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  • 2015.01.05掲載

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長い歴史をもつ福山市自治会連合会

東日本大震災以降、人と人とのつながりが見直されています。マンション居住者にとっても、管理組合を主体としたマンション内のコミュニティのみならず、地域との連携は重要な課題です。そこでこのシリーズでは、マンションの管理組合や自治会と周辺の地域住民が、協力して活動している様子をレポート。今回は、広島県第二の都市、福山市の自治会連合会をご紹介します。

◆古い歴史を誇る自治会

広島県福山市は、約47万人と県内で広島市に次ぐ人口を擁する中核市です。瀬戸内海の中央部、岡山県との県境に位置し、年間降水量が少ない穏やかな瀬戸内海式気候を特徴としています。

また、福山大空襲を受けた戦後の復興時に、市民の有志が公園にばらの苗木を植えたことに端を発して、今でも町の至るところに約85万本のばらの花が咲く「ばらのまち」としても知られています。

江戸時代の古い町並みがそのまま残る風光明媚な港町・鞆の浦(とものうら)は、宮崎駿監督の2008年に公開された『崖の上のポニョ』の構想を練った土地として有名になり、その後もハリウッド映画『X-メン』シリーズの『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013年)をはじめとして、さまざまな映画のロケ地にもなっています。

そんな福山市の自治会の歴史は古く、福山市制が施行された1916年(大正5年)の翌年には、当時の市長によって町内会が誕生しました。一般的には、第二次世界大戦中ごろに自治会のもととなる町内会が整備されたともいわれていることを考えると、当時の福山市長の英断がいかに画期的なものだったかがよくわかります。

いったんは政令によって解散させられた町内会ですが、1970年に350町内会による「福山市町内会連合会連絡協議会(町連協)」が再び結成されました。その後も市の発展とともに町連協も順調に組織を固め、現在「福山市自治会連合会(以下、自治連)」として80学区(地区・町)、1052の自治会(町内会)を束ねています。

◆活発な活動で地域を支える

防災訓練の様子 現在の自治連役員は、全国自治会連合会の副会長も務める会長の村上勝士氏を筆頭に、副会長が8名(うち1名が事務局長を兼務)、常任理事が10名(うち1名が会計を兼務)、監事2名、顧問1名。総務・民生福祉・文教経済・建設の4つの研究委員会、組織強化推進委員会、広報委員会の各委員会に分かれて、活発な活動をしています。

運動会の様子。住民間の親睦を図るためのレクリエーション活動の一環として行っている 各学区(地区・町)自治会(町内会)連合会の主な活動は、道路や公園の清掃やばらの花壇づくりなどを行う環境・美化活動、運動会や文化祭、夏祭りなどを通じて地域住民の親睦を図る親睦・レクリエーション活動、自主防災や交通安全、防犯灯の設置・管理による防犯、児童の登下校見守りなど安心・安全なまちづくり活動、自治会便りなどの作成・配布を行う広報連絡活動などがあり、マンションごとに新たな自治会を結成するケースも見られるようになりました。

自治会で児童の登下校を支える 中でも特徴的な活動のひとつが「ごみステーション」の設置です。これは家庭ごみを出すごみステーションの設置と管理を自治会が行うもので、全国的にも珍しい試みです。

また、5月に行われる福山市最大のイベント「福山ばら祭」や、代々伝わるひな人形を鞆の浦の古い町並みとともに楽しめる「鞆・町並ひな祭」など、地域性豊かな祭りやイベントにも、自治会はさまざまな形でかかわっており、まさに市民が主役となって協働のまちづくりをけん引しています。

◆実態調査で見えた課題

福山市自治会連合会会長の村上勝士氏 自治連では、今後の自治会のあり方の参考とするため、1991年に実態調査を行いましたが、その結果を集約する中で、いくつかの課題が浮き彫りになりました。

例えば、自治会の規模に極端な差があること、会則や規約がきちんと制定されていない自治会があること。また、実際に居住している地域とは別の自治会に加入していたり、組とは別に「講」のようなものが存在していたり、自治会の地域が入り組んでいるところがあること、などが挙げられます。

また、加入率が低いマンションなどの集合住宅対策として、自治連では2008年からパンフレットを作成し、自治会加入の呼びかけに力を入れています。さらに、港町町内会では先進的にこの問題に取り組み、マンションの建設段階で業者に全戸加入への協力を依頼しました。これによってマンション4棟、全277世帯の加入が実現したそうです。

さらに近年、新たな課題として浮かび上がってきたのが、少子高齢化と外国人労働者の問題です。

福山市では、来年度から小中一環教育が完全実施され、小中連携により教育環境が充実する一方で、市内には学校が休校になり少子高齢化が深刻な地域もあり、そのような地域では高齢化率が50%を超えているそうです。自治会活動の担い手となる若い世代が少ないため、活動自体が困難になりつつあります。

また、市内にある造船会社では、外国人労働者を積極的に受け入れています。研修で寮などに住む外国人労働者は自治会に加入することがないため、この地域では自治会の加入率が5割を切ってしまっているそうです。

そこでその地域の自治会では、秋に行われる「ふれあいまつり」に外国人労働者を招待し、勉強している日本語を発表してもらう場や専用のブースを設けることで、お互いの交流を深めるとともに、自治会の意義を知ってもらうようにしています。

また、少子高齢化の進む地域でも、高齢者には 月2回程度の「ふれあいサロン」、子ども向けには一般の方に寄付してもらったおもちゃを子どもたちに開放する「おもちゃサロン」をそれぞれ開き、地域の活性化に努めています。 そんな中、2016年7月に福山市は市制施行100周年を迎えます。「さまざまな課題はありますが、今後も協働のまちづくりのために、行政の良きパートナーとして市民生活の向上に努めていきたい」と村上氏。かつて市民有志の手でばらが植えられたように、市民自治の気概が感じられました。