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  • 2012年冬号

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武蔵小杉駅周辺で居住区の街づくり活動を行っている「NPO法人 小杉駅周辺エリアマネジメント」。4年目を迎えた今年、3月の震災を機に「遠くの親戚より近くの他人」の意識が、高層マンション住民間で芽生え始めている。

川崎市では、武蔵小杉駅周辺地区における再開発計画の進展に伴い、平成15年に地域住民・商業者などからなる「小杉駅周辺地区まちづくり戦略会議」を発足させ、以後4年間にわたりまちづくりのコンセプトについて議論を行った。

「当時の戦略会議のメンバーのうち10人が理事となり、平成19年に特定非営利活動法人小杉駅周辺エリアマネジメントを設立しました」とまちづくり局小杉駅周辺総合整備推進室 植木義行氏。

NPO法人を受け皿とし、再開発地区の街づくりを開始。その後、横須賀線の新駅「武蔵小杉」の側にあるマンション「レジデンス・ザ・武蔵小杉」を筆頭に他マンションも立ち並び、約1万人が居住するエリアとなった。「現在は7つのマンションがNPO法人会員に加入頂き、理事の数も会員マンションの住民が過半数を占めるまでになりました」と植木氏。

昨年7月には各マンションの防災担当者が集まり、防災対策の取組みを開始。そして平成23年3月11日東日本大震災が発生した。塚本りり専務理事は「自主防災組織を発足して防災マニュアルの制作中で、地震を想定した訓練をやりましょうと話し合っていたところです。その活動準備中、まだ住民に周知できていない時に地震が起こりました。この地区のマンションは一瞬にして停電しエレベーターが停止。各マンションで自家発電機は備えていましたが、使用期限の時間も不明でした」多くの住民が管理事務所や防災センターに集まり始め今後を模索していたところ、変電所区域の関係で1棟だけ停電を免れたマンションがあった。レジデンス・ザ・武蔵小杉だった。

「近隣のマンションが混乱している様子を見て、マンションのロビーを解放。高齢者の方や乳幼児連れの方を優先に停電が復旧する夜中までロビーに避難してもらいました」とNPO理事でもあり、レジデンスの住民でもある保崎氏。

震災後に行った防災対策としては、まず全住民を対象に緊急アンケートを実施。3月11日の地震発生直後の行動や困った点などの調査を開始した。アンケート結果は各マンションにフィードバックし、それぞれのマンションの防災対策に役立ててもらうそうだ。また人々の意識も変わり、あるマンションで実施した防災セミナーでは、震災前には40人だった参加希望者が震災後には急増し約200人の参加になったそうだ。

「遠くの親戚より近くの他人といいますが、同じマンションに住む人たちとは、知り合いになる意識が必要だとアンケート上に表れていました。今回の地震で臨機応変にマンション同士が助け合えたのも、普段から交流や話し合いの活動があったからこそだと感じています。防災訓練だけでなく、住民同士、マンション同士の交流にも力を入れていきたいです」と塚本氏。地震発生後、自粛ムードで一時は中止も検討したお祭り「コスギフェスタ2011」も無事開催。多くの住民が参加し、大盛況で幕を閉じたそうだ。