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弁護士 篠原みち子先生のマンション管理お役立ちコーナー

【相談事例 目次】

相談事例

前役員より組合書類の引継を受けましたが、管理室倉庫は過去の書類で満杯になってしまったため、理事会で組合書類の処分を検討しています。管理組合が保存すべき書類について法律的な保存期間の定めはありますか?

篠原先生の回答

管理組合としての文書の保存期間については、とくに法令の定めはありません。区分所有法は、管理者が規約や総会議事録等の保管を定めているものの(第33条第1項、第42条第5項、第45条第4項)、これらを含む組合書類の保存期間についての定めは置いていません。
しかし、一般的に規約や総会議事録等は、場合により区分所有者に影響を及ぼす事項や、その他権利義務に関する事項を含む重要書類ですから、組合が存在する限り永久保存が原則と考えられます。
一方で、例えば設備点検報告書等については、相当期間経過後は、廃棄し得るものであると考えられます。(但し、別途修繕履歴等の記録は必要)
管理組合の書類は、年々増える一方ですので、組合の書類の保存期間については、規約で任意に文書保管規定等を定め、各種書類の性質に応じた保存期間を定める等の方法を検討するとよいでしょう。

【参考】

○東京都都市整備局発行「安心して暮らしていくためのマンション管理ガイドライン (平成17年10月)」において「マンション管理組合会計処理細則案」として、議事録や契約書、帳票類の「会計に係る書類の保存期間」が掲載されています。
東京都都市局 マンション管理ガイドライン
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/manshon_guidelines.htm

相談事例

総会で監事に選任されました。会計監査を行うにあたり帳簿の引継を受けましたが、会社で長年経理を担当してきた私の知る帳簿の付け方と異なっており、また証票類で一部確認できないものがあるなど、困惑しています。このような場合、管理会社の担当者に直接確認しても良いものでしょうか。

篠原先生の回答

マンション管理組合向けの会計基準については、とくに法令の定めがありません。組合ごとに会計帳簿もまちまちとなっているのが現状ですが、管理組合は非営利団体であるため、実際は、非営利の団体に適用される公益法人会計基準を管理組合会計の基本として作成しているケースが多いようです。
監事は、理事会が行う業務やその成果物が、予め定められた会計上のルール等に則っているどうかを、客観的な第三者として監査対象に応じて検証し、是正すべき点があれば、それを理事会に対してそれを指摘することが役割です。
そのため、疑問点があればまずは執行する理事会に対して事実関係を確認すべきでしょう。

相談事例

通常総会で選任された理事により、総会終了後に互選により理事長、副理事長等を選出しましたが、転勤により理事長が転居(住戸を売却)することとなりました。この場合、副理事長が理事長に就任することで良いのでしょうか。
なお、当マンションの規約は、現在のマンション標準管理規約に準じています。

篠原先生の回答

理事長の選任は、区分所有法第25条第1項では規約に別段の定めがない限り、集会の決議によって行うこととしています。標準管理規約の場合は、第35条に定めていますので、それに従うこととなります。
今回の場合、転居(住居を売却)により理事長は組合員としての地位を失い、理事長は不在となります。
理事長が不在の場合、標準管理規約では第39条に基づき、副理事長が、この間に理事長の職務を行うことはできます。しかし、この定めは、副理事長が自らの名前において業務を執行する為のものであり、副理事長が無条件で理事長に就任することが出来る規定ではありません。新理事長の選任は、改めて理事の互選で決定することとなります。
なお、規約で理事の人数を定めている場合は、今回の理事長の退任によって、役員の人数が不足することも考えられます。この場合は、臨時総会を開催し、補欠の理事の選任が必要となります。その場合は、新理事を含む理事の互選で新理事長を決定することとなります。
このような場合に備えて、管理規約に「役員が転出、死亡その他の事情により欠けた場合、補欠の役員を理事会の決議で選任することができる」と定めておくことも出来ます(標準管理規約第36条関係コメント)。

【参考】

○標準管理規約 第35条 (役員)
   管理組合に次の役員を置く。
  一 理事長
  二 副理事長  ○名
  三 会計担当理事  ○名
  四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
  五 監事  ○名
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する。
○標準管理規約 第39条 (副理事長)
   副理事長は、理事長を補佐し、理事長に事故があるときは、その職務を代理し、 理事長が欠けたときは、その職務を行う。

相談事例

通常総会で今期の事業計画が原案通り承認され、その中で、長期修繕計画に基づき経年劣化している鉄部塗装工事の予算金額(60万円)が承認されました。また、鉄部塗装工事の実施については、仕様及び工事予定金額(60万円)についてのみ総会で決定し、工事予定金額内での工事の発注、発注業者の選定及び工事時期については、理事会に一任で実施することで承認されました。
その後開かれた第1回理事会で、本件については、理事長に一任することを決議したところ、監事より、この決定は問題があるとの指摘がなされました。理事会としては、どのように対応すべきでしょうか。

篠原先生の回答

総会で決定した鉄部塗装工事の実施は、理事会において工事見積取得や工事業者によるプレゼンテーション実施を経るなどして十分に審議を行い、工事金額、工事業者、工事時期等を決定することを前提に、理事会に付託されたものであると考えます。
工事見積の取得等を理事長主体で行うことは問題ないと考えますが、理事会がすべてを理事長に丸投げすることは、総会で付託された事項の執行として不適切と言わざるを得ないでしょう。
監事の役割は、理事会業務の執行がその責務や事業計画等に照らして適正であるかを、第三者としてチェックすることにあり、監事の申し出はもっともであると考えられます。
本件については、再度理事会で十分に検討した上で、理事会決議で決定されるべきと考えます。また、審議の経緯等については、理事会議事録等で組合員に対して適宜明らかにし、理事会運営の透明性を確保することが望ましいでしょう。

【参考】

○標準管理規約 第54条 (議決事項)
   理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を決議する。
九 総会から付託された事項
○標準管理規約コメント 第54条関係
   共用部分の軽微な変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの)及び狭義 の管理行為(変更及び保存行為を除く、通常の利用、改良に関する行為)については、 大規模マンションなど、それぞれのマンションの実態に応じて、機能的な組合運営を 行う観点から、これらのうち特定の事項について、理事会の決議事項として規約に定めることも可能である。その場合には、理事の行為が自己契約、双方代理など組合員の利益に反することにならないよう監事による監視機能の強化を図るなどの取組み、理事会活動の事前・事後の組合員に対する透明性の確保等について配慮することが必要である。

相談事例

理事会で、電気料金の削減を目的として高圧一括受電方式の導入を検討しています。 どのように検討を進めたらよいでしょうか。また、総会の決議方法等についても教えて下さい。

篠原先生の回答

高圧一括受電方式への変更には、いくつかの方式があります。例えば、マンションで一括受電した上で、共用部の電気料金のみを削減する方式や各世帯の電気料金自体を削減する方式等です。
まず理事会としては、一括受電方式を提供する電気事業者等に当該マンションに導入可能な方式が何かを相談し、導入プランの提案を依頼することが必要ではないでしょうか。
提案内容を検討し、共用部分も含むマンションの全世帯で一括導入を進める方式を選択する場合には、マンションの居住者全員が、現在契約している電気事業者と解約手続きをし、新たな電気供給業者と新規に契約を締結することになりますので、区分所有者に限らず居住者全員の同意が必要になります。
また、移行に向けたスケジュール案や切替工事時の停電等について、居住者全員への説明会等も欠かせません。
総会決議については、導入工事の内容によっては普通決議でも可能ですが、上記を踏まえ慎重に審議する必要があります。一般的には、特別決議を経ているケースが多いようです。また、借室等を提供している現在の電気事業者の名称が規約に記載されている場合には、特別決議による規約変更が必要になります。