- 連載
- 地域コミュニティシリーズ
- 2014.10.01掲載
2013年7月、豊島区は全国で初めて「マンション管理推進条例」を施行し、マンション居住者が地域の一員として参加できるように、区がサポートを行っています。
首都圏ではマンション建設数が年々増加しているため、各自治体がマンション管理に力を入れていますが、条例を施行したのは豊島区が初めてです。その活動について、豊島区区民部区民活動推進課の梅津なみえさんと豊島区町会連合会事務局の大戸国昭さんにお話をうかがいました。
◆区が地域コミュニティの形成を支える条例
2013年7月1日から「マンション管理推進条例」が施行されましたが、それ以前に2005年1月「中高層集合住宅建築物の建築に関する条例」が施行されていました。
この「中高層集合住宅建築物の建築に関する条例」では、新規でマンションを建設するにあたり、区が建築主である事業者に、竣工後マンション購入者とその家族が町会に加入しやすいように町会と協議することを求めています。その目的は、地域コミュニティの活性化や地域の防災力の向上です。
マンション居住者が町会に加入すると、行事の実施や各活動の参加の情報を受けます。また、区内のすべての町会で組織されている地域防災組織の一員にもなり、災害時の避難情報の提供や避難所での救援物資の配布を受けることができます。
建築主と町会が協議を行う際には、区が仲介役となって町会長を紹介するなどのサポートをしています。また、協議した内容も区で管理しています。2011~2012年度では年間30回程の協議を行いました。建築主は、マンション居住者に対して町会加入の周知を行いますが、強制ではありませんので加入は任意と伝えます。最終的に加入の意志は居住者が決定します。
マンションは建築期間が長いため、建築申請時の建築主と物件引き渡し時で建築主が変更している場合もありますが、きちんと書面を交わしていて区も把握していますから、トラブルが発生することはありません。
◆新たに、既存マンションも対象にした条例を施行
「中高層集合住宅建築物の建築に関する条例」は、建設予定の分譲および賃貸マンションを対象にした条例です。しかし、豊島区ではすでに多数のマンションが存在しています。そこで新たに、既存マンションも対象とした「マンション管理推進条例」が2013年7月1日に施行されました。
「マンション管理推進条例」では、新築および既存の分譲マンションを対象に、マンション代表者(主に管理組合理事長等)と町会が町会加入等への協議を行います。
「協議を行うことにより双方の接点が生まれ、町会の加入のみに限定することなく、町会側は町会活動の実体や町会行事への参加の募集、地域の防災対策等、またマンション側はマンションの実情等について、互いに広く話し合うことができます」と、梅津さん。
同条例が施行された時点での対象物件は、1,103件(2013年度末現在)です。現在は、条例に基づいて対象物件の代表者宛に通知済みで、マンションの代表者と町会との協議が進行中または進行予定だそうです。
町会加入について協議がしたい、とアクションがあったのはこれまで1件あり、町会加入に結びついたそうです。
「マンション管理組合からは『今回の条例は良いきっかけだった』といううれしい感想をいただきました。『1,103件のうち1件しかなかったのか』と思われそうですが、すでに町会に加入しているマンション管理組合も多く、これまで回答された578件のうち71.1%は町会加入済みでした」と、梅津さん。
さらに今後の課題については、「マンション管理組合も町会も、地域住民がつながっていくというのは、一朝一夕にできるものではないと思います。この条例の推移も長い目で見ていただきたいと思います」と語ってくれました。
マンションの場合、戸建てと違って共同住宅であるため、区や町会から居住者へ情報が伝わりにくいという短所がありますが、このように条例に基づいて、自治体がマンション居住者と町会側との話し合いができる機会を設けることにより、居住者側も地域とのつながりを持つことができます。さらに、防災対策の情報も提供されるため安心して生活することができます。
◆区内のすべての町会が連合会に加盟
豊島区には全部で129の町会があり、それらを取りまとめる中枢組織として、豊島区町会連合会があります。すべての町会がこの連合会に加盟しています。
・防犯・防災活動
夜間のパトロールなどの防犯活動やもしもの災害に備えた防災訓練などを実施
・広報活動
町会をはじめ、区や学校・各種団体からのお知らせを回覧・配布
・文化・教養・レクリエーション活動
夏祭りや盆踊りの開催、文化祭への参加を通じて地域住民の親睦を深める
・環境美化活動
資源回収や町内清掃を実施
・福祉活動
高齢者や子供の見守り
町会連合会は、区と“協働”のもと、各町会の相互の信頼、連絡、親和を図ること、併せて区政の進展と区民の生活、福祉の向上を目的としています。
「連合会では、町会長同士が活動内容を報告し、情報交換を行っています。また、各町会の問題や改善点も話し合って解決方法を探るなど協力しています。長い間町会活動を支えてきた間柄で、信頼関係ができています」と事務局の大戸さんは話されました。
池袋駅周辺には小〜中規模マンションが多数存在していますが、わずか1駅離れた地域では戸建てが密集しています。戸建てに暮らす住民は、長年居住している世帯が多く、町会活動にも積極的に参加しています。町会長の平均年齢は約73歳と高齢です。平均年齢の高さからも、この地域の方々が長い間町会活動を支えてきたことがうかがえます。
他の自治体では大規模マンションの場合、マンション居住者のみで1つの町会として活動しているケースがありますが、豊島区では大規模マンションは少数で、40〜50戸の小規模マンションが多数存在します。1つのマンションの居住者のみで構成された町会は存在しておらず、会員となったすべてのマンション居住者は各々住所に該当する町会に加入しているのが特徴です。
近年では、イベントや行事を実施しても、少子化の影響で参加者が減少しています。その対策として、近隣の町会と協力して合同で行事を行うこともあります。合同で行事が開催できるのは、町会同士のつながりが築き上げられているためといえるでしょう。
このように豊島区では、区と町会が連携できるシステムが確立されていて、マンション居住者が円滑に地域にとけ込める環境が整備されています。今後は、既存マンション居住者へのサポートを中心に活動されていくようです。