- 連載
- マンガで事例研究
- 2020.10.01掲載
マンションに住んでいると面倒なことは多いし、わからないことも多いよな。総会に出席したり、その前には管理会社からの重要事項説明があるって聞いたよ。それって何のためにしているんだろう?
「説明は管理業務主任者がします」っていうけれど、管理業務主任者って誰なんだ?
そうそう、この前、マンションセミナーに行ったら、講師はマンション管理士だったよな。そんな人もいるんだ。その時、マンション管理適正化法が改正されましたと言っていたけれど、その法律がマンションにどう関わるんだ? 面倒だから、管理は人様にお任せでいいよね。誰かがやってくれるでしょ……。
●マンション管理適正化法とは?
困りましたね。マンションの管理の主体は、区分所有者の皆さんです。でも、マンションに住んでいるからといって、マンションに関係する法律を学ぶ機会はそうありませんよね。今回は、2020(令和2)年6月にマンション管理適正化法が改正されましたので、マンション管理適正化法とは何か、どのように変わったのか、なぜ、変わったのかを見ていきましょう。
マンション管理適正化法は2000(平成12)年にできた法律です。正式な名称は、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」といいます。2000年当時、マンションの管理問題が社会的に大きくクローズアップされました。それは、次のような問題があったからです。
例1: | 役所にマンション管理の相談に行っても、担当部署がなく、相談にのってくれる人がいない。どうすればいいのだろう……。 |
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例2: | 役所にマンション管理がわかる人がいて、とても詳しく説明を受けたので、「マンションまで来て説明してもらえませんか」とお願いしてみたら、「それはできません」と断られてしまった。誰かうちのマンションまで来て、みんなに説明したり、具体的にアドバイスしてくれないかな……。 |
例3: | 管理会社に相談したら、「わかりません」「できません」を連発されたよ。担当者は専門知識がないのかな? それとも管理会社の仕事ではないのかな? はてさて、管理会社にどんなことを委託しているのかな? |
例4: | 管理会社が倒産してしまった。会社に預けていた私たちの修繕積立金が戻ってこないよ。預けていただけなのに、なぜお金が戻ってこないの? |
例5: | 大規模修繕をしようと図面を探したらどこにもない。そのために、一から必要な数量を算出してもらうのは、手間や費用や時間がかかるよね。図面が欲しいよ!! |
例6: | これも管理会社のせい!! あれも管理会社のせい! ……本当ですか? 管理の主体は誰ですか? 管理組合であり、1人1人の区分所有者であることを忘れていませんか? あまりにも区分所有者の皆さんは無責任ではないですか!? |
そこで、マンション管理適正化法を整備し、区分所有者、その集合体である管理組合が管理の主体であることを明確にし、管理の主体がしっかりと管理を行えるように支援体制を強化しました。
例1に対しては、国や地方公共団体は、管理組合や区分所有者等の求めに応じ、必要な情報及び資料の提供その他の措置を講ずるよう努めなければならないと定められました。
例2に対しては、マンション管理士という新たな国家資格を創設しました。マンション管理の「かかりつけ医」のように、困りごとがあれば相談し、必要に応じて往診に来てもらい、深刻な状態になれば、より専門分野に詳しい人や組織につなげてもらうことになります。マンション管理士とは、個別のマンションの相談に助言、指導、援助等を行う、マンション管理のジェネラリストです。
例3や例4に対しては、管理会社は一定の要件を整え、国に登録することになりました。この法律ができるまでは、業容・業績にかかわらず、誰でもマンション管理を業とすることができました。そのため、十分な知識がない人が業務を担当したり、会社に財政的基盤がなく倒産してしまい、管理組合から預かっていたお金が管理組合に戻らないといったこともありました。そこで、マンション管理業を営もうとする者は、業務遂行のための財産的基礎を有すること等を要件に国に登録すること、管理業務主任者という国家資格を創設し、30管理組合に対して1人以上を専任の管理業務主任者としてマンション管理業を営む事業所に設置することが規定されました。また、管理会社は自社の財産と管理組合の財産を区分し、毎月管理組合に管理費・修繕積立金等の収支状況、収納状況の報告書面を交付することが定められています。そして、管理組合に定期に(管理事務を委託した管理組合の事業年度終了後、遅滞なく)管理事務の報告をしなくてはなりません。この大事な報告をするのが、管理業務主任者です。また、管理業務主任者は、管理組合との管理委託契約の締結に先立って、管理委託契約の内容を説明します。各々のマンションからみれば、専門知識を持った担当者ということになります。
例5に対しては、分譲会社から管理組合の管理者に設計図書等を引き渡すことになりました。皆さんのマンションには、きちんと図面などが保管されていますか。
そして、例6に対しては、「管理組合は、マンション管理適正化指針の定めるところに留意して、マンションを適正に管理するよう努めなければならない」「マンションの区分所有者等は、マンションの管理に関し、管理組合の一員としての役割を適切に果たすよう努めなければならない」(改正前 第4条)と定められました。