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手作りの「かわら版」が、理事会と居住者のコミュニケーションを促進【後編】

前回、新潟市の大規模マンション「ダイアパレスシアース万代」で4年にわたって発行されている「かわら版」についてご紹介しました。広報部会の髙橋さんがかわら版に携わってからというもの、居住者があいさつを交わすようになり、モラルも向上したそうです。現在、マンションの総戸数(391戸)をはるかに超え、毎回500部発行されているかわら版。所有者に必要とされる秘訣はどこにあるのでしょうか。

その他

経緯がよくわかるかわら版を読んで、難しい議題もすんなり可決!

4-1ダイアパレスシアース万代のかわら版は、難しい議題も、髙橋さんの言葉でわかりやすく、しかも順を追って丁寧に書かれている点が大きな特徴です。

 

例えば2年前には、長期修繕計画の見直しと、それに伴う修繕積立金改定にも取り組みました。平成29年のかわら版4号を見てみると、「次回以降話し合われます」とあり、さらに6号には「管理会社から長期修繕計画書が出され、修繕積立金の値上げ案が提示された」、7号は「長期修繕計画書をマンションの施工業者に作成してもらった方がいい」、8号は「施工業者の作成した計画書が用を成さず、今後はマンション管理士に見積もりを依頼することにした」……といったように、号を追って見ていくと、話し合いの経緯がよくわかるようになっています。

 

よくわかるのは経緯だけではありません。理事会がこの問題のためにみんなで頭を悩ませ、よりよい解決のために一歩ずつ進んでいる様子も手に取るようにわかります。理事会の活動をわかりやすい形で広報していたことで、修繕積立金の値上げという難関も、すんなりと乗り切ることができたそうです。

 

現在は、機械式駐車場設備の劣化に伴い、駐車場問題を審議中

OLYMPUS DIGITAL CAMERA今、理事会が取り組んでいるのが、機械式駐車場設備の問題です。ダイアパレスシアース万代には164台分の機械式駐車場設備がありますが、近年部品の劣化による故障が発生。今後大規模修繕をする必要があるといわれたものの、その機械式駐車場設備を製造したメーカーがつぶれてしまい、別のメーカーに打診しても修繕は難しいといわれてしまいました。理事会では満場一致で機械式駐車場設備の新規入れ替えを決定。費用対効果を吟味しながら審議してきました。

 

そんな時、マンションの隣地に建っていた企業の寮が取り壊され、更地になったのです。機械式駐車場設備の入れ替えはおよそ2億円と試算されていたので、その資金で更地を購入してマンションの駐車場にするのはどうかという提案が理事会でなされ、さらに継続審議となりました。もしも建て替えがあった場合にも、土地を購入しておくのはメリットになるとの考えもあります。そこで、理事会ではかわら版を通じて居住者にアンケートを取ることにしました。

 

アンケートは、「100枚くらい戻ってくればいい方だろう」と思っていた理事たちを驚かせる220枚、約64%の回収率でした。駐車場として隣地を活用することに反対なのは10%、残りの90%は賛成かどちらでもいいとのこと。アンケート用紙に書かれていたコメントも番号を振ってすべてかわら版に掲載しました。「もしも隣地に高層の建物ができてしまうと我々の日常も変わる。買い取る案に賛成する」という意見、「できるだけ敷地内で賄えるようにした方がいい」という意見、様々な意見が載っていて、所有者はそれらをさらに見比べて考えることができます。

 

土地を所有している企業とは買取で話を進めたところ、貸すのであれば可能、との回答をもらい、現在、金額や期間などを交渉している最中だということです。かなり大がかりな話ですが、きちんと手順を踏んで所有者からの意見も広く求め、着実に前進している様子がうかがえます。

 

 

賃貸居住者にも、遠方に住む区分所有者にもかわら版を送付

OLYMPUS DIGITAL CAMERAダイアパレスシアース万代は、391戸のうち約100戸が賃貸に出されています。かわら版は、もちろん賃貸の居住者にも配られ、また賃貸に出されている区分所有者からも「送ってほしい」との声が上がったことで全所有者に郵送をしているそうです。そのため、発行部数は500部に上っています。各戸への配付や遠方に住む区分所有者への郵送業務を引き受けるのが管理会社。管理組合の強力なパートナーとして、理事会との関係も良好です。

 

「遠方の区分所有者の方々からは、『マンションの様子がよく分かってとても助かっている』と喜ばれています。私が日々感じているのは、居住者の皆さんにお伝えしたいことなどがあったとき、我々が作成する掲示物と理事会の発信するかわら版とでは、皆さんの受け止め方に違いがあるということ。同じ居住者同士として声が届きやすいのだと思います」というのは、管理会社の小林さん。管理員さんも、居住者に注意などをしなければならないとき、かわら版を見せて「ここにもこう書かれていますよね」と話ができるので重宝しているそうです。

 

「マンションは『なるべく人と付き合いたくない』と思っている人が集まってくるところ、といわれますが、それでは寂しいですよね。共通の話題があれば話が弾むし、かわら版を手に玄関前に集まってお話している方たちもよく見かけるようになりました」と髙橋さん。“共同住宅に住んでいるのだから、お互い決まりを守り、よりよい住環境を維持するために役立つと考え、かわら版を発行しています”。最近の編集後記にはそう書いてありました。

 

概要(取材年月:2019年02月)
  • 建物名:ダイアパレスシアース万代
  • 所在地:新潟県新潟市
  • 階数 :地上14階建て(ドレーンパイプ工法)
  • 総戸数:391戸
  • 竣工年:1995(平成7)年
  • 管理形態:全部委託
  • 管理会社:コミュニティワン(株)
  • 総会開催:毎年3月
  • 役員数 :14名
  • 役員任期:2年(半数改選、継続可)