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- 2013年冬号
◆耐震補強の方法
また、簡易診断等に対しては地元行政が無料で行う、あるいは専門家を派遣する、補助金を出す等の支援をしている場合もありますので、ぜひ確認をしてください。
地震に弱い建物の、耐震補強工事には多様な方法があります。柱の間になにか支え棒のようなものをする方法だけが対処方法ではありません。
多様な方法がありますので、それぞれの長所と短所を踏まえて方法を選択することです。
例えば、耐震スリットの新設や、空き住戸が多い場合は上層階の住戸の撤去などにより耐震性を高める方法もあります。
こうした取り組みには、管理組合としてまず、耐震改修推進決議として決議のうえ、専門委員会を設置したり説明会を開催することが重要になります。さらに実施の際には、説明会の結果、審議の内容を十分に踏まえ、修繕積立金を取り崩して行うこと等、あらためて総会の決議を行うことが望ましいです。推進決議は過半数決議で、実施には工事により普通決議の場合と特別決議の場合があります。
◆工事費の費用負担
耐震補強工事の費用は、通常の計画修繕と同様に、区分所有法第19条に基づいて、共用部分の持ち分割合に応じることが原則になります。その際に考慮すべきこととして、工事による、居住性や財産性に影響を与える場合の価値補填費用や、仮住まいが求められる場合の費用等です。一部の人が仮住まいを強いられる場合は、区分所有者間で負担し合うことを考えることも必要です。
◆安心安全なマンションに
マンションの健康診断をして、問題があれば、改善することは重要です。しかし、費用がかかってきますので、誰もがすぐに賛成というわけにはいかない場合もあります。また、補強工事の場合には、専有部分に影響を与えることも少なくありません。また、建替え決議で反対した場合のように、売り渡し請求などの制度は、耐震補強工事には法的には用意されておりません。
ですから費用負担の方法も含め、対処方法を丁寧に考えていきましょう。まずは命を守る方法をしっかりと考え、段階的に補強を計画することもあるのではないでしょうか。
齊藤 広子
明海大学不動産学部教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション長寿命化協議会」座長
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価 値が上る住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』 (市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出 版社)など多数。