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平成26年現在、バス停11カ所、平日58便が巡回する

団地再生からはじまったバス誘致、地域を取り込んだ取り組みに発展

六浦台住宅団地は1971(昭和46)年竣工の郊外型団地270戸で、京急逗子線「京急六浦」駅から徒歩10分の坂の上に立地します。駅から続く通称・百段階段の標高差は50mを超えており、エレベーターもないことから居住者は年を重ねていくうちに「駅からの階段がきつい。団地に着いてさらに5階まで上がるのは大変だ」ということが切実な問題となってきました。若かった団地も築40年を超え、高齢者団地になっていたのです。
そこで生活の足としてバス誘致の取り組みの検討を開始しました。2007(平成19)年のことです。

シニアライフその他

「六浦地域交通対策連絡会」発足

六浦台百段階段90%

生活の足であるバスを団地に通せないものかという要求が居住者から高まってきたことから、これまで建替えを含む団地再生を検討していた専門委員会である「再開発計画部会」がバス誘致への取り組みを具体化し始めました。

同部会がまず行ったのが、他の地域でバス誘致に成功した事例見学会(横浜市泉区下和泉住宅自治会)です。自治会や老人会とともに15人で参加しました。その後、取り組み母体を自治会に移し、「ミニバス導入検討委員会(委員12人)」を発足させ、同部会はこれに全面協力していく形にしました。

委員会はさらに発展して2008(平成20)年1月、近隣の町内会・自治会を取り込んだ4地域で「六浦地域交通対策連絡会」を立ち上げ、本格的な活動に入っていったのです。

連絡会では「横浜市地域交通サポート事業」を活用し、計23回の会議を重ねました。参加者は六浦台住宅を含む4地域の町内会・自治会、まちづくりコーディネーター、コンサルタント、横浜市道路局、金沢区役所、京浜急行バス(株)です。

まちづくりコーディネーターは会議進行、コンサルタントはアンケートの集計・分析を手がけました。バスルートやバス停の設置などでは4地域の思いが絡み合い、第三者であるコーディネーターが「調整役」として合意形成に欠かせなかったといいます。また、約2,000世帯へのアンケート集計・分析は外部コンサルタントが担当しました。「横浜市地域交通サポート事業」は活動費の4/5が補助されますが、費用は資料のコピー代や会場使用料、広報活動費、アンケート活動費用などのほか、主に専門家への人件費に充てることができました。

1年8カ月後、本格運行開始

六浦台開通式2

六浦地域交通対策連絡会はバス誘致の実現に向け、バスルートの検討、住民アンケートの実施、広報活動、バス待機所及び運転手の休憩場所の検討、住民説明会、バス停候補地の調査、テスト走行等、着実に取り組みを進めていきました。

そして2009(平成21)年9月6日、晴れて「六浦駅循環線」ミニバス運行開通式が六浦台団地内広場で行われました。主催する連絡会が予想した参加人数の倍の200人以上が集まったといいます。

翌9月7日から、利用実態を検証する実証運行を通り越して、早くも本格運行の開始です。六浦地域交通対策連絡会の立ち上げから1年8カ月後のことでした。

開通式から5年後、2014(平成26)年11月の運行状況は以下の通り。

・ルート:六浦駅~六浦台住宅・エステシティ壱番館~六浦駅

・所要時分:1周3.6km、約 17 分~20分、バス停合計11カ所

・運行時間:午前6時台~午後 10 時台

・運行本数:平日58 本/日・土日祝日48 本/日

・運賃:大人180 円(ICカード175円)

・車両:32 人乗りの小型バス

期待は病院までのルート延伸

六浦台待避所80%

バスの開通によって、地域からは喜びの声が上がっています。「買い物などの外出が増えて地域的に活性化しているのがわかる」「通勤、通学時の駅前道路での送迎車輌による渋滞がなくなった」「夜間でもバス利用で安心して帰宅できる(女性)」「高齢で引っ越しを考えていたが、バスの運行で永住を決めた」「連絡会として活動した4地域の役員間の親睦が深まった」等々。

一方、バス停留所の設置個所で「自宅前や直近に置くことは避けてほしい」といった意見などがあり、歩道のない危険で不便な場所に設置せざるを得ないという問題もありました。

また六浦台住宅団地という私有地の中を営利を目的とした民間バスが走行することについても問題があります。バスが走行することで通路面の損傷が大きく、その上補修費用は管理組合持ちという問題です。また、スムーズな運行のため、郵便、宅配、引っ越し車輌等を退避させる場所として4台分の駐車場をつぶすことにしました。これらの問題は今後の課題とし、「運行優先」として管理組合と自治会双方の総会で承認を得ました。

問題点は数あるとはいえ、第一段階としてバス路線の開通が実現できました。第二段階としては、期待は大きく近隣の大きな病院までルートが延伸することで、どのような解決方法があるのかを課題にしていきたいとしています。

概要(取材年月:2014年11月)
  • 建物名:六浦台団地
  • 所在地:神奈川県横浜市
  • 階数 :5階建て・8棟
  • 総戸数:270戸
  • 竣工年:1971(昭和46)年
  • 管理形態:一部委託(会計、窓口、給水設備管理)
  • 管理会社:JS日本総合住生活(株)
  • 総会開催: -
  • 役員数 :理事7名、監事1名
  • 役員任期:1年(輪番制)