交流の場を、の声を受けて
江戸下町の面影が随所に残り、東京スカイツリーの開業でさらなる発展を遂げている墨田区には、区内のマンション居住者で組織される非営利任意団体「すみだマンション管理組合ネットワーク」(通称:すみネット)があります。すみネットは、事務局を墨田区住宅課に置き、共催でセミナーを行うなど、区と協力して活動している点が大きな特徴です。
墨田区住宅課計画担当の檜垣雅之氏は、すみネット設立の経緯をこう話します。「墨田区では住宅施策の一環として1995年から独自に分譲マンション居住者を対象とした『マンション居住者交流会』を開催してきました。その中で、参加者の方から管理組合相互の自主的な交流組織が必要だとの声が上がったことが、すみネット設立のきっかけとなったのです」。
折しも、都市部では分譲マンションの供給が年々増加。維持管理や修繕、建替えといったマンション特有の様々な問題が浮上してきていました。2001年にマンション管理適正化法、2002年にマンション建替え円滑化法がそれぞれ施行されるなど、国による適正なマンション管理に向けた法整備も進んでいました。
そんな中、墨田区では2002年「墨田区分譲マンション実態調査」を実施。さらに区内分譲マンション居住者の有志によって、管理組合ネットワークの設立準備会が立ち上げられ、2003年11月にすみネットが設立されたのです。
◆すみネットが精神的な支え
すみネットは現在、個人会員26名、団体会員7団体が所属しており、役員は会長1名、副会長2名、理事5名、監事1名で運営されています。主な活動内容は①専門家によるセミナー及び交流会の開催、②会員向け機関紙「すみネット通信」の発行、③HPによる情報発信など。毎月1回の定例理事会に加え、通常総会が年1回開かれています。
ところで、2002年に行われた実態調査では同時にアンケートも行っており、その際に管理組合ネットワークに期待することとして、マンション管理に関する相談機能や学習の場としての機能、他マンションとの情報交換などが挙げられました。そこですみネットでは、これらの機能を強化する活動を中心に行っています。セミナーでは大規模修繕をはじめ高齢者問題とコミュニティ、節電など、その時々の時流にあわせたテーマを決めて専門家を招き、年3回のペースで開催してきました。例えば東日本大震災の直後に行われたセミナーでは、「耐震改修を含めたマンションの防災対策」をテーマに講演、交流会が開かれました。
マンションの理事長になり、墨田区主催のセミナーに参加したことがきっかけですみネットに携わることになった岩井希義氏は、「セミナーに参加した理由は、もっと主体性を持った管理組合にしたいと思ったからです。でも、なかなかうまくいかなくて悩んでいたときに、すみネットの仲間は精神的な支えでした」と言います。現在は、事業担当理事として、各種セミナーの企画、運営を行っているそうです。
◆さらなるレベルアップを
すみネットは、あくまで区内のマンション居住者によって運営されており、区の関わり方としては、マンション居住者の自主的な活動を支援するという立場をとっています。具体的には、組織の運営や様々な活動に対する金銭面での支援のほか、セミナー開催時には共催、後援などの形で支援を行っています。また、冒頭で記したように区の住宅課内に事務局を置いていますが、これはすみネットが特定の活動拠点を持たず、日中の問い合わせなどへの対応が難しいためだそうです。
墨田区はもともと小規模の町工場が多く、「ものづくりのまち」として発展してきた地域ですが、近年は住宅への用途転換によってマンションの供給も進み、都心への居住ニーズの高まりなどを背景に人口は増加傾向にあります。マンションに居住する世帯は総世帯の7割を超え、特に若者や子育て世帯を含めて転入者が増えているのは、嬉しいニュースです。しかし、既存マンションでは旧耐震のものも多く、建替えや大規模修繕が急務であるという問題もあります。
そんな中で、今後マンション管理組合の重要性はますます高まっていくとみて、墨田区ではすみネットの会員数増加と活動の活性化を支援していきたいとのことです。ただし、すみネットの活動も一部の意欲的な有志に支えられているというのが現実で、会員の固定化や高齢化も問題になっています。今後はより高度な問題を解決するために専門家との連携を強化する、より多くの人に情報を発信するためにHPの機能をレベルアップさせるなどで、すみネットの機能を強化する取り組みが必要だと、檜垣氏は話してくれました。