- 連載
- マンガで事例研究
- 2011年秋号
◆何を備えればいいんだ!?
はじめて管理組合の理事になった。今年は地震があり、これを機に管理組合の体制を見直すことが課題といわれたが、一体何を見直せばよいのだろうか。
たくさんの食料を備蓄すればよいのだろうか? 簡易トイレを用意すればよいのだろうか?一体何を備えればよいのだろう…。
防災の日に、今年は地震に備えた活動をしようと思っていたけれど、結局、何もしなかったな。地震に備えて、何をすればよいのだろうか。
◆地震で何が起こったのか?
災害への備えは、防災訓練や備蓄だけではありません。もちろん、こうしたことも大事ですが、東日本大震災からの教訓として、これを機に自分のマンションの管理体制を見直すことも大切です。地震が起こってから対応するのでは、遅くかつ困難なことが多いのです。
そこで、東日本大震災で、「困った」事例から、わがマンションをチェックしてみましょう。
●「困った」編/建物の備え
①東日本大震災による被害は、東北3県では、旧耐震基準でつくられた1981年以前竣工マンションでは、「中破」と「小破」が4割を超しました。これは新しいマンションよりも被害が多かったということです。耐震診断をし、その結果により耐震補強をしていたら…と後悔しているマンションがあります。
②液状化による被害もみられました。建物の被害のほかに、液状化地区では、給排水埋設管や駐車場等に大きな被害を受けました。これを機に、地震に弱く、メンテナンス代の掛かる機械式駐車場の利用を見直すマンションがあります。駐車場の必要台数から確認をしています。
③温水器の転倒による漏水がみられました。住戸内が漏水し、住戸が使えなくなる被害は深刻ですね。場合によっては、温水器の転倒防止策の強化が必要です。
●「困った」編/施設・設備の備え
④津波によるマンション被害がありました。1階に管理員室があり、管理書類がすべて流され、使えない状態となりました。書類の保管の場所や、控えの図面や書類は大丈夫でしょうか。
⑤計画停電等により首都圏の超高層マンション等では、建物そのものに被害がなくても、生活への影響がありました。エレベーターが使えない状態となり、外から帰ってきた人がロビーに約百名も待機したケースがありました。車いすの人が、自宅に帰りたくても、火災時等に上階から地上まで降りてこられる設備を持っていても、地上から高層階へ上がるための設備は用意しておらず、大変困りました。
⑥自家発電機を持っていたマンションでは、停電の際でもエレベーターを動かすことができました。しかし、発電機の利用のルールを決めておらず、結局は使わなかったマンションがあります。また、発電機の使い方がよくわからず、混乱した
マンションもありました。こうして地震に備えて持っていた備品、設備や施設を実際に作動したことがないために、使い方が分からないで「困った」等がありました。
●「困った」編/管理体制の備え
⑦理事会や管理組合が機能していないマンションでは、復旧工事が進まず、住民の不安が高まり、トラブルになっています。
⑧安否の確認のための、入居者名簿は大活躍でした。特に避難に支援が必要な人リストは速やかな安否確認を実現しました。停電に備えて、パソコンデータではなく紙ベースでの保有は有効でした。一方では、所有者名簿がなく、復興方針の意思確認に手間取っているマンションがあります。
⑨深夜に起こった余震の際に、管理員がいなくて、非常ベルが鳴っても誰も何もできず、皆がおたおたしていたというマンションがありました。逆に、こんな時のために、自分のマンションの設備や施設がどうなっているのか、理事の交替の際に、新理事全員で見てまわるマンションがあります。
⑩ 緊急時の対応体制が決まっていないで困ったマンションがあります。夜間の対応体制を決めていても、平日昼間の地震には機能しなかったという反省が多く聞かれます。
⑪マンションの竣工図面がなかったため、復旧・復興工事の第一歩が図面の整備となったマンションも少なくありません。
⑫団地型マンションで棟により、建物被害に大きな差があるマンションがありました。しかし、棟別の会計がなく、復旧につまずいています。