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明海大学不動産学部教授 齊藤広子

◆人工芝はいけないの?

避難の邪魔にならないのに、人工芝を張ることはいけないのでしょうか。必ずしもいけないとは限りません。人工芝が問題になるのは管理組合がバルコニーの防水工事をする際です。「わが家は結構です」では通じません。みんなの共用部分ですから、管理組合はしっかりと修繕する義務があります。そこで、防水工事をする際に、各住戸の所有者が手間や費用を負担し、芝の接着剤をはずす等のルールを明確にしたうえで、認めることがあります。

バルコニーに多くの土を入れ庭園にすることを禁止するのは、土の重さ、下階への水の浸入等を考慮してのことです。

美観を考慮し、衛星放送用のアンテナ設置を禁止しているところも多くなっています。しかし、何でもかんでも禁止ではマンションライフが窮屈になってしまいます。そこで、先ほどの①~⑤の原因を考え、どんな場合なら認めるのか、管理組合でルールを作ることが必要です。

◆ルール作りの参考

ルールを作る際の参考として、裁判事例をみてみましょう。
マンションのバルコニーに物置を設置した人に、物置撤去を命じた判例があります。*2 物置は間口1.5m、奥行き90cm、おおむね人の身長ぐらいの高きでした。

取り外しての移動が容易ではないこと、バルコニーの清掃がしにくくなり落ち葉がたまり、排水が詰まりゃすくなること、防水工事の際に移動の手間暇がかかること、外観を悪くしていることから、撤去命令が出されました。

やはり、美観面、緊急時の避難への妨げとなる機能面、修繕工事への影響、そして躯体への影響等を考慮して総合的に判断されています。こうした点を考慮した各マンションに応じたルールが必要になってきます。*3

*2 平成3年11月19日 判時1420-82 東京地判。
*3 右記調査結果では50.6%のマンションでベランダやバルコニーに関する使用細則がある。

◆さいごに

ルールを作り、守ってもらうように啓発活動も大事ですが、もうひとつ大事なことがあります。違反の住戸にみんなが気がつきながら、見て見ぬふりをしていたら、後で取り返しがつかないことになります。例えば、裁判しても、管理組合が今まで何もしていなかったことが黙認していたとされてしまう場合があります。そこで、問題が生じれば、早めの対処が重要になります。

Profile
齊藤 広子
明海大学不動産学部教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション長寿命化協議会」座長

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住 環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文 賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著 作奨励賞、日本建築学会賞等受賞。
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価 値が上る住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』 (市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出 版社)など多数。