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再開発マンションが歴史ある氏子町会に加入。壁を感じていた住人に、管理組合がとった手法とは?

都心の再開発によって建ったマンションは、どこも近隣の住民とマンションに住む新住人とのコミュニティが課題になります。神田祭で知られる神田明神の氏子町会のひとつに、新たに再開発の大規模マンションが加わりました。それぞれが良い関係を築くために、管理組合はどんな手法をとったのでしょうか……。

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新住人が壁を感じる「町会」への参加が課題に

都営地下鉄・東京メトロ「神保町」駅に直結するタワーマンションがあります。古書店街としてよく知られる神田神保町の南側、白山通りに面して佇む「東京パークタワー」(総戸数302戸)です。東京パークタワーは、神保町の駅前約2.5haに及ぶ再開発事業「J city TOKYO」の一部で、他にオフィスビル・神保町三井ビルディングと神保町101ビルとの3棟で構成されています。

 

住人の約2割が元地権者で、地権者は元々全員が町会に加入しています。さらに新住人も、最初の立て付けとして近隣の「神保町一丁目町会」に全員が入会することになっていました。しかし、そこは神田明神の氏子町会。歴史ある町会ということもあり、新しい住人は町会での活動に壁を感じていました。せっかく町会費を払っているのに、どう活動に参加していいのかわからない、といった声も上がり、管理組合理事会が動きました。

 

東京パークタワーの管理組合理事会は全部で12名(当時)。そのうち2名を「町会担当理事」として、町会の活動に積極的に関わることにしたのです。町会の月例会などには2名の担当理事と理事長、副理事長が出席。常時4名は町会活動に携わり、マンション側の窓口となることで、マンション全体として町会との関わりを持とう、という考えです(翌年より町会担当理事を3名に増やし、常時5名が関わる体制となった)。

 

神田祭をきっかけに町会活動に参加する人も

DSC00914ところで、神田明神の氏子町会は100を超え、「江戸の総鎮守」であり伝統を受け継ぐ神田明神の氏子であることを町会員の誇りとしています。特に日本三大祭のひとつに数えられる神田祭は町会で最も大事な行事。2年に1度、壮麗な神輿を担ぐ機会が訪れます。

 

なかでも子どもみこしは人気で、マンションに住む小学生たちも参加したいもの。「それを口実にお父さんたちを町会の青年部に勧誘するんです。最初はお客さんとしてお祭りの珍しさに参加していた人たちも、声掛けを繰り返すことで個人的に町会活動に賛同してくれるようになりました」と語るのは、長年、管理組合の理事長をつとめ、現理事の柿内さんです。

 

お祭りの際には、マンションの北側道路で子ども向けの縁日などが開かれます。東京パークタワーとしては、水道や電気を供給する形で協力するとともに、理事会や個人的に町会活動に参加している青年部、そして、同じく町会婦人部の活動に参加しているマンション住人がお手伝いをします。さらにマンションのホールを、町会婦人部のイベント会場として開放。マンションの内外が祭りの会場の一部となることで、今では常時30~40名ほどが参加するようになりました。

 

管理組合でも「東京パークタワー」の名を入れた半纏をつくり、たくさんの住人が神輿を担ぎます。最近は祭りの楽しさにはまったのか、各自で半纏をつくる住人の方もいるそうです。柿内さん自身も青年部の活動などに積極的に参加していて、「そこで知り合った人と街でお会いして一緒に買い物をしたりするんです。楽しくてしょうがないですよ」といいます。また、町会で「敬老の集い」などがあるときは、理事会でも70歳以上の住人に声掛けをするそうですが、積極的に参加してくれる人も増えてきて、マンションと町会の関係は年々深まっているそうです。

 

再開発の意義と助け合いの精神で、もっと良い関係づくりを!

OLYMPUS DIGITAL CAMERA都心で多くみられる大型の再開発。その意義のひとつに、「防災性の向上による安全・安心なまちづくり」があります。耐震性に問題のあるビルや狭すぎて防災上不安がある路地などをひとまとめに開発し、エリア全体の防災性能をアップさせるのです。新しいマンションやオフィスビルのような堅牢な建物は、それだけで近隣住民に安心感を与えます。

 

しかし、ただ建物があるだけで、実際に何かがあった時に協力できないのではあまり意味がありません。柿内さんはマンションと町会の関係について、「まだまだマンション住人には“お客さん気質”の人が多いように感じる」といい、今後の課題のひとつに挙げています。

 

何かあった時、「マンションが近隣住民を助けなくちゃいけないの?」ではなく、反対の場合も想像してみると、もう少し色々なことが見えてきます。大地震が起きたとき、もしも住人の一人が安全なマンション内ではなく近くの商店で買い物をしていたら、近くの誰かに助けてもらうことになるかもしれません。地域で助け合う“助け合いの精神”は、どこに住んでいてもどんな立場でも必要なこと。「そのために、なるべくたくさんのマンション住人が地域の方と顔見知りになってもらいたい」と柿内さんは語ってくれました。

 

☆☆☆

次回は、地域との交流を目的に、管理組合が開催している様々なイベント活動についてご紹介します。

 

To Be Continued.

概要(取材年月:2018年07月)
  • 建物名:東京パークタワー
  • 所在地:東京都千代田区
  • 階数 :地上29階建て地下3階建て
  • 総戸数:302戸(その他店舗・事務所22区画)
  • 竣工年:2003(平成15)年築
  • 管理形態:全部委託
  • 管理会社:三井不動産レジデンシャルサービス(株)
  • 総会開催:毎年6月
  • 役員数 :13名(住宅管理組合のみ)
  • 役員任期:1年(再任は妨げない、欠員が出た場合は公開抽選)