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ブラウシア外観

「アリとキリギリス」の発想で、修繕積立金を倍額に! 長期的な視野に立った計画に住民が賛同

以前ご紹介したブラウシアの管理組合では、修繕積立金の積立額を見直し、第9期の管理組合総会で、何と一気に積立金を2倍にアップさせました。「このままではいけない」とわかってはいても、住民からの賛同を得にくい積立金の値上げ。ブラウシアでは、どのようにしてこれを成功させたのか。長期修繕委員会にお話を伺いました。

その他

段階増額積立方式から均等積立方式へ

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千葉にある総戸数438戸の大規模マンション「ブラウシア」では、来年に行う予定の初めての大規模修繕の準備が着々と進んでいます。旗振り役を務めるのは、理事会の中の小委員会である長期修繕委員会。8期の理事会で「そろそろ大規模修繕のことを考えたほうがよいのでは?」という意見が出て、9期には修繕委員会が組織されました。

ところで、マンションの修繕積立金の積み立て方法には、大きく分けて2種類あります。1つ目は「段階積立方式」で、当初は積立金の月額を低く抑え、5年ごとなどの一定の期間で段階的に積立金を増額する方法です。将来の負担増を前提とした方式なので、増額する際に住民の合意が得られず資金が不足するリスクがあります。2つ目は「均等積立方式」。例えば築後30年間で必要となる修繕工事費の総額を戸あたりで割って、それを30年間均等に積み立てていくものです。 財政が安定し必要な修繕計画がたてやすくなる方式です。

修繕積立金の額と方式は、マンションが分譲された時に売主によって既に決められています。ほとんどのマンションは、段階増額積立方式をとっていることが多いようですが、これはマンション購入初期にランニングコストを抑えた計画のほうが受け入れられやすい、ということが影響しているのかもしれません。かくいうブラウシアもこの段階増額積立方式をとっていました。

積立金増額の年にあたる 5期の理事会で一度検討をしましたが、その時は12年ごとに大規模修繕をするとして2度目の大規模修繕を行う24年までは資金は足りると判断し、積立金は据え置きにすることにしたそうです。

しかし、その後東日本大震災が起こり、また消費税が5%から段階的に10%まで増税されることが決まりました。不測の事態が起こりうること、増税によって確実に資金が不足することがわかり、修繕積立金の計画を含めた長期修繕計画を根本から見直すことになったのです。

50年先までを見据えて、長期修繕計画を練り直す

資金計画表

それまで理事会の設備運営グループに所属し、修繕委員会設立時に委員長に就任した坂井さん(仮名)は言います。「ブラウシアのビジョンに、“終の棲家として、いつまでも信頼できる建物・設備”があります。我々はそのビジョンに沿って、まず長期修繕計画の基準を一般的な30年ではなく50年に設定しました。さらに、数年おきに天井の見えない値上げをせざるをえない段階増額積立方式を取りやめ均等積立式とすることで 、“現在も将来も変わらない積立金負担”を掲げたんです」。まさに「アリとキリギリス」の発想です。

長期修繕計画の基準を50年として、国土交通省のガイドラインをもとに修繕費用を見直した結果、3回目の大規模修繕が行われる36年目に最もお金がかかることがわかりました。修繕積立金の計画を均等積立方式で試算すると、現在の2倍程度に増額が必要。しかし均等積立方式の場合、大きな変更がなければ再び増額する可能性が低いため、将来の積立額は段階増額積立方式よりも安くなります。ブラウシアの住民にとって最も良い方法と考えたのです。

また、東日本大震災の教訓から、震災を想定した積み増し計画も提案されました。「想定外」である災害をあらかじめ「想定」することで、リスクが安心にかわる 、との考えに基づくものです。ほぼ倍額となる修繕積立金にプラスして、緊急災害対策費として、2億円を常時用意すると決め、各戸の部屋面積に応じて月額1,000~1,600円程度を徴収することにしました。

方針が決まったら、次は理事会に諮って意見やアドバイスなどを得、それに従って総会の2か月前に同じ内容の住民説明会を2回開きました。活発な活動を続ける理事会に好意的な住民が多く、これまで様々な改革がスムーズに進んできたブラウシアにおいても、やはり毎月の負担額がいきなり倍になることには抵抗がある人が多かったようで、最初はかなり反対の声が上がったそうです。

最初は大反対の声も上がった説明会。根気強い対応で……

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倍額の根拠はどこにあるのか、本当にその金額が妥当なのか、年金暮らしでいきなり倍額はきつい、50年先を見込むのは長すぎる……。実に様々な意見が出たなか、委員会では一つひとつ声を拾い上げ、Q&Aを作成、説明資料を配布するなどして、住民の納得を得られるよう時間をかけて何度も検討しました。また、「修繕委員会ニュース」を定期的に発行し、なるべく情報を公開して、委員会が密室で決めているのではない、ということを理解してもらうよう努めたのです。

その結果、90%以上の賛同を得て長期修繕計画の見直し案は可決。成功の要因を坂井さんに聞くと、「自分たちでは明確な理由はわかりませんが……」と前置きしながら、5つの要因を教えてくれました。

1. 積立金増額の必要性と妥当性を論理的に説明すること

2. 管理費会計の圧縮など、できることはすべてやったうえでの判断だと説明すること

3. 情報を公開して進めること

4. それらをブラウシアの一住民でもある自分の言葉で、熱意を持って説明すること

5. 積極的に活動している理事会のことを住民が見ていて、信じ、ついてきてくれたこと

もちろん、理事会メンバーをはじめ、様々な人の協力もありました。試算を作成したのは管理会社。契約しているマンション管理士にもアドバイスをもらいました。さらに初めての大規模修繕ということで、「既に大規模修繕を済ませた近隣マンションの理事さんに話を聞き、アドバイスをいただいたことも大変参考になりました」と坂井さん。

現在の委員会の活動としては、修繕委員4名、理事会の設備運営グループ4名、管理会社から3、4名が集まり、月1回の会議を行っています。9期に長期修繕計画の見直し案が可決された後は、10期に設計監理会社を選定し、建物の劣化調査を実施。その上で工事の具体的な計画に着手しました。11期の今期は、工事の設計を進めるとともに施工会社を選定する準備中。12期にいよいよ大規模修繕を行う予定です。

概要(取材年月:2016年01月)
  • 建物名:ブラウシア
  • 所在地:千葉県千葉市
  • 階数 :20階建て3棟
  • 総戸数:438戸
  • 竣工年:2005(平成17)年
  • 管理形態:委託管理
  • 管理会社:(株)レーベンコミュニティ
  • 総会開催:毎年10月
  • 役員数 :20名(監事1名含む)
  • 役員任期:2年(半数改選、立候補制度、留任制度あり)