区分所有管理士会 設立趣意書

 わが国における分譲区分所有住宅・マンションの歴史は、30有余年である。
 マンションの普及は、昭和三十年代からの経済の高度成長とともに急速に進み、平成10年には、350万戸に達している。この間、昭和58年には区分所有法の改正が、また、昭和60年にはマンション管理業者の大臣登録制度の実施などの施策が講じられてきた。
 平成7年の阪神・淡路大震災では、被災マンション法の成立があり、被災区分所有者の方々のマンションの復興に向けた努力とともにマンション管理業の果たした役割が大きく注目された。
 こうした諸施策と相俟って、マンションは、わが国の都市型住宅として広く受け入れられるに至っているが、未だ、大きな課題が残されている。
 一つは、価値観の多様化、少子・高齢化あるいはマンション居住の多様化などの進展の中にあって、共同居住コミュニティーの形成と管理運営の円滑化である。これは、21世紀に向けた都市住宅文化とわが国に相応しい管理運営制度の構築である。
 いま一つは、マンションの大量ストックの時代における大規模修繕の円滑化あるいは建て替えであり、都市住宅の有効利用と再生に係る都市基盤の整備の問題である。(社)高層住宅管理業協会は、複雑・高度化する管理業務に的確に対応するため、平成8年度から「区分所有管理士資格認定制度」を創設し、1,300余名の資格者を認定してきた。区分所有管理士には、弁護士、建築士等の専門家とも連携しつつ、管理業務主任者の業務を統括し、複雑・高度化している管理業務を総合的にマネジメントする専門家として今後の活躍が期待されている。
 現在、行政においても、前記した課題を含めて「マンション総合対策」が検討されているさなかにあって、区分所有管理士が相互に協力して研鑽を重ね、知識・技能の向上を図り、区分所有管理士の果たす役割について社会的な評価を高めるために、区分所有管理士の組織化を図ることは、まさに時を得たものと考える。
 茲に、区分所有管理士会の設立を提唱し、その活動を通じて、マンションのコミュニティーの運営や管理運営制度について実務的な検討を行うことにより、マンションの快適な共同居住と良好な居住環境を確保し、もって国民生活の向上と社会福祉の増進に寄与することを期待するものである。
  平成11年10月