- 連載
- 地域コミュニティシリーズ
- 2014.04.01掲載
◆六本木ヒルズに自治会?
「おはようございます」。元気な朝の挨拶が交わされているのは、大都会のど真ん中・港区六本木にある六本木ヒルズ。今回ご紹介する六本木ヒルズ自治会が毎月開催する、六本木クリーンアップのひとコマです。
「六本木ヒルズに自治会?」と驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。実は、六本木ヒルズのレジデンス棟に住む居住者だけでなく、オフィス棟で働くオフィスワーカーや店舗の従業員までを含めた総会員数1,100人という、大規模な自治会が存在しているのです。
六本木ヒルズのオープンは2003年。自治会はその翌年に誕生し、ちょうど10年を迎えました。理事会は会長1名、副会長2名を含む約50名で構成され、すべての理事は7つの部会に所属しています。前述した多彩な顔ぶれの会員構成と、大規模ならではのダイナミックなコミュニティ活動が大きな特徴です。
◆自治会の元となった再開発事業
皆さんもご存じのとおり、六本木ヒルズは開発区域約12ヘクタールという国内最大規模の再開発事業です。従前の敷地には中小のビルが立ち並ぶ地域や幅員の狭い道路に囲まれた低層住宅街があり、防災上の問題がありました。また、数多くの地権者との合意形成を得るまでに何と17年もの月日がかかったそうです。
長い合意形成の過程の中で、開発者と地権者の間にはいつしかコミュニティが生まれていました。再開発にありがちな経済性だけを追求するのではなく、「東京に新しい文化都心を生み出そう」という気概のもとに、志が1つになったのです。
このような経緯で生まれた街の自治会ですから、住民のみならずそこで働く人たちまでを会員としたのも自然な流れでした。以前から住んでいた人、新しく越してきた人、ここで働く人、さまざまな人によって成り立つ街だからこそ、六本木ヒルズに関わるすべての人が一緒になって街づくりに参加できるしくみをつくったのです。
◆3本の柱に基づくイベント活動
自治会活動の柱は「安全安心活動」、「地域貢献活動」、「コミュニティ活動」の3つ。例えば、冒頭でご紹介した六本木クリーンアップは、自治会が組織される以前の2003年から地域貢献活動の一環として行われています。
六本木クリーンアップは毎月原則第3土曜日の午前9時から約1時間行われ、自治会員だけでなく、近隣の町会や学校などからも毎回約130名が参加しています。1班25人程度の班を5、6班編成し、敷地周辺から六本木交差点の先までを清掃します。
共に清掃活動をしていると、自然と交流が生まれます。集まるメンバーも六本木ヒルズ居住者をはじめ、アパレルショップ定員や美容師さんなどの店舗スタッフ、オフィスで働く人々、お寺の副住職さんや家族連れなど地域住民の方々と、驚くほど個性豊か。クリーンアップのメンバーがより交流を深めることができるよう、毎年12月には恒例の懇親会も開かれています。
活動に1回参加するとスタンプが1つもらえ、このスタンプを3つ集めるとコーヒーやアイスクリームの無料券、美術館の入館チケットなどと交換することができるのも、楽しみの1つです。
安全安心活動としては毎年3月に行う「震災訓練」、コミュニティ活動としては1月に行われる新年会、8月に行われる太極拳などがあります。特に夏の盆踊りは屋外のイベントスペースである六本木ヒルズアリーナで行われ、毎年多くの参加者でにぎわう一大イベントとなっています。
東京をはじめとする都市には、今も次々と新たなマンションや街が開発されています。規模が大きければ大きいほど、コミュニティを形成することは重要であり、かつ非常に難しいものです。 六本木ヒルズに関わる全ての人々から地域住民までを巻き込み、文化都心へと発展した六本木を陰で支える六本木ヒルズ自治会は、都市における自治会のモデルケースとなりうる事例といえます。
●防犯・防災部会
「逃げ込める街」を目指して、毎月1月に災害時に備えた訓練を行う。
●渉外部会
行政や近隣町会、商店街との窓口となる。地域と連携をとり、お神輿の迎え入れも。
●環境美化部会
六本木クリーンアップやリユース活動の企画・運営を行う。
●総務厚生部会
自治会の会合の運営や自治会ニュースの発行。HPの管理など。
●交通安全部会
交通安全活動の実施や警察と協力したイベントを行う。
●健康・美容部会
自治会員の健康と美容のために、健康美容セミナー等の企画・運営を行う。
●コミュニティ部会
地域コミュニティの活性化をめざし、春まつりや盆踊り、新年会などを企画・運営する。