トップページ > 連載 > 歴史に見るシリーズ > 【アパート暮らしと管理】~独立行政法人 都市再生機構 都市住宅技術研究所①~
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  • 2011年春号

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~独立行政法人 都市再生機構 都市住宅技術研究所~
ライフスタイルの多様化を踏まえた居住性能、暮らしの安心を支える耐震防災や耐久性、さらに省エネ・リサイクル、環境共生といった「まちとすまい」に関する、先進的な調査研究や技術開発を行っているのが都市住宅技術研究所(八王子市石川町2683-3)。安心して暮らせる快適な住環境の未来のために施設の一部を体験型として、一般に公開しています。

JR八高線「北八王子駅」より徒歩10分。赤白のタワーが目印の都市住宅技術研究所は、住宅の歴史に関する実験・体験型の16施設で構成されている。

施設の中のひとつ「集合住宅歴史館」。集合住宅歴史館は、建築史的に価値の高い「同潤会アパート」の住戸等を移築復元し、集合住宅技術の変遷をたどる展示を行っている。中でも「同潤会代官山アパート」は昭和2年(1927年)に入居が始まった総戸数337戸の同潤会アパートメント最大規模の郊外団地。都心から程近い場所に勤労者の住宅として計画され、起状のある敷地を生かして、3階建てや2階建て4戸単位の世帯向け住棟、3階建ての単身用などが巧妙に配置されていた。戦後は居住者に払い下げられたが、共用施設の食堂や銭湯は最後まで営業を続け、地域のコミュニティに貢献していた。

その後、昭和30年代の中層集合住宅、低層集合住宅を経て、来るべき高層化時代に向けて試作されたのが「晴海高層アパート」。「晴海高層アパート」(昭和33年竣工)は、日本住宅公団(当時)の初期の高層住宅であった。

設計は、1930年代に「現代建築国際会議」の主唱者として世界の建築をリードし、日本において「国立西洋美術館」の基本設計を行った巨匠ル・コルビュジェの元で学んだ前川國男氏。

3層6住戸分を一単位として住戸規模の可変性を持たせた架構方式の採用や、スキップ形式のアクセス、従来の寸法にとらわれない畳など、戦後日本の合理性への追求が見られる。

当時、晴海高層アパートへの課題が、中層住宅と同じコストで高層住宅を実現させるというものだった。同時に13坪という制約で将来の規模拡大を念頭に入れた設計が行われた。

そこで、構造体の主要部分は耐震性に優れた鉄骨鉄筋コンクリート構造としているが、コストの高い鉄骨の使用量を減らし、将来の規模拡大を許容できる大架構を採用。これは、同時に非廊下階住戸の居住性向上やエレベーターの停止階が減ったことによるコスト削減にも有利に働いた。
また、躯体をはじめとする施工精度を上げることにより、取り合い部分の補修や仕上げの左官工事を減らし、間仕切りや内装は将来の改装に対応するようブロックや部品化された木造作により構成された。

日本におけるRC(鉄筋)集合住宅の歴史も80年を超え、現在まで親しまれたきた建物も解体、建替が行われている状況。

今後も時代とともに多様なライフスタイルの対応として、集合住宅の性能はより一層向上していくだろう。