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  • 2014.07.01掲載

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発足から1年、「尼崎マンション管理組合ネットワーク」

日々の管理から老朽化に伴う修繕や建替えまで、マンション管理にまつわる問題は年々多様化し、マンション管理組合が果たす役割の重要性が増しています。マンション管理組合が会員となる組織が各地で設立され、相互協力のネットワークが確立されてきました。その中でも特に自治体や公共団体とともに、地域に根付いた活動をしているマンション管理組合ネットワークを取り上げるこのシリーズ。今回は、兵庫県尼崎市の「尼崎マンション管理組合ネットワーク」を取り上げます。

◆発足のきっかけは市が主催したマンション管理セミナー

大規模な再開発で生まれ変わったJR尼崎駅前 市内に約700件、2万5000戸の分譲マンションがある尼崎市。同市では神戸市や大阪市への通勤利便性の高さや、大手企業の工場などが多く立地していたこともあり、古くから住宅地の開発が進められてきました。

近年ではJR沿線での再開発事業が活況で、新しい高層マンションなども増えつつありますが、一方で建物の老朽化や入居者の高齢化、また、知識や情報の蓄積が乏しいことによる、管理組合の空洞化などの課題を抱えるマンションも少なくありません。

そんな中、このような状況を打破すべく、尼崎市主催のマンション管理セミナーに参加した、分譲マンションに住む方や、その管理組合の役員有志が中心となり、昨年5月に「尼崎マンション管理組合ネットワーク(以下、あまかんネット)」が発足しました。

持ち家戸数比較

◆近隣エリアの管理組合ネットワークとも連携

定期的に開催されている「おしゃべり会」 あまかんネットの現在の会員数は役員12名を含めた28名。2年目を迎える今期は40名の会員獲得を目指していくそうです。

「メンバーには、尼崎市内の分譲マンションに住む人のほかに、NPO法人西宮市マンション管理ネットワーク(以下、NMねっと)の理事長なども含まれており、発足1年目はNMねっとなど、古参の管理組合ネットワークとの関係強化を図り、知見を蓄えてきました。今後はその知見を活かし、尼崎市内の管理組合にあまかんネットの存在を周知していくと共に、今後も情報交換の場としての役割を強化していきたいですね」とあまかんネット代表の福島さんは話されました。

現在は定期的に交流会などを開催。また、年3回程度尼崎市主催で行われるセミナーでは、理事会の運営や大規模修繕工事についてなど、マンションという共有財産の価値を守っていくための様々なノウハウについて講演が行われています。「資金面のサポートはもちろん、セミナー講師の依頼や、場所の提供など、走り始めたばかりの管理組合ネットワークとしては、行政のサポートは心強いです」と福島さん。

また、尼崎市役所都市整備局住宅政策部住宅・住まいづくり支援課の松葉さんも「あまかんネット設立以前から、市が主催するマンション管理セミナーは年2、3回のペースで開催してきましたが、それと並走するような形であまかんネットという管理組合ネットワークがあることで、マンション管理組合の横繋がりを強化していけたらと思っています。市主催のセミナーだけでは行政からの一方的な情報発信になってしまいますが、交流会などでは、個々の事情の異なるマンションの具体的な事案の共有ができるので、実用的な情報交換の場になっています」と語ってくれました。

◆今後の課題は「自走」

「コミュニケーションづくりの観点で、マンションでどのようなイベントを開催しているのか」や、「大規模修繕の際に、どのように業者を選択しているか」などの事案が、交流会ではよく話題に上るそうで、実際にそれらの話を自身のマンション管理組合に持ち帰り、管理規約の見直しや、大規模修繕の業者の選定などに取り掛かるなどのケースも生まれてきているそうです。

また、阪神・淡路大震災を経験した尼崎市では、南海地震に備え、市とマンションが協定を結び、津波が来た時の地域避難場所とする「津波避難マンション」の取り組みを行っていますが、それらの協定を周知推進する場としても、ネットワークは機能しているとのこと。

「まだ、発足1年目で、組織としてこれからという段階ではありますが、将来的には市が行っているセミナーや、マンションに関する調査などを委託するなどの展開を模索中です。西宮市のNMねっとのような形で、 法人組織として自走できるネットワークになっていくのがゴールと考えています」と松葉さんは語ってくれました。