- 連載
- マンガで事例研究
- 2014.07.01掲載
◆名簿の取り扱い
名簿の作成や更新も大変ですが、、もう一つ大事なことに「名簿の管理」があります。どんな場合に閲覧を認め、どんな場合に閲覧を認めないのか。
こうしたルールをあらかじめ定めておく必要があります。
個人情報保護法があるから名簿を作ることは一切禁止だと思われることがありますが、本法は、「個人の権利利益の保護」と「個人情報の有用性」のバランスをはかるものであり、各種名簿作成を否定するものでありません。また、本法の適用をうける対象は5000人を超える個人情報を取り扱う者であり、ほとんどの管理組合は対象外です。
各マンションでは、管理組合運営や生活上で、どのような情報がお互いに必要かを確認しておきましょう。そして、利用目的に応じて名簿を作成・更新し、安心して暮らせるマンションの基盤をつくっていきましょう。
例えば以下のような事例があります。
約300戸のマンションで、組合員名簿はもちろん、賛同してもらえた方の 居住者名簿も制作していました。ルールとして、理事長のみ閲覧・管理するとあり、パスワードなどで管理しているそうです。ただし、 災害等の有事のときのみ、防災委員会の委員が閲覧・連絡手段に使用できるものとすると決められておりました。 理事長が会社員で不在になる場合を想定して作ったルールということです。
◆名簿がなくても
名簿がなくても日ごろから交流がある居住者同士であれば、いざという時に助け合えます。
ある超高層マンションでは半年ごとにフロアー毎に防災担当者を決めています。ただし、役を引き受けられないほどの高齢者等に、自ら役の辞退を名乗り出てもらいます。こうした情報をもとに、必要最低限のものとして「要援護者名簿」を作成しているマンションもあります。
名簿がなくても日ごろからの交流があれば大丈夫かもしれません。しかしそれは限られてきます。誰でも見てわかるものがあればもっとお互いが安心して暮らせるようになるのではないでしょうか。
いざという時のために、現地管理事務所で保管するなど、一定のルールに従い理事会での承認があれば閲覧が可能であるというような、マンション内で名簿の取り扱いルールを決めておきましょう。
・住戸番号
・世帯主・代表者氏名
・居住者等の氏名
・電話番号
・緊急時、不在時の連絡先
・災害時要援護者の有無、理由、配慮の内容
・居住者等以外の緊急連絡先
・登録年月日
○居住者名簿の取り扱いのルール(細則)内容例
・作成及び利用目的
・記載事項
・届け出・更新方法
・管理及び保管方法並びに保管場所
・閲覧方法
・外部提供の範囲
・守秘義務
○居住者名簿が役に立つ例
○災害初動期の安否の確認
○居住者の不在時の水もれとその対応
○一人住まいの居住者のけがや病気の際の親族等への連絡
○高齢者の孤独死の防止や小さなお子さんへの育児放棄、虐待の防止
○災害時の安否の確認、物資の配給 等
齊藤 広子
明海大学不動産学部教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション2025ビジョン懇話会」座長
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上る住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。