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弁護士 篠原みち子先生のマンション管理お役立ちコーナー

【相談事例 目次】

相談事例

修繕積立金を、組合員へ返還することはできますか。

篠原先生の回答

修繕積立金を組合員に返還するとの総会決議が無効か否か争われた判例があります。
東京地裁 平成23年4月26日の判決です。

マンション管理組合法人Yが、定期総会において、「管理費減額について」を議題として審議し、決議が行われました。議題には、修繕積立金に関する審議事項の記載はありませんでした。しかし、その総会議事録には「審議事項 管理費削減について」の項に「管理費減額改定案及び平成11年度から同21年度の修繕積立金返済案を2ヵ月以内に作成する。詳細は理事会に一任する事及び場合により臨時総会を開催することで承認された。」と記載されていました。その後、組合員に対し「修繕積立金返済及び管理費改定のお知らせ」と題する書面が送付されましたが、その書面に「定期総会において、修繕積立金を組合員皆様に返還されることが決議されました。」旨が記載されていたことから、組合員Xが、決議無効確認請求の訴訟を提起した事案です。

Xは、管理規約の修繕積立金取崩しに関する規定に違反するから決議(以下「本件決議」という。)は無効である、また、本件通知に、修繕積立金の返還は議題として記載されておらず、本件総会の招集手続に重大な瑕疵が存在するから、本件決議は無効又は不存在であると主張しました。

裁判所は、本件決議の内容は、管理規約に違反すると認められるため、本件決議は無効である、と判断しました。 その判断において、検討された主な内容は、以下のとおりです。
  1. ①本件決議は修繕積立金の一部を組合員に返還するという内容であるから、管理規約にいう修繕積立金の取崩しを定めたものということができる。本件決議が修繕積立金の減額の性質を有するとしても、そのことでこれが修繕積立金の取崩しに該当しなくなるわけではない。
  2. ②管理規約の修繕積立金取崩しに関する定めの目的は、修繕積立金の使途をマンションの修繕等に限定することで管理費との混合を防ぎ、みだりに修繕積立金から散逸することを防ぐことにある。
  3. ③本件決議による修繕積立金の取崩しは、これまでに積立てられてきた修繕積立金をYの組合員に返還するものであって、Yが出捐※した何らかの費用に対し、これを穴埋めするという性質を有さない。したがって、本件決議による修繕積立金の取崩しは、経費の充当に該当せず、管理規約の修繕積立金取崩し事由に規定する要件を満たさない。

修繕積立金に余裕があったとしても、返還という手続きは、管理規約の修繕積立金取崩し事由に規定する要件を満たさないため、一般的にはできません。ひとつの方法として、一定期間、修繕積立金を減額改定するといったことも考えられます。しかし、一旦減額すると、元の金額に戻す場合、また突発的な支出等で増額改定する場合、その手続きが大変になることも予想されますので、慎重に検討する方がよいでしょう。

また、マンション標準管理規約第60条第5項では、「組合員は、納付した管理費等及び使用料について、その返還請求又は分割請求をすることができない。」と定めています。この定めは、管理組合会計を安定なものとし、修繕計画に支障をきたさないようにするためのものですし、法律的にも、管理費等は組合員に総有的又は合有的に帰属していることを明らかにしたものです。したがって、この標準管理規約のような定めがあるか否かに関わらず、管理費等の返還は避けるべきでしょう。

  しゅつえん
※出捐:① 金銭や品物を寄付すること。
② 当事者の一方が自分の意思で、財産上の損失をし、他方に利益を得させること。 (出典:三省堂大辞林)

【参考】

判例
東京地裁 平成23年4月26日 平22(ワ)36184号
<要旨>
マンションの区分所有者であり被告の組合員である原告が、マンションの管理組合法人である被告に対し、定期総会において修繕積立金を組合員に返還するとの決議がされたことについて、このような決議は規約に反する修繕積立金の取崩しに該当するなどと主張して、決議の無効又は不存在の確認を求めた事案において、組合員全員に平等に返還する場合であっても、修繕積立金の使途を限定することにより管理費との混合や積立金の散逸を防止しようとした規約の趣旨に反しないことになるわけではないところ、本件決議の内容は規約違反であり、本件決議には無効事由が認められるとして、原告の請求を認容した事例。
(出典:ウエストロー・ジャパン)

相談事例

組合員であれば、会計に関する全ての帳簿の閲覧を請求することはできますか。
組合員が、会計帳簿等の包括的閲覧請求権を有するか、組合員名簿の閲覧請求ができるか否か争われた判例があります。東京地裁 平成21年3月23日の判決です。

組合員(税理士)Xが、ビルの管理組合法人Yに対し会計帳簿等をはじめとする相当量の書類の閲覧を求めましたが、一部の閲覧を拒否されたため、Yに対しこれらの会計帳簿等の閲覧・謄写等を求めた事案です。 本件ビル管理規約(第59条)には、「理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧は別に定める閲覧規定によるものとする。」との定めがありました。

裁判所は、Xの請求を一部認め、Yに対し、組合員名簿中、住所、電話番号を含む閲覧を認めてよいか否かについて各別に同意をするか否か問い合わせた上で、Xに対する閲覧に同意する組合員については、Xに対し組合員名簿を閲覧させなければならないとしましたが、その余の請求を棄却しました。

閲覧請求の当否を判断する基準について、裁判所は、以下のように説明しています。
  1. ①管理規約は、管理組合に監事を置くこととし、監事に組合の業務執行、財産の状況を監査し、その結果を組合に報告する権限と義務を定めるなどして、組合の業務執行、財産状況調査の全般的調査の権限と義務とを監事の役割としており、組合員一般に会計帳簿等に関する全般的調査、監査権限を認める趣旨の規定はない。
  2. ②管理規約第59条は、監事による調査、監査に対する補充的なものとして、相応の具体的理由に基づく請求がある場合には、組合員に対し、会計帳簿等を閲覧させることとしている。
  3. ③各組合員には、監事になり代わって調査、監査する権限があるわけではなく、これと等しい結果となる包括的監査請求権はないが、相応の具体的理由がある場合は、その理由と具体的関連性のある書類を閲覧する権利がある。
  4. ④したがって、閲覧請求の対象書類を包括的に会計帳簿等全部とするようなことは許されず、問題とする「理由」との関連で特定される書類に限って閲覧を求めることができる。

この判例から、会計に関する全ての帳簿の閲覧を請求したとしても、包括的に会計帳簿等全部とするようなことは許されず、閲覧の「理由」に相応の理由があり、かつ、閲覧を求める書類に、閲覧を求める理由との関連性が認められる書類に限って認められると考えた方がよいでしょう。また、組合員名簿のうち、住所、電話番号を含む閲覧を認めてよいか否かについては、本人の同意が必要と言えるでしょう。

また、マンション標準管理規約(単棟型)コメント第64関係②では、「組合員名簿の閲覧に際しては、組合員のプライバシーに留意する必要がある」とありますので、閲覧請求については慎重な対応が必要です。

【参考】

判例
東京地裁 平成21年3月23日 平19(ワ)9700号 ・ 平20(ワ)9376号
<要旨>
ビルの管理組合である被告に対し、組合員の1人である原告が、会計帳簿等一般の書類の閲覧謄写をさせることなどを求めた事案につき、被告に対し、組合員名簿中、住所、電話番号を含む閲覧を認めてよいか否かについて各別に同意をするか否かを問い合わせた上で、原告に対する閲覧に同意する組合員については、原告に対し、組合員名簿を閲覧させなければならないとしたが、その余の請求は棄却するなどした事例。
(出典:ウエストロー・ジャパン)

相談事例

住戸専用と定めてある規約に違反して、事務所として使用している場合、
使用禁止の請求をすることはできますか。

篠原先生の回答

住戸専用と定めてある規約に違反して、法律事務所として使用している組合員に対し、法律事務所を開設、経営する行為の停止を求めた判例があります。東京地裁 平成25年9月19日の判決です。

マンション管理組合Xが、居室において法律事務所を開設し経営している組合員Yに対し、管理規約違反ないし区分所有法第57条に基づく行為の停止として、居室内において法律事務所を開設、経営する行為の停止を求めた事案です。

組合員Yは、居室に法律事務所の名称を表示せず、起臥寝食の場所として使用し、ロビー等の共用部分を打合せ場所として使用するなどの他の区分所有者の利用の妨げになる行為をしていないと主張しました。

本件マンションの管理規約には、次のように定めてありました。
(専有部分の用途)
第14条 区分所有者は、その専有部分をもっぱら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
      但し、管理組合集会の決議により、他の用途について許諾せられた場合はこの限りではない。
(禁止事項)
第19条 区分所有者は、共同生活の秩序を維持するために次の各号に掲げる行為をしてはならない。
      (1) この建物を居住その他定められた目的以外に使用すること。

裁判所は、Xの請求を認め、Yは、建物内において、法律事務所を開設、経営してはならない、と判断しました。
  1. ①Yが本件居室において法律事務所を開設、経営していることは争いのない事実であり、本件居室を住宅以外の用途に供している。そして、これを許諾する原告の集会の決議はないから、Yの同行為は管理規約14条に違反し、同19条(1)に該当し、区分所有法6条1項所定の区分所有者の共同の利益に反する行為に該当する。
  2. ②区分所有法57条1項に基づく停止等の対象となるものであり、同条2項に基づく本件提起決議を受けてした本件請求は理由があるから、認容することとする。

この判例は、専有部分を管理規約に違反する用途で使用する行為の停止請求を認めたものであって、専有部分の使用自体を禁止すること等を認めたものではありません。違反行為の停止と部屋の使用禁止は意味合いが違いますので注意してください。

なお、マンションの1室を税理士事務所として使用することが住居専用と定めた規約に違反し区分所有者の共同の利益に反するとして税理士事務所としての使用を禁止した判例もありますので、参考にしてください。(東京高裁 平成23年11月24日判決)

【参考】

区分所有法
(区分所有者の権利義務等)
第6 条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為
     をしてはならない。
(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第57条 区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の
     全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその
      行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
  • 2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
  • 3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第1項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
判例
東京地裁 平成25年9月19日 平24(ワ)26067号
<要旨>
原告が、被告に対し、管理組合集会決議がないのに住宅以外の用途に区分所有建物を使用していることを理由とする管理規約違反ないし建物の区分所有等に関する法律57条に基づく行為の停止として、本件居室内において法律事務所を開設、経営する行為の停止を求めた事案。
東京高裁 平成23年11月24日 平23(ネ)3590号
<要旨>
マンションの1室を税理士事務所として使用することが住居専用と定めた規約に違反し区分所有者の共同の利益に反するとして使用禁止が命じられた事例。
(出典:ウエストロー・ジャパン)
 

相談事例

管理組合役員をひぼう中傷する文書を配布する行為は、共同利益背反行為に該当しますか。

篠原先生の回答

区分所有者が、業務執行中の管理組合の役員らをひぼう中傷する内容の文書を配布したこと等が、共同利益背反行為に当たるとした判例があります。東京高裁 平成24年 3月28日の判決です。

区分所有者Yが、管理組合の役員らに対し、修繕積立金を恣意的に運用した等とひぼう中傷する文書を配布し、マンション付近の電柱に貼付するなどの行為を繰返したこと、マンションの防音、防水工事を受注した各業者に対し趣旨不明の文書を送付し、工事辞退を求める電話をかける等して業務を妨害したこと、暴行したことが、共同利益背反行為に当たるとして、区分所有法第57条1項に基づき、同条3項により訴訟追行権を与えられた区分所有者Xが本件各行為の差止めを求めて訴訟提起しました。
1、2審は、Xが問題としている本件各行為は、騒音、振動、悪臭の発散等のように建物の管理又は使用に関わるものではなく、被害を受けたとする者が差止請求又は損害賠償請求等の手段を講ずれば足りるから、区分所有法第6条1項の共同利益背反行為に当たらないとして、Xの請求を棄却しました。 これに対し、Xが上告した事案です。

最高裁 平成24年1月17日の判決では、原審の判断は是認できないとして原判決を破棄し、Xの請求が区分所有法第57条の要件を満たしているか否かにつき更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差戻しました。

この差戻しを受け、東京高裁は、平成24年 3月28日の判決で、Yの各行為は、区分所有法第6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たり、同法57条の要件を満たすものといえるとして、Xの請求を認めました。
その判断の主な内容は以下の通りです。
  1. ①本件マンションの区分所有者Yは、業務執行に当たっている本件マンション管理組合の役員らをひぼう中傷する内容の文書を配布し、また、本件マンション管理組合の取引先等に対する業務妨害行為を行い、さらには、本件マンション関係者に対する暴行及び嫌がらせ行為を行っているものであり、それらは、単なる特定の個人に対するひぼう中傷、業務妨害、嫌がらせ等の行為の域を超えるものというべきである。
  2. ②Yの上記行為により、管理組合の業務の遂行や運営に支障が生じて、本件マンションの正常な管理又は使用が阻害されていることは明らかであり、区分所有法第6条1項所定の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たる。
  3. ③Xは、本件マンションの集会決議により、Yを除く他の区分所有者の全員のために本件訴訟を提起する区分所有者に指定された者であり(区分所有法第57条3項)、本件マンションの区分所有者の共同の利益のため、Yに対し、Yの上記各行為の差止めを求めることができる。

単に、管理組合役員をひぼう中傷する文書を配布する行為だけでは、共同利益背反行為に該当するとは言えないでしょう。しかし、それ以外に、管理組合の業務を妨害するような行為がある場合には、その程度にもよりますが、共同利益背反行為に該当すると考えてよいでしょう。

【参考】

区分所有法
(区分所有者の権利義務等)
第6 条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為
     をしてはならない。
(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第57条 区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の
     全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその
      行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
  • 2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
  • 3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第1項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
判例
最高裁 平成24年1月17日 平22(受)2187号
<要旨>
マンションの区分所有者が、業務執行に当たっている管理組合の役員らをひぼう中傷する内容の文書を配布し、マンションの防音工事等を受注した業者の業務を妨害するなどする行為は、それが単なる特定の個人に対するひぼう中傷等の域を超えるもので、それにより管理組合の業務の遂行や運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が阻害される場合には、建物の区分所有等に関する法律6条1項所定の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たるとみる余地があるとした事例。
(原審に差戻し)
東京高裁 平成24年 3月28日 平24(ネ)755号
<要旨>
本件マンションの区分所有者である控訴人が、同マンションの区分所有者である被控訴人は、区分所有法6条1項所定の共同利益背反行為に当たる行為を繰り返していると主張して、同法57条等に基づき、他の区分所有者全員のため、各行為の差止めを求めたところ、最高裁において、区分所有者が、業務執行中の管理組合の役員らを誹謗中傷する内容の文書を配布し、それが単なる特定の個人に対する誹謗中傷等の域を超え、それにより管理組合の業務遂行、運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が阻害される場合には、同法6条1項の共同利益背反行為に当たるとみる余地があるとして、控訴人の請求が同法57条の要件を満たしているかにつき審理を尽くさせるため、これを差し戻した差戻後の控訴審において、被控訴人の行為は、区分所有法6条1項所定の共同利益背反行為に当たるとして、請求を棄却した原判決を取り消し、請求を認容した事例。
(出典:ウエストロー・ジャパン)
 

相談事例

管理費等の滞納者に対し、訴訟を起こした場合、違約金としての弁護士費用等の支払も請求できますか

篠原先生の回答

管理費等の滞納者に対し、違約金としての弁護士費用等支払を求めた最近の判例を2つ紹介します。

東京高裁 平成26年4月16日の判決
マンション管理組合Xが、滞納している区分所有者Y対し、管理規約に基づき未払管理費、弁護士費用等の支払を求めたところ、原審が請求を一部認容したため、Yが控訴した事案です。
裁判所は、管理規約で、管理組合が未払金員につき「違約金としての弁護士費用」を加算して組合員に請求できると規定しており、同規定は合理的であり違約金の性格は違約罰(制裁金)と解するのが相当であるから、違約金としての弁護士費用は管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用と解されるとして、Xの請求を全部認めました。

東京地裁 平成25年11月13日の判決

マンションの管理組合Xが、区分所有者Y対し、未払いの管理費・修繕積立金等及びこれに対する管理規約に定める遅延損害金を請求するとともに、管理規約に定める管理費等の滞納があった場合の違約金としての弁護士費用等の支払を求めた事案です。
裁判所は、管理費等は共用部分の保守、修繕等の不可分的な利益の対価であり、遅延損害金はこれらに付随するものであるし、本件弁護士費用等も不可分的給付の対価の不履行によって生じた違約金であるから、いずれも不可分的給付の対価として、性質上不可分の不可分債務※(民法430条)に該当するというべきであるとして、支払いを命じました。

この2つの判例から言えることは、弁護士費用等の請求については、管理規約に管理費等の滞納があった場合の違約金としての弁護士費用等の支払に関する定めがあることが必要です。

マンション標準管理規約では、第60条(管理費等の徴収)2項に、「組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。」と定めてあります。

マンション標準管理規約に準拠していない管理規約の場合は、改正して上記条文を盛り込んだうえで、管理規約に定められた必要な手続きを踏むことが大切でしょう。

※不可分債務 : 多数当事者間の債権債務関係の一つであり、数人の債務者が同一の不可分な給付を目的として
           負う債務。 (出典:ウィキペディア)

【参考】

マンション標準管理規約
(管理費等の徴収)
第60 条 管理組合は、第25条に定める管理費等及び第29条に定める使用料について、組合員が各自開設する預金口座から
       自動振替の方法により第62条に定める口座に受け入れることとし、当月分は前月の○日までに一括して徴収する。
       ただし、臨時に要する費用として特別に徴収する場合には、別に定めるところによる。
  • 2 組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。
  • 3 理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。
  • 4 第2項に基づき請求した遅延損害金、弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用に相当する収納金は、第27条に定める費用に充当する。
  • 5 組合員は、納付した管理費等及び使用料について、その返還請求又は分割請求をすることができない。
判例
東京高裁 平成26年4月16日 平25(ネ)6530号
<要旨>
マンション管理組合である被控訴人が、区分所有者である控訴人に対し、管理規約に基づき未払管理費、弁護士費用等の支払を求めたところ、原審が請求を一部認容したため、控訴人が控訴し、被控訴人が請求を拡張する旨の附帯控訴をした事案において、本件管理規約では、管理組合が未払金員につき「違約金としての弁護士費用」を加算して組合員に請求できると規定しているところ、同規定は合理的であり違約金の性格は違約罰(制裁金)と解するのが相当であるから、違約金としての弁護士費用は管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用と解されるなどとして、控訴を棄却する一方、附帯控訴に基づいて原判決を変更し、被控訴人の請求を全部認めた事例。
東京地裁 平成25年11月13日 平25(ワ)13118号
<要旨>
マンションの管理組合である原告が、区分所有建物の共有者である被告に対し、未払いの管理費・修繕積立金等及びこれに対する弁済期の翌日から支払済みまでの管理規約に定める遅延損害金を請求するとともに、管理規約に定める管理費等の滞納があった場合の違約金としての弁護士費用等及びこれに対する催告の日から支払済みまでの民事法定利率に基づく遅延損害金の支払を求めた事案。
(出典:ウエストロー・ジャパン)