- 連載
- マンガで事例研究
- 2022.10.03掲載
●マンションの大規模修繕に使えるリバースモーゲージ
さて、マンションの大規模修繕でリバースモーゲージを使う時とはどんな時でしょうか。
マンションの大規模修繕の進め方から確認しましょう(2012年夏号「大規模修繕に向けて」をご参考になさってください)。マンションを長持ちさせるために計画的に修繕を行います。計画修繕は、築5年から7年ぐらいで鉄部の塗装が必要となります。築12年から15年ぐらいで外壁の塗装や屋上防⽔のやり直し、築20年ぐらいで、設備の取り換え工事などが必要となってきます。こうした大規模な工事を伴う、外壁や屋上、設備の修繕などを、大規模修繕と呼んでいます。
大規模修繕に必要なお金は、修繕積立金として毎月積み立てていきます。しかし、修繕積立金が不足する場合があります。その場合には、お金を管理組合が借り入れる、一時金を集めるなどの方法があります(2018年夏号「修繕積立金が足りない?」をご参考になさってください)。
ただ、一時金を集めるとなると、年金暮らしでお金が出せないという高齢者もいらっしゃるかもしれません。そこで、リバースモーゲージの仕組みを利用するのです。この制度は、独立行政法人住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資(高齢者向け返済特例)」制度で、管理組合が大規模修繕などの共用部分のリフォーム工事を行う際に、一時金を負担する高齢者向けとなっています。この融資を使う場合は、管理組合で大規模修繕が決議されていることが必要です。借り入れした人は、毎月利息のみを返済し、元金は死亡後、相続人の自己資金等により一括して返済するか、担保物件(住宅および土地)の売却代金により返済することになります。
なお、本制度は、将来の修繕積立金を一括払いするための一時金にも使うことができます。その際には、管理規約の改正が行われているなど、管理組合としての合意形成が必要となります。
その内容は次のとおりです。
• 融資金を修繕積立金の前払金として管理組合が一括して代理受領すること。
• 融資金を修繕積立金のみに充当すること。
• 充当された修繕積立金について、共用部分リフォーム工事のために使用すること。
• マンションからの退去等に伴い融資金を完済した場合でも、充当された修繕積立金は管理組合から返還されないこと。
ここでは「マンション共用部分リフォーム融資(高齢者向け返済特例)」について触れましたが、この他にも、管理組合向けの融資や高齢者以外の方を対象とした融資もあります。
〈イメージ図〉 ※保証機関((一財)高齢者住宅財団)による保証が必要
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●誰にとっても住みやすいマンションに
お金がないから諦めよう、お金が出せない人がいるから諦めようと簡単に諦めないで、誰にとっても住みやすいマンションになるよう、管理組合内で理解を深めながら考えていきませんか。マンションはあなたにとっての資産でもあり、みんなの資産でもあります。そして次世代、次々世代の人にとっての資産ともなるように、リバースモーゲージなどの活用を視野に入れて、より住みやすいマンションを構築していきましょう。
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齊藤 広子
横浜市立大学国際教養学部不動産マネジメント論担当教授。工学博士、学術博士、不動産学博士。
著書に『新・マンション管理の実務と法律』(共著・日本加除出版)、『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上がる住宅地』(学芸出版社)、『初めて学ぶ不動産学』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。