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  • 2014.07.01掲載

マンションで暮らす人たちの名簿について

明海大学不動産学部教授 齊藤広子

◆佐藤さんってどこの人? 

この郵便、我が家あてじゃない。佐藤様って書いてあるけれど、隣かな? 郵便ポストにも玄関にも表札が出ていないけれど、隣って誰? どんな人が住んでいるの?

え? 管理員さんは預かってくれないの?だって、間違って我が家に入っていたんだから、たぶん、近所の人だと思うけれど、佐藤さんのお宅はどこかと聞くと「個人情報でお伝えできません」だって。

じゃあ、「貴方が預かってポストに入れておいてよ」ってお願いしたら、それは業務外ですと言われた。

みんなどうしているのかな…。どこに誰が住んでいるのか、マンションって孤独だな。隣の人は何ていう名前かな?

◆名簿の作成実態

マンションで安心して暮らしたい、いざという時は助けてほしい。隣の人はどんな人? そんな気持ちを誰もが心の中に持っているのではないでしょうか。

東日本大震災でもどこにどんな人が住んでいるのかの居住者名簿が活躍しました。

実際、マンションで組合員名簿や居住者名簿を備えているのが約8割です。どちらの名簿もないというのは全体の8.4%になっています。

マンションで空き家が1件もなく、借家として使っている住戸も1件もない、区分所有者すべてが居住者である場合は、区分所有者である組合員名簿と、居住者名簿の内容が一致するはずです。しかし、実際にはぴたっと同じというのは築年数がたてばたつほど少なくなる傾向にあります。そこで、組合員名簿と居住者名簿を分けて考えていきましょう。

◆組合員名簿

管理組合の運営には組合員(区分所有者)の参加は必須です。大事なことはみんなが参加する総会で決めます。総会の案内を送るにも必要ですし、誰が議決権を持っているかを把握することも必要です。管理費や修繕積立金の徴収にも負担すべき人を把握しておくことが必要です。

ですから、区分所有法では48条で、「管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない」と定めています。

管理組合法人だけが対象じゃないかといわれるかもしれませんが、我が国のマンション管理組合は法人でない場合でも、「理事を置き、監事を置き」といった形で法人の場合に準じて体制を整えています。法人格がない場合にはそれを強制するのはハードルが高い場合もあるかもしれません。けれども管理組合の運営上は必要なものなので、少なくとも法人格のある場合には義務化しておきましょうということです。

こうした考え方にのっとり、標準管理規約では、管理組合は組合員名簿を作成して保管することが定められ、そのために各組合員は資格を得たとき、資格がなくなったときには、管理組合に届け出なくてはいけないことが明記されています。

◆居住者名簿・要援護者名簿

共同生活上、必要なものに居住者名簿があります。どこにどんな人が住んでいるのかしら。いざという時にだれを助ければいいの?  高齢者はどこにいるの? 独居老人はどのぐらいいるの?

マンションに応じて必要な居住者名簿が違ってきます。最近ではポストや表札に名前がない場合もふえ、せめてお互いの名前だけでも知りましょうという、号室と名字だけの名簿から、居住者全員の名前や年齢、勤務先や学校、緊急連絡先の明記したもの等まで様々です。

居住者のなかでどのような人が要援護の人を把握しておくことも名簿にしておくことがあります。

確かに要援護の人を近隣の民生委員の方が把握していることもありますが、マンションにいつでもいてくれるわけではありません。また、いざという時に、マンションのオートロックに阻まれ、入ってこられないこともあります。

マンションの中でお互いにだれが住んでいるかわかることが安心な暮らしにつながるはずです。

要援護者名簿は東日本大震災後に、より一層市町村単位や自治会・町内会単位で求められるようになっています(災害対策基本法の一部改正 平成25年6月21日公布)。

こうした情報は、市町村や地域の民生委員などと連携し、作成している例もみられます。