トップページ > 連載 > マンガで事例研究 > マンション管理適正評価制度って何?
  • 連載
  • マンガで事例研究
  • 2023.01.04掲載

マンション管理適正評価制度って何?

横浜市立大学国際教養学部教授 齊藤広子

4.耐震診断
 第四の項目は、地震に対する建物の強さ「耐震性」です。建物の耐震性は、法律の改正から1981年(昭和56年)を境(建築確認済証の交付年月日が昭和56年5月31日以前の建物は旧耐震基準)に旧耐震基準と新耐震基準に分かれます。旧耐震基準では耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修工事を実施することが必要です。
□新耐震基準の建物か。旧耐震基準の建物の場合には耐震診断を行い、その結果を踏まえて耐震改修を既に実施しているか。

5.生活関連
 第五の項目は「生活関連」です。安心して暮らすために必要な取り組みに関する項目です。
□設備等の警報発報による緊急対応の体制があるか。24時間有人対応か。
□消防訓練を実施しているか(⇒ いざという時に備えましょう)。
区分所有者及び居住者の名簿を整備しているか(⇒ 管理費を集める、総会の連絡をする等のために区分所有者名簿は必須です。住まいは生命を支えていますので、緊急時に迅速な対応がとれるよう、誰が住んでいるかの把握も必要です)。
災害対策として、消防計画の作成及び周知、防火管理者の選任、災害時の避難場所の周知、災害対応マニュアル等の作成・配付、ハザードマップ等防災・災害対策に関する情報の収集・周知、災害時に必要となる道具・備品等の備蓄、高齢者等が入居する住戸を記した防災用名簿の作成、居住者安否確認体制の整備、被害状況・復旧見通しに関する情報収集・提供体制が整っているか(⇒ こうした体制がないと、いざという時の災害対応が機能しません)。

●制度の利用に向けて、まずはマンションの健康状態のチェックを

 評価項目をチェックしてみていかがでしたか。意外にクリアできていない項目もあったのではないでしょうか。こうして自分の体の健康診断のように、まずはお住まいのマンションの管理の状態をチェックしてみましょう。
 マンション管理適正評価制度を利用し、登録する場合(登録すると管理業協会のHPで登録情報が開示されます)には総会の決議が必要になります。実際に登録して、「★5」を獲得したマンション(築30年程度、住戸数約100戸)の管理組合の理事長にお話を伺いしました。
 この制度の話を聞いて、管理の状態が良いことがマンションの価値につながることに共感し、ぜひやってみたいと考えられたそうです。防災マニュアルは前年から作成に取り組んでおり、規約の改正も常に行い、大規模修繕が終わったばかりで、新しい長期修繕計画も策定しており、難なく「★5」をとることができたということでした。常日頃から理事会とは別に、建物の維持管理のための委員会、防災のための委員会を作り、マンション内の人材を活用し活動されていること、居住者の交流を大切にし、居住者が講師となってお話をする会や、子供向けのイベント、居住者の作品の展示などが行われています。マンションが社会的陳腐化を迎えないために、宅配ボックスの設置や自動ドアへの変更などの改修も行われ、誰もが安心して暮らせるために要支援者の把握も行われていました。このような日頃の努力の賜物が「★5」の獲得なのですね。
 また、これを機に、若い世代の入居への期待とともに、「このマンションの管理はしっかりしているのね」「マンションの価値が上がるね」など、区分所有者のマンション管理への関心が、さらに高まっているとのことでした。
 ほかのマンションでも「せっかくだから100点を目指そう」という声が理事会や総会で上がり、区分所有者のマンションの管理に対する意欲が高まったという声も聞かれます。
 ぜひ、この制度を活用し、自分たちのマンションの管理の状態を把握しましょう。より安心して暮らせるマンションにするために、そして管理の状態を見える化することで、しっかりと資産価値を上げることにつなげていただきたいと思います。すでに不動産売買の情報サイトで、★の数の表示が始まっています。そして、★がなかなか獲得できないマンションには支援制度もあります。
 まずは、自分のマンションの健康状態を把握しましょう。健康で長生きするために、レッツ・トライです。

※マンション管理適正評価制度に関する詳細、登録されたマンションの評価情報などは
 マンション管理業協会のHPでご覧いただくことができます。

URL : https://www.mansion-evaluationsystem.org/




「解決!ひろこ先生 マンション暮らしBOOK」発売中!

齊藤 広子 Profile
齊藤 広子
横浜市立大学国際教養学部不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士、不動産学博士。

専門は住まい学、住環境管理学、 居住のための不動産学。研究テーマは、マンションの管理、住宅地の住環境マネジメント。日本マンション学会研究奨励賞、都市住宅学会論文賞、日本不動産学会業績賞、日本不動産学会著作賞、不動産協会優秀著作奨励賞、日本建築学会賞、都市景観大賞優秀賞、グッドデザイン賞等受賞。
著書に『新・マンション管理の実務と法律』(共著・日本加除出版)、『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『初めて学ぶ不動産学』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。