- 連載
- マンガで事例研究
- 2014.01.06掲載
◆無断で事務所にした場合
では、管理組合に無断で事務所にした場合はどうなるのでしょうか。
規約で「住居専用」となっている場合には、規約違反となり、こうした態度に対して、「明け渡し」を求めた裁判結果があります。この例では実際に周りにどのようにどの程度迷惑をかけているのかではなく、規約に反する態度が共同の利益に反するとされました。しかし、多くの例では、事務所にすることで、部外者が多く出入りする、音がうるさい、大きな看板が掲げられているなど、事務所にしている人と他の区分所有者の利益を様々な視点から比較し、「事務所にするのをやめろ」という結論が出されます。この際に、1つの大きな判断指標が規約にどう書いてあるかになります。
では、規約に特に「住居専用」と書いていなければ何をしてもよいのでしょうか。
そうではありません。まわりの住戸に迷惑をかけている場合には、区分所有法6条1項に定める共同の利益に反する行為として禁じられる場合があります。
◆管理組合の常日頃の対応が大事
規約に書いてあると、事務所にしたらいつでも「規約違反だ!出ていけ!」と言えるのかというと、そうではありません。管理組合のいままでの対応が問われます。
規約で「事務所禁止」であるにもかかわらず、長年、事務所に使われる住戸があり、それに対して管理組合が何もしていなかった場合に、突然「出ていけ」というのは、権利の乱用になるとしています。
◆管理組合がすべきこと
規約でどのような使い方が可能か、事務所への用途変更が禁止の場合には、明記しておきましょう。
そして、規約を適切に運用していきましょう。ルールがあっても守られないのであれば、規約が存在する意味がありません。ルールは守るためにあるのです。ですから、守っていない人にはきちんと警告を行い、遵守されるように取り組む必要があります。
さらに、リフォーム工事の承認等の際に、きちんとチェックしていきましょう。管理組合内で連携し、しっかりと情報を共有することが問題の予防に大きくつながっていきます。
◆最後に…
想定外の住戸の利用として、『マンションの一住戸を簡単な壁で小さな空間等に区切って多人数に貸し出す』事例で、火災等安全面で大きな問題のある事例がみられています。
こうした事態を重く受け止め、平成25年9月に国土交通省から通達が出ています(先に一部掲載)。ぜひとも、マンション内でしっかりと情報の共有をはかり、問題を未然に防止していきましょう。
平成25年9月6日
住宅局建築指導課・市街地建築課・土地・建設産業局不動産業課
管理組合の皆様へ
・違法貸しルームへの改修の疑いのある物件を把握した場合等は、管理会社等と相談のうえ、特定行政庁まで相談していただきたい。
・特定行政庁(区・市役所等)は、相談案件について、違反の有無に係る情報を適宜提供することとしている。
・建築基準法違反である旨の情報が、特定行政庁から提供された場合には、専有部分の改修を不承認として差し支えない。
齊藤 広子
明海大学不動産学部教授。工学博士、学術博士。
(一社)マンション管理業協会「マンション長寿命化協議会」座長
著書に『不動産学部で学ぶマンション管理』(鹿島出版会)、『これから価値が上る住宅地』(学芸出版社)、『住まいと建築のための不動産学入門』(市ヶ谷出版)、『住環境マネジメント〜住宅地の価値をつくる〜』(学芸出版社)など多数。