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★さくら祭01

自治会と管理組合が一体化! 歳月を経ても価値を保ち続ける管理・運営の秘訣【後編】

京都市内初の高層マンションとして、1972年に誕生した「ファミール伏見」。前編では住人たちの創意工夫や各種サークル活動を中心に紹介しました。後編では、自治会と管理組合が一体化した経緯や建物の維持管理についてお届けします。

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京都市初の高層マンションに管理組合が発足!

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『日本列島改造論』(※)が日本中を席巻した昭和47年、「ファミール伏見」は当時の最新技術を用いた鉄骨鉄筋コンクリート造、11階建て280戸、3棟構成で建設されました。入居当初から住人たちによる良好なコミュニティが形成され、築45年経ったいまも変わらず、和気あいあいとした雰囲気が流れています。

 

そんなファミール伏見に管理組合ができた理由は、【前編】でもご紹介したとおり、入居開始から間もない頃に、マンションのあちらこちらで不備・不具合が見つかったことでした。この事態に婦人たちは「自分たちでなんとかするしかない!」と一致団結。施行会社や販売会社に対して改善を求める交渉を始めたのです。その約1年後に、婦人たちの改善交渉を引き継ぐかたちで管理組合ができ、本格的な維持・管理運営が始まりました。

 

やがてこの管理組合は、「1階段(20戸)ごとに1人の管理組合理事」を選任する「階段理事」で組合理事会を構成することになります。というのも、ファミール伏見のエレベーターは4・7・10階にしか止まらないスキップ方式で、共用廊下も同階にしかないのです。代わりに3棟全体で計14本の階段が設置されていて、1つの階段を20戸が共用する形になっています。たとえば6階に住む人が同じく6階の部屋を訪ねるときでも、別系統の場合、階段で7階へ上がり、共用廊下を通った上で別の階段を使って、訪ねる部屋の玄関前へと降りていくのです。このような構造のため、住人たちにとっては階段が生活の軸となり、必然的に縦のグループができていったのです。

「管理」と「自治」の両輪を担う、盤石な一体化組織

図4

こうして階段の数=理事人数となったわけですが、全280戸の管理を14人の階段理事だけで行うのには無理がありました。そこで3年目からは、各サークル(子育て世代のなかよし会、婦人会、お年寄りでつくる寿会、体育クラブ)からも理事を選出することに。マンションの運営を担う区分所有法上の管理組合と、地域活動やコミュニティ形成を担う自治会組織が一体化したわけです。これによって、マンション全体の計画的な管理運営と円滑な自治運営の両輪を、住人たちが同時に実践できるようになりました。

 

管理組合は区分所有者、自治会は賃借人を含む全居住者で構成。そこから管理組合の階段理事14名を含む約40名の理事を選出し、管理組合に1名の理事長と2名の副理事長を、自治会に正副会長1名ずつを選任します。さらに理事会の下には次の3つの委員会を設置し、管理組合と自治会運営に当たっています。

①建物・施設の工事関連や財務・決算の報告を行う「管理委員会」

②ゴミ収集や防犯といった日常生活支援などを行う「生活環境委員会」

③自治会活動全般を担う「行事委員会」

 

現在、管理組合の理事長と自治会の会長は田村さんが兼務し、各メンバーは3つの委員会に横断的に関わっています。建物や施設に関する問題と自治運営の課題を同時に把握できるこの体制について、副理事長の西海さんは「非常に効率的でデメリットなど感じたことがない」と話します。実際、「一昨年度と今年度に、4分の3以上の賛成を要する特別決議が必要な工事(住戸玄関扉の取り替えとエレベーター5基の改修)を行ったが、細かな説明が住人全体にスムーズに伝わり、何の問題もなく運ぶことができた」そうです。

 

100年先も快適な住まいであるために

M ★販売当時の集客目玉施設の1つ、1階ピロティ―の「1住戸1トランクルーム」

これから先を見据えて、田村さんたちが目指すのは大規模な耐震改修です。「このマンションには全戸に1つずつ20㎥ほどのトランクルームが用意されていて、主にそれらが配置されている1階はピロティ構造になっているのです。販売当時はセールスポイントだったかもしれないが、耐震上はよろしくない」と田村さん。住人の高齢化もじわりと進んでいるそうで、「今の体制のうちに課題となる大きな工事はやり切ってしまい、寿命をあと50年延ばして100年マンションにしたい」と未来を展望します。西海さんは「改修案を作成したうえで住人の意見を聞きたい。きちんとした計画さえ提示できれば合意形成は難しくない」と確信しています。

 

築45年が経ったいま、マンションの価格は新築時の約1.5倍になり、「リフォームの仕様によっては2倍以上でも大丈夫」と不動産仲介業者が太鼓判を押すほどに。「自治会は人の絆を深める組織。一方、管理組合は建物を維持する組織。この2つが一緒に行動することで、より住環境の整った、資産価値の高いマンションにすることができるのだと思います」と田村さん。その言葉には、長い間マンションを支えてきた自負と、100年マンションに向けての揺るぎない意志が感じられました。

 

 

(※)『日本列島改造論』:1972年の自民党総裁選挙の際に田中角栄が発表した、工業の再配置、交通網の整備を骨子とする国土開発計画。

 

概要(取材年月:2017年07月)
  • 建物名:ファミール伏見
  • 所在地:京都府伏見区
  • 階数 :11階建てなど
  • 総戸数:280戸
  • 竣工年:1972(昭和47)年築
  • 管理形態:全部委託(決定は理事会)
  • 管理会社:三菱地所コミュニティ(株)
  • 総会開催:5月
  • 役員数 :42名
  • 役員任期:1年