- 連載
- 専門家による施工事例
- 2013.10.01掲載
◆猫は完全室内飼い派が多数
ペットと暮らすといっても、犬と猫では飼育の仕方に異なる点があります。猫の場合、完全室内飼いをしている方が圧倒的に多くなります。自由奔放な性質の猫を室内に閉じ込めるようにして飼うことに抵抗を感じる方も少なくありません。しかし、外猫(家と外を自由に行き来できる猫)の場合、寿命が4、5年と短いのに対して、家猫(完全室内飼い)の場合は、寿命が約15~20年といわれています。
つまり、猫にとっては完全室内飼いをするということが長寿につながることになり、飼い主と長い時間ともに生きることができます。
◆ストレスをためない環境が必要
完全室内飼いを行っていれば長寿の安心はありますが、ストレスフリーである環境を整えることが必要です。
猫にとっては、寝る・ごはんを食べる・休む・遊ぶところが必要です。縄張りを広げないため、外に出る必要はありませんが、動き回れるような設備があるとよいでしょう。
・タワー
・ハンモック
・スカイウォーク
・ハウス(トンネル)
・爪とぎ
・トイレ
……など
◆猫の“動線”を作る
今回の事例Aは、新築マンションを購入されたお客様が入居前に猫のための設備を作ってくださいとの依頼です。
猫のためには、人間と違う動線が必要です。人間は縦横の動きメインですが、猫はクロス、交差する動きです。その他にも猫は高い所が好きです。高い所から見るという動作で安心感を得ています。ということは、反対に低い所では気持ちが不安定になります。
一般的に知られている猫の設備でキャットタワーがあります。猫は、高い所へ上るのは得意なのですが、反対にキャットタワーから下りること怖いと感じ、実は苦手です。猫にとってタワーは上るものです。ですから、タワーで上る→ウォークで下りるの動線を作ってあげます。
事例Aの写真は、リビングと隣の洋室を利用した動線です。洋室のタワーから上って、スカイウォークを渡り、扉の上のウォークに移り、境目の入口からリビングへ入り、キッチン側の壁のウォークを渡り、ボックス型ウォークで下りる、というコースになっています。
◆飼い主にも猫にもベストな素材で
猫を飼うにあたって飼い主が気にすることが壁への引っかきです。いろいろな素材を試した結果、珪藻土は、猫が引っかきをしないということがわかりました。また、消臭効果があるので、一石二鳥です。事例Bの写真では、壁には珪藻土を塗っています。
フローリングに使用する木材は、メイプルやオークの木材です。これらは軟らかすぎず、堅すぎず、ちょうどいい堅さなので、傷がつきにくいのです。傷がついたとしても少し表面を削ることで元通りになります。パイン材などの軟らかい木材だと猫の力でも傷がついてしまいます。
ウォークに使用する木材は、反りや曲がりを抑えているシナランバー材を使用します。
ウォークの板は猫が噛んで劣化してくるので、取り換えられる構造になっています。板の幅は20センチが理想です。
猫は体がはみ出るのが心地よく感じるので、20センチ以上あると楽しくないらしく、歩いてくれません。また、ウォークの段差は、30~35センチあけて設置すること。猫がジャンプしなくても、昇降できる距離です。ジャンプしなければ移動できない環境は、家具や壁・床材などに無駄な傷を増やすことになります。
◆その他にもある工夫
タワーは上るための道具以外に、爪とぎの役割も果たしています。表面にロープを巻きつけていますが麻より綿のロープのほうが丈夫なので理想です。価格は高いのですが、爪とぎ時のゴミが出にくく、何倍も長持ちします。タワーの板の表面は汚れて不衛生になりますから、フェルト等ではなく掃除しやすい木材そのままがよいでしょう。
来客の際に猫がドアから逃げ出そうとして困るといった依頼があります。そこで飛び出し防止扉を設置するのですが、生後3カ月以上の猫の場合、4センチ未満の幅は抜けられないということがわかりました。設置する現地のサイズを測って、4センチ未満を基準にぴったりと収まるドアを作ります。
今回のリノベーションのポイント!
・タワーで上って、ウォークで下りるという猫の“動線”を作ります。
・ウォークを設置する位置は、猫が楽しいと感じる位置かどうかが大切です。
・メンテナンスや長く維持することも考えて、素材を選びます。
・猫だけでなく、住む人も便利・楽しいと感じることで、猫との生活がより充実した素晴らしいものにしていけると思います。
株式会社LOYD 代表取締役 松原要
2007年独立し株式会社LOYDを設立。現在“住む人から造る人まで全ての人がワクワクするリフォーム”を展開中。これまでに約400件のペットリフォームを手掛けている。